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第85話 旅の準備

 屋敷に戻る前に貴族街にある冒険者ギルドに立ち寄る。正直眠かったのでさっさと帰ってベッドに入りたいところだけど、ギルドプレートの更新は済ませておきたい。


閑散としたギルドの受付に行くと笑顔が素敵な美人の受付嬢に挨拶をする。て、こんな人いたっけ?こないだ来た時は気付かなかったぞ。前世の俺なら付き合って下さいと言われたら「はい。喜んで」と即答するレベルだ。


婚約者からの冷たい視線に気付き、ギルド嬢から視線を逸らす。自然と五感が鍛えられているようだ。


奥から出てきたギルド長に別室に通される。部屋に入ると、一通り挨拶を交わしてから偽装したステータスカードをギルド長に見せた。ちなみにDランク冒険者の目安である魔法とスキルも(3)に偽装し済だ。


「まさか本当に、まだ12歳にもなっていないのに学園迷宮を攻略するとは…流石は上級悪魔を討伐した英雄と呼ばれるだけはありますな」


「ありがとうございます。でも英雄は勘弁してください。表向きには相打ちって事になっていますから」


ギルド長は驚きを隠すことなく俺たちからギルドプレートを受け取るとDランクに更新してくれた。


それから買い取って貰う為に、マイアがマジックポーチに詰めた大量の魔石を取り出すと、ギルド長は今度は唖然とした顔をしている。ま、3周分の量だからね。


魔石の買取額は軽く1月暮らせるくらいの額だ。これなら土産や旅費に充ててもお釣りがくるはずだ。うまい物をがっつり食ってやろう。と考えているうちに眠気はふっとび、猛烈にハラが減ってきた。


てな事でいつもの唐揚げを食べに行く。


 旅に出たら暫くはこれないからと、昼食後に大量にテイクアウトしてマジックバックに詰め込んでいく。とは言え、唐揚げぐらいだったらいつでも作れるので、無くなったら作れるように材料だけまた別に用意しておこう。


 それから、ウォーレス家の手土産、自分の家の土産、ジュリエッタの弟へのおもちゃ、生まれた妹へのおもちゃ、おじいさんさんへの土産、テーゼの結婚祝い、その他、旅に出れば、各領地を通るので大量に菓子類の手土産を買い回った。


「それにしてもヴェル。気を回しすぎじゃないかしら。土産にしてもお菓子を買いすぎじゃない?」


「いいのいいの。俺たちアイテムボックスし腐るものじゃないからね。何より余ったら自分が食べられるように好きなお菓子しか買ってないから」


「甘いものを食べ過ぎて太るのは嫌です」


何も一気に全部食べるなんて言ってないんだけど…個人的にはちょいムッチリボディの方が好きだから気にしないで欲しい。もっとも、女の子に言うと大概嫌がられるパターンだ。俺の感覚ではロリ好きよりは100倍健全だと思ってるんだが。


思う存分食糧を調達して歩いていると、二人が服を見たいと言うので別行動をする。


 最近、俺達3人共目に見えて身長が結構伸びているので、今着ている服のサイズアウトも近いからここで揃えておきたいそうだ。俺の好みは分かっているから買っておくと言われたのでお任せする。ついて来いと言われなくて良かった。


2人とb別行動になると、何か足りない物とか目ぼしい物がないか歩いていると、ドラム缶が売っているのを発見。

店に入って主に聞くと、一部の貴族が迷宮の中や野営の時に使うのだとか。風呂好きの俺にしてみればまさにピンポイントのドストライクじゃないか。


すのこ付きの大型サイズのドラム缶風呂、四方を囲うテントのようなカーテン、お湯の温度を3時間一定に保つ火の魔石。値は張るが迷わず大人買いだ。これを僥倖と言わず何と言おうか。


それらマジックバックに入れると、次は酒屋でお湯を入れる空樽を10個購入。途中に寄った王都近くのサンジュ村には温泉を汲める場所があったはずだ。


こうなると酒も欲しい。2人の目を盗む機会は必ずあるはずだ。いつかこっそり飲めるかも知れないと淡い期待を込めて、エールとウィスキーをちょっとだけ買ってマジックバックにしまっておいた。うん。御守りみたいなものさ。


満ち足りた気持ちで買い物を終え、2人のいる服屋に様子を見に行くと既に何着か購入したようだ。


 買い物が終わったので屋敷に帰ると、入口には俺が設計した竜車が停まっていた。ピアノブラックで大きさはワンボックスカーを一回り小さくしたくらいで思ったより大きい。


「なんだか思ったより見た目が派手だな。あと、ちょっと大きいんじゃないか?」


「こんなものでしょ。道の規格内には入っているし、大きな商会なんかは竜車に荷物を積んで走るからこれよりも大型よ。私に言わせればまったく違和感はないわね」


「いや、商人が荷物を運ぶ竜車はこんな色してないだろ。王族の白色じゃないだけで、見るからに貴族が乗ってます風じゃないか」


「今さら設計に変更は出来ないですから、これで行くしかないですわ。お父様からの親書もありますし、ならず者でなければ誰に対しても言い訳できますよ」


「そうよ。盗賊や魔物に襲われても5人だったら恐れることもないし、そもそも竜馬を2頭使う時点で貴族ってバレバレよ」


「おお。そっか。まあそうだよな」


それから竜車に不具合が無いのを確認すると、竜車の屋根裏に作った就寝スペースにメイドさん達が布団をセットしてくれた。


今思えば、アイテムボックスを使えばラゲッジスペースいらないよな。フルリクライニングシートにしてベッドにすれば良かった。


 仮眠を取り、目覚めると部屋は真っ赤な夕日に包まれていた。


服装の乱れを整えてからリビングへと向かうと、ワイワイ盛り上がっている声聞こえてくる。


「へ、陛下!!」


騒がしいと思ったら、陛下と王妃様それに珍しく側妃様が屋敷に来てなにやら盛り上がっていた。


「どうした素っ頓狂な声をあげて」


「そりゃ驚きもしますよ。王族が揃って屋敷にいらっしゃるとは思いませんでしたから」


「ヴェル君はあれからもう1年も経つのに本当に他人行儀ね。ここは王城でもなければ宮殿でもないのよ。いつもマイアに接する態度でいいのに」


マイアの母である王妃様は軽くそんな事を言うが、そんな訳にいくわけがない。それに、側妃様までいらっしゃるのは何かあったのか?


「それにしても、側妃様までどうして?」


「あら。私がここに来たら問題でも?って何だかイヤな言い方になっちゃうわね。実は、ヴェル君達の旅の行程を見たら、私の実家を通るからこれを渡して欲しいのよ」


側妃様は机に置いてある長い木箱を渡される。中身は何なのか気になるけど、それを尋ねるのは無粋と言うものだ。


「あっ、中身は家族への手紙と、姪が今度専属騎士の儀式に使う装飾剣よ。ふふふ」


エスパーかよ!!どうやら側妃様は俺の心を読むのが上手いようだ。って、みんなの顔を見ると、無意識に興味津々って顔をしてしまったようだ。恥ずかしい。


それにしても専属騎士か。1年前の事を思い出す。あれは仕組まれていたんだろうな。今思うと。


「どうしたヴェル。専属騎士の儀の事を思い出したか?」


「もぅ、皆さん俺の心を読むのはよしてください」


陛下に図星を突かれて思わず下を向くと、みんなが笑い出す。王族というのはどいつもこいつも人の心を読むのが上手すぎる。


「それでは本題に入るが索敵の魔法を付与した魔石はマイアに渡しておいた。リストを渡すから寄った領地で魔石を渡してくれると助かる」


陛下から直々に親書とリストを受け取る。そう言う話は覚えてるけど、まさか本人が持ってくるとは思わなかったな。話をして半日しか時間が経っていないのに仕事が早すぎる。と言うか、陛下はせっかち過ぎるぞ。


それからみんなで夕食だ。断られるかと思いながら誘ったけど、まさかこんなに喜ばれるとは思わなかった。急ぎじいやさん達に伝えると「御用意はできてます」の事。出来る大人はやっぱりカッコいいな。


ちなみに、その晩は、俺のしでかした事を酒のつまみに酔いつぶれるまで飲み明かしたんだとさ。ちくしょ~。絶対に飲んでやる!もう一度言う。絶対にだ!!


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