第76話 鍾乳洞ステージ
三層目に入ると、通路の左側に川が流れていた。洞窟と言うか鍾乳洞だ。
(川が流れてるけど、これって飲める?)
(ここの水は大丈夫。ただ、フロアでは当然川の中にもモンスターはいるからあまりオススメはしないわ。戦闘中に飛び出してくることもあるしね)
川を覗いて見ると川の流れは緩やかで少し暗く川底は見えなかった。1.5mほどあるユグドクラシルの刀を突っ込んでみたけど底当たりしない。結構深いな。
(ちょっとヴェル、何遊んでるんのよ。警戒を怠るなと言ったのは自分のくせして)
(そうですよ。もう少し緊張感を持ちましょう)
子供に子供のような行動を突っ込まれるおっさん。心境は複雑だ。
少し歩いていると魔物フロアが見えてきたので、望遠鏡で確認してみると水色の体で二足歩行、魚のような顔をした魚人が3匹が槍を構えて待ち構えていた。RPGゲームでいうサギハンだ。はい、鑑定鑑定。
【鑑定: 清流サギハン 魔物ランクE
特徴:防御力は高いが、生命力は弱い。水から突然飛び出したり、稀にジャンプ攻撃をしてくるので注意】
(清流サギバンだってさ)
(見たら分かるわよって…ごめん…私だけが知ってても駄目だもんね)
(そうですよ。ジュリエッタには前世の記憶があるのですから。それで何か知っていることや注意する事はありませんか?)
(うーん。1階2階でわかると思うけど、はっきり言ってこの階層のモンスターは私たちの敵ではないわ。最初に決めた役割をこなせば全く問題ないはずよ。油断だけしないように。まあ、正直レベルが上がるとこの辺りは通るだけになるから)
(じゃ、正面のサギハンは僕が引き受けるから、川から飛び出してきたらそいつを頼むよ)
(分かった。でも油断はしないでね。エアスラッシュを使えば簡単に倒せるはず)
(無茶をしないと約束して下さい)
(約束するよ。痛いのは好きじゃないからね)
(それじゃ、後ろは任せたよ。「何も出てこなけりゃいいけどね」)
二人は頷くと、俺はサギハンに突撃した。なんか、フラグ立てちゃった気もするけど。
で、真正面にいたサギハンをエアスラッシュで討ち取ると、両脇のサギハンに続けざまに攻撃する。舐めてたつもりは無いのにサギハンは二匹とも槍で俺の剣撃を止め、2m程離れて防御体勢を取る。
(マジか?!E級モンスターってもっと弱いもんじゃないの?)
と、突然びっくり箱のように川からサギハンが飛び出し、着地をすると槍を構えた。が。その瞬間後衛の二人からのサンダーナイフとファイヤーボールで瞬殺、無事フラグも回収した。
残った2匹は俺が右薙ぎ、左薙ぎと連続で斬りつけて倒した。
(いや、まさか攻撃を止められるとは思わなかったよ。サギハンってこれでE級なのか?)
(サギハンは間違いなくE級モンスターよ。物理攻撃には強いけど魔法攻撃には、滅法弱いからね)
(そうだよな…これで魔法に強かったら、もうEじゃねーよ)
(そうね。実際上位種で魔法攻撃に耐久性を持っているサギハンウォリアーはB級だし)
(そうなると、かなり手強いんじゃないか?)
(ヴェルなら、今みたいにエアスラッシュを使えば楽に戦えるはず)
(ウエイトタイムを考えるとスキル連発はできないよな)
(確かにね。レベルを上げてウエイトタイムを短縮するしかないわね)
(うーん、当面はスキルに頼らずに剣速を早くする努力はするよ)
(地道だけどそれが一番かもね)
それから、サギハンの魔石を回収していると川の方から気配がしたので刀を構える。すると2匹の清流スライムが洞窟の壁にへばりついていた。
(おっ!すらスケの仲間じゃないか?これって捕獲出来ないのか?)
(もちろん出来るわよ。ヴェルのアイテムボックスなら、生き物を入れられるしね。このスライムなんだけど、私に1匹くれないかな?)
(私も欲しいです。すらスケを見ていたらペットに欲しいなってずっと思ってたのです)
(別に構わないけど。欲しかったら言ってくれたら買ってあげたのに)
(リン・イン・シャンが流行ったせいで、スライムの値段が高騰してるのです)
マイアは苦い顔をする。
あー、そう…そっちの方向に影響が出るとは全く考えてなかった。はっきりとした値段は聞かなかったが、子どもがちょっとねだって買って貰えると言う値段ではないようだ。
壁に手を伸ばして清流スライムをゲットし、アイテムボックスに収納する。
先を進むと、全身が棘だらけの2mほどのカニの魔物が2匹と、目つきが悪く牙の生えたカピパラのような魔物が2匹が見えた。カニとカピパラ?この組み合わせが良く分からん。
【鑑定: ソーンクラブ、 魔物ランクE
特徴:攻撃力、防御力ともに高いが魔法に弱く動きが遅い。ハサミよりも棘を使った攻撃に注意】
【鑑定: パラライズラット、 魔物ランクE
特徴:動きが俊敏で、麻痺毒を持つ牙で攻撃を仕掛けてくる】
(ジュリエッタ、何かわかる?)
(ソーンクラブは魔法に弱いから私たちが引き受けるわ。パラライズラットは素早いけど、ヴェルのスピードなら問題ないわね)
(分かった。じゃソーンクラブを二人で頼む)
射程距離範囲に入ると二人がファイヤーボールを放つと、赤い火の玉が命中して燃え上がった。
パラライズラットもこちらに気づいて一気に走り出したので、縮地+居合で一体倒し、後方に回ったパラライズラットを振り向きざまに袈裟斬りをして倒した。
川から距離を取り警戒しながら魔物に近づくと護衛の二人がやってきた。
「流石ですね。私達がアドバイスしなくても全く危なげなく攻略しています。パラライズラットの皮と毒の牙は素材として売れますけどここで解体しますか?」
「魔物の解体ですが、アイテムボックスに収納して別の場所でしませんか?迷宮を出ると消えちゃうとかだと無理でしょうが」
「残念ですがモンスターは死んだらすぐに浄化をしないとなんです」
「ああ、レリク、それは大丈夫よ。私とマイアのアイテムボックスは時が止まる仕様だから」
「はは。そうでしたね。忘れていましたよ。お二人が持つアイテムボックスが神アイテムだって事を。それでは解体は帰ったらにしましょう」
「で、レリクさん、あのカニの魔物は食べられないのですか?よく焼けた美味そうないい匂いがするのですが」
ソーンクラブは元々は紫色をしていたが、今では赤色に変色している。棘はあるがバラしたら美味そうだ。念のため言っておくと俺はエビ派だけどね。
「一部の地域では魔物を食べる風習があるそうですが、我が国ではそう言った風習はありません」
「あんなに美味しそうなのにですか?ちょっとバラしてみますね」
他のメンバーは苦笑いしている。わかってねーな。カニだぜ?もし食えるなら高級食材だよ?まあ事実を知ってひれ伏すがいい。と俺はいそいそとソーンクラブのハサミの付いた足を根元から切り落とし、白い身にかぶりついた。
「うまい!」
わはははは!思ったとおりだ!
清流にいた魔物なので臭みもなく味が濃厚で美味い。まさに蟹の味だ。これを浄化して、はい!さようならと言うわけにはいくまい。
「本当に美味しいの?」
(嘘は言わないよ。食べてこらん)
念話は便利だ。俺の口はカニの対応で忙しいからな。
ゆっくり嚥下し蟹の足を切り分けてそれぞれに渡すとみんな、最初の一口は恐る恐る、二口目からは一気にかぶりついた。魔物だろうが何だろうが美味しいは正義だ。みんな驚いたようだけどとても美味そうに食べてる。
「本当に美味しいです。今まで魔物がこんなに美味しいとは考えたこともなかったですね」
レリクさんも満足気だ。
「本当ですね。私も長い間冒険者をしていましたが、食料は充分用意するので、魔物を食べる事など考えもしませんでした。そもそも解体した魔物は素材であって食材ではありませんから」
シャロンさんが言いたい事は分かる。
アイテム袋の存在以前の話だろう。魔物は食べるものではないって先入観があると口にしようとも思わないからな。ギルドの教育段階の話になってくる。
ま。食えるものは食う。とりあえずソーンクラブの足だけを解体してアイテムボックスに詰めてから本体を浄化した。カニミソにも興味はあるが手頃な容器も無いしな。
その後もサギハンは即浄化、ソーンクラブは足だけ食材に、パラライズラットは素材用にとアイテムボックスに収納しながら進んでいくと4層目に降りる階段が見えて来た。




