第94話 交易都市
交易都市セイリヤに到着すると3つの門が目に入る。王都やその都市にもあった通常門、貴族門の他に商業門があるらしい。
商業門、その名のとおりさまざまな種族の商人に特化した門で、奥には大きな港があり輸出入品の倉庫街があるらしい。また交易都市の由来どおり船での出入国の玄関口も兼ねている。一度覗けないかな。
俺たちはいつもどおり貴族門から町へと入ると、期待どおり活気に溢れていた。いや、王都以上かもしれない。
獣人やエルフ、ドワーフの数も今まで行った都市よりも明らかに多い。観光収入を目的としていなにのに、この賑わいはオレの想像を超えていた。
レリクさんの話では、異国のアイテムも買えるし、Aランク迷宮で得たレアアイテムオークションなども開催されるのだとか。
いや、ぜひ行きたい。とは言えここでの予定も割と詰まっていたはずだ。無理は言えば通るかもしれないけど流石にそれは…と思っていたら
「いきたい!行くべきです!」「私も賛成!!」
思わぬところから援護射撃が。
マイアは平気で声を上げる。ジュリエッタも行く気満々た。いいぞいいぞ。
(ジュリエッタは前世で行ったことあるんじゃないの?)
(私がこの都市に来た時は陥落して廃墟に近かったのよ。それに楽しそうじゃない?)
(そうだったんだ。オレも興味があるからセイリヤ侯爵に相談してみようか)
(ぜひそうしましょう)(よろしくね)
そんなやり取りをしていると侯爵邸が見えてきた。上級貴族でも爵位が上がるとここまで違うのかと言わんばかりの大きな屋敷だった。
この賑わいだ。都市経営もうまくいってるのだろう。
大きな門を通り抜けると侯爵邸なんだけど、どれだけの広さなんだ?一面花畑があり薬草ぽい植物と、コスモスやパンジー似た花が咲き乱れていた。
「凄い綺麗だ。これは癒される」
「もぅ!ヴェルったら~いきなり褒めるなんて照れるじゃないの………ごめんなさい、冗談よ…」
『反応を見たいなら、照れながら言うと逆効果だぞ。しかも一拍おくとか』
「あら、私も雰囲気がいいところで聞きたい言葉ですよ」
「へいへい。そのうちにね」
そんな会話をしていると、レリクさんが顔を赤らめて俺に視線を向ける。
「結構なお話ですが、念話にするか、聞こえないようにして頂けるとありがたいのですが。私が恥ずかしすぎて困ります」
レリクさん初心か!まったくこんなとこまでシャロンさんとお似合いだよ。子どもの会話に照れるなよな。
屋敷のロータリーに入ると、遠巻きに見たことのある顔?が迎え出てきてくれた。
「側妃様そっくりね~」「クロエ義母様の双子の姉君ですよ。宴の時は職務があって来られなかったので今回が初対面です」
一卵性双生児ってやつか。流石によく似てる。側妃様にしか見えないな。
シャロンさんが、竜車の扉を開けるといつものとおりの出迎えを受ける。
俺たちが作法どおり挨拶をすると驚いた顔をする。ま、小学4年生(ジュリエッタは5年)だからな。
「驚きましたわ。噂どおりですね。私はクロエの姉で、カトリーヌ・セイリヤです。宜しくね」
困惑を隠しながら綺麗なカーテシーで挨拶をしてくれた。噂?噂になってるのか?
屋敷の中に通されると、ロベルト侯爵が執務室にいるとのことでそのまま侯爵の元に案内された。
執務室に入ると侯爵が出迎えてくれた。うん。うっすらと記憶にあるよ。ただあの時は流れ作業のように紹介されたから、見たことがあるくらいしか覚えてないけど。
「皆様。ご無沙汰しております。遠路はるばるお越し頂きありがとうございます」
改めてみると、凛としたその雰囲気と態度は上に立つ者としてのオーラがある。ああ、この地は順調なんだな。
「こちらこそ過分な歓迎恐縮です。レリク、お預かりした物を」
マイアがレリクさんに声をかける。レリクさんは「こちらがお預かりした品でございます」と膝をつき木箱を差し出した。
「うむ。中身を拝見しよう」
すると木箱から手紙だけを抜き取ってからそのまま従者に「宝物庫へ」と木箱を渡す。
俺からは索敵の魔石と手紙を渡す。陛下やウォーレスさんと違い、この場では試さないようだ。たぶんそれが普通だろう。
客室案内にされる前にマイアが、ここぞとばかりのタイミングで口を開く。
「叔父様、近くオークションが開催されると聞いてます。邪魔しないようにしますから私たちも参加させていただけますか?」
「ふむ。姫君に申し上げますが参加は取り計らうことは可能です。しかしながら次回のオークションは冒険者ギルドと商業ギルド主催になので出品されるのは武器や防具、アイテムなど冒険者寄りの品々なのです。失礼かとは思いますがあまり意味がないのでは?」
するとマイアが「これは公表はしていないのですが」とギルドプレートを取り出した。
あれ?公表しないって言ってなかった?
コネで特例ってまずくないのかな。まあいっか。俺のせいじゃないし。
「これは…姫様はまだ10歳だった筈では?」
そうだよ。うん。10歳。普通ならまだそんなプレート持ってない。
で、マイアが神様の事とか話しちゃまずいことをうまく誤魔化しつつ、冒険者登録までの簡単な経緯を説明。
すんなりオークションへの参加が認められた。流石王家だ。ホントに参加できることになったよ。ラッキー