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第84話 久しぶりの王城

朝食後礼服に着替え、二人をエスコートして馬車に乗りこむ。王城に直接行くのは久しぶりだが若干気が重い。


正直あの空気にはなかなか慣れないし、人とすれ違う度にいちいち立ち止まり、一礼してから胸に手を当ててのお辞儀しなきゃいけない。いわゆる分離礼は心から無駄な気がするので本気で廃止してほしい。


考えてみて欲しい。陛下に会いに行くのになーんも生まない、気遣いだけの時間が最低でも5分以上。あーやだやだ。ま、ルールには従うけど納得思うところしかない。


王城に到着し、面倒な挨拶をこなしつつ陛下の待つ執務室に通される。


陛下とマーレさんと挨拶を交わすと、開口一番早速実践したぞと報告があった。「は?」と返事出来ずにいると、シャロンさんのレポートにあった索敵魔法のことだった。陛下って実はせっかちだよな。


「しかし、あの索敵魔法と言うのは素晴らしいな。これで間者や暗殺者に怯えなくても済む」


「陛下の仰るとおりですな。ですが、これを一般に広げるとなると話は別です」


魔法陣コピペと言う裏技があるので使用の難易度は低い。その代わり無節操にバラまくと、悪意を持つ者が犯罪に使うのを危惧してるんだろうな。


ま、原理が音波だから理論上ジャミングとか、いろいろ対策なんかも無くはないが、なにしろ話が広がるといろいろ面倒くさいので黙っておいた。


陛下によると、貴族と専属騎士、騎士団長、各町の衛兵長には配布するが、コピペ禁止の制約魔法を付与した魔石に設けて、下賜する方向で進めるとのことだった。が、それ、オレに報告は不要です。


ただ、そうは言っても俺たちが各国を巡る時に、必要なとき、必要な相手にはそれを教えたり、魔石に付与したりしても良いことにはしてもらった。


索敵魔法の話の後は、提出が遅れた事を詫びつつ、レポートを陛下に手渡す。


陛下は一通り目をとおし「なるほどな」と言ってマーレさんに渡すと眉間に皺を寄せて何やら考え出した。


「お父様。ヴェルのレポートは私も目を通しましたが、非常に良く出来ていると思います。参考になる知識が非常に多いです。魔法を反射させるとか言う、概念を覆すような事も書いてありますが」


マイアがそう力説する。完全防御や反射系のリフレクション魔法は、この世界には無い魔法だったみたい。


「魔法を反射させるとはな。このような知識をどこで得たのか追及はすまい。ただ、ヴェルが提案した城塞都市計画や兵法は非常に魅力的だが、飛行タイプや大型、あるいはドラゴンには通用はしないのではないか?」


やっぱりドラゴンいるんだ。見たい気持ちはあるが、お近づきにはなりたくない。


「流石にSランクの魔物には通用しないでしょうな。竜族の吐くブレスは魔法ではありませんし」


マーレさんはレポートに目を通しながら、深くため息を吐く。


「その解決策として騎兵団と冒険者が一体となって戦う事を提案したいんでしょ?」


「できれば、そこを触らずになんとかしたかったんだがな、違うか?マーレ」


陛下はため息を吐いたマーレさんに話を振る。


「陛下の仰るとおり、レポートの内容は大変素晴らしいの一言です。ですが周知のとおり、国が冒険者ギルドを巻き込むとなると色々と制約がですね」


「この話は我が王都だけではなく大陸全土の問題なのです!優先すべき民の命を脅かすのは、民を導く身としていかがなのですか!」


マイアがマーレさんに捲し立てると、陛下は眉間に皺を寄せてから、苦笑しながら口を開く。


「マイアの言うとおりか。うむ。必ず成功するとは言えんがやれる事からやってみよう。そなたたちが各地を回るときにアーレン王国以外の各国の王、皇帝、法王に親書を渡してくれないだろうか?」


「アーレン王国を外すのですか?」


前に俺を亡き者にしようとしていた上級悪魔は、アーレン王国の貴族令嬢に化けていた。


陛下の名前で、アーレン王国に即刻に抗議文を送ったところ、「上級悪魔が実在する貴族令嬢に化けただけなので、残念だとは思うがおれのせいじゃないよーん。いや残念でありますなあ」と何の慰めにもならない遺憾砲が飛んできただけだった。


陛下も同じことを思い出したのか苦い顔をしている。アーレン王国だけは同盟国ではなく、不可侵条約を結んだだけの関係だそうだ。


陛下が言うには。


彼の国はいわゆる軍事国で、中世のヨーロッパ的な?領主国連合と言うか、領主が自由に税を決めたり領法を決めたり出来る。で、領地間では民や領土の奪い合いはあるけど、宗主的な扱いである王家にクーデターを起こすことはない。


それぞれ好戦的な領主が多いものの、国として不可侵条約が結ばれている場合には、積極的な軍事行動は起こさない。


それでも、領主達は常に機を狙っており、各国に間者を送り調略を仕掛けたりする。


ハニートラップを仕掛けたり、貴族の不正や失敗を盾に内部崩壊を目論んだりしてたりするようだが、間者を捕縛しても尋問する前に、さっさと自害してしまい証拠を残すことがほとんどない。


仮に証拠を見つけても、アーレン王国に抗議をすると、さっきの遺憾砲か、首謀者もしくは手頃な貴族を処刑して首を直接送ってくるのだと言う。このあたりは中世ヨーロッパじゃなくて、日本の戦国時代だな。


そんな怪しさ満点のアーレン王国。実は冒険者の入国に関しては意外と簡単だ。


結局。冒険者ギルドは大陸を跨いだ組織で政治的、軍事的な介入は認められていない。アーレン王国にとってもそれは変わらないってことだ。冒険者を締め出すと迷宮の管理や魔石や素材、レアアイテムなんかの流通が麻痺してしまう。


アーレン王国の成り立ち、政治様態がいかに特徴的で他と違っていても、その部分に関しては自国だけでは立ち行かないことを理解している。


ざっくり言うとそんなところだとか。


ここまで聞いたところでドアをノックする音が鳴り、陛下に次のご予定が…と言う事で話が終わる。


親書については、今日城からの使者が直接屋敷に届けてくれる事になった。

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