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第73話 学園迷宮 一層目

迷宮の初心者講習を受けるとその足で早速迷宮に向かう。


迷宮の入り口は地下道のようになっていて、警備の兵士に学園長から受け取った特別許可証と魔獣避けの聖水、ポーション、浄化のタクト、最後にギルドプレートを見せる。


「全ての確認を致しました。姫殿下とお連れの皆様、お気をつけて行ってらっしゃいませ!」


おおっ。まさかのおまけ扱い。ゆかいな仲間たち的な?ま、でも俺の事は一般には非公開なので仕方が無いか。


マイアは不満を隠さず「ちょっと!」と詰め寄ろうとしていたが、ジュリエッタが小声で窘める。ここで揉めても時間の無駄だしね。警備の兵士に見送られて迷宮への階段を下り始めた。


階段を下りると、ちょっとした広場があり、扉の前に立て札が立っていた。扉の両サイドには灯篭のようなものがあって結界石が嵌め込まれている。


【結界石に触れるべからず。この先迷宮につき装備の準備を怠るな】


と書いてある。念のため装備の確認をするが準備は万端だ。


いよいよ迷宮の扉を開けようとすると、扉は結構重い。開きはするが婚約者の二人じゃ無理だ。無理に決まってる。と言うか、そう願いたい。女の子でいて欲しいよね。


扉を開けて中に入ると、いきなり下へと続く階段がある。


「階段があるから、踏み外さないようにね」


迷宮は危険区域なのでレディファーストと言うわけにはいかないが、両手を差し伸べてエスコートする。途端に2人とも笑顔だ。オレも随分と慣れてきたものだ。もう照れもしないし。


階段を降りると大きなフロアがあって石碑が置かれていた。シャロンが言うにはこれが転移の石碑。いや、墓だこれ。俺には墓石にしか見えない。御影石っぽい素材といい家紋のところに彫られている魔法陣といい、思わず線香を立てたくなる。


その先にまた扉があった。扉を開けると迷宮の内部は説明どおりの洞窟で、どう言うわけかうっすらと明るい。ランタンいらないんじゃないの?


不思議な洞窟は、まずは一本道のようだ。進もうとするとシャロンさんに止められた。


「最初にお話しすると、この洞窟内の魔物は基本的には開けた場所にしかいません。こうした通路に魔物が現れる時は逃げる冒険者を追いかける時だけです。洞窟の開けた場所が見えたら戦闘準備を。それからこの先は出来るだけ念話を使うことを勧めます」


「念話を始める前に質問なんですが、なぜそんなに都合よくフロアごとに魔物がいるんですか?」


「フロアに魔素が充満するからです。魔物は魔素から生まれます。理屈は未だ解明をされていませんが、倒したとしても一定の時間と魔素が溜まると、また復活するように魔物が現れるんですよ」


「それは、数も魔物の種類も同じなのですか?」


「いえ、フロアによって種類も数も違います」


「なるほど。また分からない事がありましたらお願いします」


「はい。わかることであれば。これから私とレリクは、6階層までは戦闘には加わりません。実践経験を積むためです。頑張ってください」


「了解です」


護衛の二人はジュリエッタの過去を知らないが彼女は過去に経験済みだ。不安なんてこれっぽっちもない。念話がある限りバレる可能性も無いしね。


それから話し合った結果、ジュリエッタは魔物と戦った経験はあるんだろうが、オレとマイアには無い。無駄かも知れないが、面倒だけど鑑定を使って進む事になった。単純に魔物に興味があるからだ。


それと、シャロンさんとレリクさんも臨時パーティを組んだようだ。パーティ名は【銀狼の牙】。昔組んでいたパーティの名前なんだって。


二人は俺達から距離を置いており、いざとなったらいつでも助けに入れる距離を保ってくれている。そう言えば二人が王都で再会して一年になる。二人の関係に進展はあったのだろうか?


(そういやあの二人の関係ってあれから変わり無し?)


(ええ。浮いた話は聞かないわね)


(レリクさんは、諦めたのでしょうか?)


(諦めてないと思うぞ。もし諦めたなら一緒にいられないんじゃないかな?)


(どうして?)


(もし旅でシャロンさんに好きな男性が現れたらどうする?一緒に旅を続けるのはオレなら嫌だね)


(うーん、自分ではあきらめたつもりでも、それでも一緒にいたいと思うのも恋心ではありませんか)


と、洞窟の突き当たりの角で影が動いた。この先に広い場所があるのだろう。


音を立てないように角まで行くと、手鏡を出して様子を伺う。すると1mサイズのゴブリン3匹が弓を引いて待ち、4匹がナイフを構えて待ち伏せしているのが見えた。とりあえず鑑定してみる。


【鑑定: ゴブリン 魔物ランクF 

特徴:短刀、弓を操る。単体では弱いが、頭も良く複数の場合は厄介】


と、表示された。ラノベで出てくるアーチャーとかの分類は無い模様である。


(待ち伏せか。思ったより賢いな。ここは安全策で、閃光で目くらまそう。俺は弓を持つゴブリンをやる。二人はナイフを持ったゴブリンを頼む)


(了解)(了解です)


こんな日の為にサングラスを用意していたので、全員に渡した。対閃光防御である。


全員がサングラスを装着したのを確認し、右手だけ通路に出し「閃光」と詠唱。ゴブリン達は予想外の眩しさに目を押さえて苦しそうに悶えている。


オレは飛び出すと、苦しむゴブリンを首を狙い斬る。「ひとつ、ふたつ、三つ目だ」左右の横薙ぎでゴブリンの首を目掛けて刀を振ると、弓を持ったゴブリンは何も抵抗出来ずに首が勢いよく飛んでいった。


ナイフを持っていたゴブリンも、二人がウインドカッターで仕留めたようで、横に真っ二つに切り裂かれていた。不思議な事に傷口からは血は出ていない。代わりに紫の煙のようなものが出ている。


「お見事。初めての戦闘とは思えぬ戦いぶりだ」


「そりゃ、ヴェルがいるのです。余裕よ余裕」


「本当ですわね。ゴブリンは何も出来ませんでしたから」


これってゲームじゃないから当たり前だけど攻撃を受ければ怪我もするし痛みもする。出来るだけ相手に攻撃をさせないのが狙いだったので初戦にしては上出来だろう。


紫の煙については説明が一切無いのでなんだかわからないか気にしていないんだろう。


血しぶきじゃなくて良かった。が魔物の遺体は見ていて気持ちのいいモノではない。とっとと浄化のタクトの先をゴブリンに向けて「浄化」と詠唱する。


するとゴブリンの死体は武器を含めて紫の煙となって消えて行った。さすがファンタジー世界だ。武器まで紫の煙となって消えたのは理解に苦しむが、まあ慣れるだろう。


浄化が終ると魔石が残った。拾った魔石は3cm程の大きさで無色透明だが、ここから加工すると1cm以下になるのだろう。鑑定をすると【Fランクの魔石 銅貨5枚】と表示された。500円かっ。安っ!いや、でも良く考えたら数分で3500÷3て事だな。悪くない稼ぎだな。商業ギルドの件がまだ尾を引いているようだ。


命を懸けて冒険者をするわけだから対価に見合うかどうが問われると疑問だけど、最初でこれぐらいの収入を得られるなら冒険者を希望する人が一定数いるのは頷ける。


それから洞窟コンパスの示す方向へ歩いて行く。分かれ道があってもとにかくコンパスの示す方向へと進む。


(ジュリエッタ。もしコンパスどおりに進まなかったら、罠とか宝物とかあるのか?)


(行き止まりか遠回りかどっちかよ。宝箱とか罠とか迷宮にはないわよ。空想で書かれた創作本の読みすぎじゃないの?)


むむっ。これでも職業小説家なんだが。ええ、空想で飯食ってたんだわ。色々とすいませんね。と、心の中で毒づく。残念ながらコテコテの設定はないらしい。


ちょいスネながら、歩いているとまた奥に開けた場所がある。双眼鏡を出して覗いてみるとゴブリン7匹が短刀やナイフを持って待ち構えていた。


(飛び道具を持ってるゴブリンはいない。閃光を使わずにゴブリンを仕留めるから後方支援宜しく)


((了解!))


中心にいるゴブリンに向って縮地で間合いを詰めてからの連続攻撃で付近のゴブリンを次々と仕留める。


婚約者の二人も魔法を放ったようでゴブリンは炎に包まれて黒コゲになって絶命していた。無双?くくく。オレTUEEEEE。しかし、ワンサイド過ぎるな。


その後も度々ゴブリンと戦闘になるが、閃光を使わないように出来るだけ普通に魔物を殲滅する。実戦経験を積むにはその方かいいと思ったんだが、思ったより弱すぎてほとんど積めてないかも…


ゴブリンを浄化して魔石を得るを繰り返す。


「それにしても、その縮地は反則だな。攻撃態勢をとるゴブリンが、得物を振り上げる前にやられるとはな」


呆れたものの言いぐさでシャロンさんは言う。


そして、迷宮コンパスどおりに進むと、下に降りる階段が見えてきた。ここまで約1時間。意外に歩いた気がする。


それにしても1層目の魔物は数が多いが全てゴブリンだった。魔物ランクは最低のFだけど最低でも5匹が纏まって出てくるので本当の初心者冒険者にはキツいんだろう。


飛び道具も使うしさほど頭も悪くないようだ。前衛後衛と役割分担までしている。もしソロ冒険者として活動するのならそれなりの知識や経験無いと厳しいだろうな。今の俺たちには当てはまらないけど。


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