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第79話 吊り橋

翌朝、朝食を済ませ6階層へと向かうと森林ステージだった。


太陽、ほのかな風、揺れ動く草木。まるで迷宮を出て草原に来たようだ。ちょっと先に村や町があると言われてもおかしくない。


しかし。迷宮とはいったいなんだろうな。地球の一般常識に照らし合わせると地下なんだから地層とか気圧とかだろ?


これがいわゆるラノベ設定になると亜空間とかどこかの地域の一部とかになる。まあラノベ設定と言うのは作者無双だから「こういうことになってるのでそれで進めるよ。異論は認めない」と言えばそう言うものだ。その代わりあまりにご都合主義だとつまらなくなって読者も離れていく。


ふむ。実際に体験するとさっぱりわからん。文字どおり迷宮入りだ。山田くん座布団。


「洞窟ステージからはDランクの魔物を中心に出てくる。それにどこから魔物が飛び出してくるか分からないので、ここからは私たちも攻撃に参加する」


注意しなければならないのは、野猿と言うサルとワイルドウルフと言う狼だとか。どちらも攻撃力も今までより強く賢く素早いうえに、噛みつくらしい。


ただ、よくよく聞くとワイバーンの外套を身に纏っていれば噛みつかれてもノーダメで、更にミスリルの腕輪にはダメージ軽減の魔石は付与されている。なので牙で攻撃を受けた場合に限り外套が裂けて軽傷を負う可能性がある、だって…シャロンさんとレリクさんいらなくね?


「魔法は有効なの?」


「避けられたらダメージを受けるわ。だからレイピアを鍛錬したのよ。ね、マイア」


「ええ。準備はできてます」


「そう言えば昨日のヴェル様の索敵魔法を試してみてはどうでしょう」


「いいですね。どれどれ」


「サーチ」お。上手くいってる。ただオレ以外みんなびっくりしているようだ。


「こっ・これはなんだ!昨日は気が付かなかったが、地形まで分かるではないか!!まるで地図のようだぞ」


「流石に高低差までは分からないですが凄すぎます」


いやー、元イメージレーダーだもん。流石に3次元で表示は出来ないけど全方向、探知レンジはそれなりだ。


「なぜそう冷静でいられるのだ。地図屋にこれを教えれば発狂もんだぞ」


「私も驚いていますよ。作ったのヴェルですから。気にしても無駄です」


「二人とも。心外です。抗議します」


チート持ちの主人公あるあるだ。が、いざ自分がその立場になるとやっぱり一言物申さずにはいられない。おれは人生をひと回り経験した由緒正しい普通人だからだ。


「ま、兎に角だ。ここまで目に見えるのならば、潜む魔物に怯える事はないだろう」


サラッとスルーか。


「ま、いいですけど。じゃあそうしましょう。魔物の居場所が見えるのならリスクは少なくなりますしね」


それからちまちま索敵しながら進んで行くと、魔力に動きがあった。取り囲もうとしているのが丸わかりだ。ジュリエッタとマイアは武器をレイピアに変形させる。


死角を埋めるように円形陣を組み、相手が襲ってくるのを待つ。想像よりも魔物の近寄るスピードが速い。とりあえず陣を崩さないようその場で斬り伏せる。


「しかし索敵魔法は素晴らしいですね。手に取るように相手の動きが分かる」


サラッと片付け迷宮コンパスが示す方向に足を進めると、巨大カブト虫や巨大クワガタとエンカウント。


1mを超える巨大な昆虫が飛んでくる。いや。ビジュアル的に怖いなこれ。と言うか、率直に言ってかなりグロい。腹を見せるな!思わず仰け反りそうになったが、後ろからの風魔法であっさりと撃退する。


自分も魔法が使えるんだからそうすりゃいいんだけど、魔法の無いところでの生活が長かった上に竹刀た木刀を振ってきたので、どうしても魔法攻撃がコマンドの上の方に来てくれない。


『もはやこりゃ弊害だな』


こればかりは中々直りそうもないなあ。心から困った時に考えよう。


それからは順調に6、7階層と踏破、昼食を挟んで8階層も難なく踏破する。普通ならここらあたりで疲労で動きが悪くなのだが今日は妙に体が軽い。ダンジョンならではの補正かな。気のせいかな。


9階層に入るといきなり風が強くなった。


野猿を相手に魔石回収を繰り返して進んで行くと滝の音がする。


「滝?」


索敵を使い始めてから念話は不要になり普通に会話をしている。


「そうみたいですね」


そのまま歩いて行くと、明らかに人工で作られたロープと木製の吊り橋が見えて来た。風は強い。シチュエーション的には何か起こりそうな気がして好きじゃない。吊り橋効果って言葉もあるくらい非日常だ…と思ったけどここはなんでもありのダンジョンだった。


索敵しても何も引っかからない。

そのまま吊り橋の目前に差し掛かると絶景が目に飛び込んでくる。


深い渓谷の奥には滝があり虹が掛かっていた。眼下に広がる風景は底が見えない。壮大な景色と裏腹に吊り橋は横幅1m程度だ。やっぱり不安要素しかない。


「ここって本当に迷宮内?あまりにもスケールデでかすぎて現実味が無いんだけど?」


「初めてだとそう思うのも無理ないわ。なんと言えばいいか…これが迷宮なのよ」


こっちでもそれでしか説明のしようがないようだ。


「吊り橋を渡ってるときに突風が吹いたり魔物に襲われたりはしないのかな。猿程度の知力があれば吊り橋のロープを切って俺たちを落とすくらい考えそうだけど」


「ヴェル殿、その心配は無用だ。ほら、あれを見ろ」


シャロンさんが、指をさす方向を見ると橋を支える支柱に何かの魔石が埋め込まれていた。


「結界石ですね」


「姫様が言うとおりあれは結界石だ。つまりこの橋では魔物は手が出せない。既に結界石が嵌められている時点で誰かが通ったわけだから強度も問題はないだろう」


「なるほど。そうなんですね」


と言う会話のあと吊り橋を渡り始めたのだが、なぜか一番吊り橋を不安視してる俺が先頭で進む事になった。なぜだ?


だいたい、仲間が橋を歩くたびにギシギシといやな音を立てるし、揺れにもちょっと恐怖を感じる。安全だとはわかっていても好きになれない。バンジージャンプなんて罰ゲームでもやりたくない。


だいたい、みんな安全だと聞いても不安そうな顔をしながら前の仲間の外套の裾を握っている。電車ごっこのようだ。強がらなくてもいいのに。


ちょっと、いたずら心からヒャッハーとぴょんぴょん跳ねたろかと思ったけど、後が怖いのでやめておく。そんな事思える程度は余裕はあった。


さて、歩いているうちに橋の終わりが見えて来た。もう大丈夫だろう。


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