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第70話 ゴードンの武器屋

ギルド会館を出てからじいやさん達と合流して定番となった風見鶏でランチ。食べ終えて武器屋へ向かう。聞くところ品質、品揃えは王国一の店らしいのでかなり楽しみ。


本当なら、屋敷に持ってきて貰う方が混乱もないし、いいとは思うけど色々な物を見回りたいので直接受け取りに来たと言うのが今回の流れだ。


レストラン街を抜け、職人街に入ってすぐのところでシャロンさんが「ここです」と指差したお店には【ゴードンの武器屋】と木で出来た看板が立っていた。


店はレンガ造りでショーウインドウには、動きやすそうな鎧、斬れ味がよさそうな剣、防御力が高そうな大盾が並んでいた。さきほどの貴族冒険者が来ていたような趣味の悪いフルプレートアーマーは売っていない。


店に入ると30cmほど底上げされたカウンターでドワーフが店番をしていた。王都でもちょこちょこ見かけたけど身長はやはり小さい。オレと同じ140cmぐらい?カウンターが底上げされてるのは人間の大人と同じ目線にするためだろう。


ドワーフのイメージってサンタクロースみたいな髭だと思うけど、ホントそのまんまだ。笑える。髪や髭の色はこげ茶だし、顔つきはドワーフの方がごっついけどね。


「ドワーフがいるなら、子供用の武器や鎧もあるんじゃないの?」


武器のコーナーで短剣を見ていたシャロンさんに小声で聞くと、装備出来ないことはないけど、そもそも骨格が違うのでちょっと無理があるみたい。


「ヴェル殿。魔物の素材を剥ぎ取るためのナイフは持っておいでか?」


「ユグドラシルの武器が形を変えられるので必要は無いかと思ってます」


「そうであった。あなた方には私たちの常識が正しくないと言う事を忘れていましたよ」


呆れたようにそう言うシャロンさん。でもその言い方!!同じ人種ですよ?


腑に落ちない思いで店内をふらふらしていると、ふと外套が並ぶコーナーで、子供用猫耳ローブと書いてある。白い猫耳の形をしたフード付きのコートだった。これ、コスプレ用じゃないの?武器屋にこんなものは…と思わず試着をしてみてフードを被る。


「ヴェル、ちょっとなにしてんのよって。かわいい!っていうかとても似合うじゃないの!!」


「ほんとですわ!ちょっと私も着てみたいです!!」


いつの間にかこちらに来ていた二人が喜んでいる。お気に召したようだ。でも男にかわいいって!いかがなものか?と文句を言う間もなく二人が奪い合うように試着を始めた。美少女は何でもよく似合うなあ。眼福眼福。


いや、二人も本当に気に入ったようだ。これなら普段着にも使えそうだし買ってもいいな。


「気に入ったら買ってあげるよ」


「えっ!ほんとに?ヴェルありがとう。嬉しいわ!大切にするわね!」


「右に同じです。ありがとうございます」


二人はご満悦だ。と、シャロンさんが何やらケースを持ってやってきた。


「ヴェル殿、これはどうでしょうか?」


木箱のケースを開けると、好きな属性付与出来る無色透明のビー玉の様な魔石が6個入っていた。


「形、大きさ、どれをとっても均一です。値段は少しお高めですが魔石は消耗品とはいえ生活や命を守るもの。効果、耐久性を考えると、これが私のお勧めです」


「シャロンさんがお勧めするなら間違えないでしょう。ジュリエッタの分とマイアの分も買いましょう」


「在庫があるか確認してきますね」


「お願いします。それから、日ごろのお礼代わりにみなさんに外套を差し上げたいのですが、シャロンさんとレリクさんもお好きなのを選んでもらっていいですか?」


「え?私達にも買って頂けるのですか?」


「もちろん。こちらの都合で旅について行って貰うわけですし、身分を隠して諸外国に行くのに王宮騎士の外套を着ていく訳にはいきませんから。必要経費でもあるし、臨時収入がありましたからプレゼントしますよ。遠慮はしないで下さい」


外套コーナーに行って思い思いのコートを選びに行った。商業ギルドではお金を受け取らなかったとは言え予算は結構残っている。余計な遠慮されなかったのは良かった。


それから、間もなくするとシャロンさんとレリクさんもフード付きの外套を選んだ。普段は鎧姿しか見ていないので新鮮だし上品だ。シャロンさんはやっぱり美人だ。つい目がいってしまう。忘れてたけどおっさんとして生きてた時間も短くないんだから多少は許されるだろ。


それにしても婚約者の二人はなに?しっぽまで付いている外套選んじゃってるよ。可愛いけどちょっと実用に欠けるんじゃない?コスプレ系はさっき買っただろ?どこに向かってる?一言何か言った方がいい?


よくよく思い出すと「しっぽをむふもふ」とかいって揉めたっけ。これで我慢しろっていう意味かな?


買うものが全て決まってカウンターに向うと、カウンターの奥の方から小気味よく鉄を打つ音が聞こえる。


覗いてみると奥は工房になっているようだ。窯が見え、その横で見た目が若いドワーフ達が剣を打っている。


「マイアと申します。王室から頼まれていた防具は出来ていますか?」


と、尋ねると、王女が自分で取りに来るとは思っていなかったのか、ドワーフの男は慌てて工房に繋がる扉を閉めた。


「へい。こちらになります」


ドワーフはカウンターの下から、防具を3セットカウンターに順に並べた。オーダーメイドなので、一番上には紙が置いてあり名前が書いてある。


興味があるので、防具を手にとって鑑定をしてみる。もちろん、失礼にならないようこっそりと。


オレが注文した装備の鑑定結果は、ミスリルの腕輪(A)、ワイバーンのマント(B)ワイルドウルフのブーツ(B)


婚約者の二人の装備も鑑定すると、ミスリルの腕輪(A)、ワイバーンのローブ(B)、ワイバーンの手袋(B)、ワイルドウルフのブーツ(B)と結果が出た。値段など細かな部分はスルーした。


使用感を確かめる為に装備させて貰う。ちなみに、この世界の武器に使用される鉱石のランクは、青銅(E)⇒鉄(D)⇒黒鉄(C)⇒鋼(B)⇒ミスリル(A)⇒緋緋色金(S)⇒オリハルコン(SS)


魔獣皮は種類が豊富で素材がピンキリなので魔物ごとにF~SSまであるようだ。


Aランク以上の鉱石や魔獣皮はAランク迷宮の最深部もしくはフロアボスからしか手に入らないようで、ランクが高ければ高いほど手に入らないみたいだ。レア度が高い素材は冒険者が自分で使うことが多く市場には出回ることが少ないそうだ。


シャロンさんのレッドムーンの素材は緋緋色金。かなり入手しにくい高価な武器であるのかが分かる。


シャロンさんの話では王宮騎士全てに国から貸し与えられており、紛失しようものなら上級貴族で降格処分。貴族、一般なら弁償もしくは死罪だって。


武器は物だ。そんなペナルティよりも人材大事。処分なんて必要ない、もしくは個人で負担できる範囲にすべきだ(キッパリ)。そんな貸与品オレはいらない。

※個人の感想です


さて。今回の装備。オレなりに綿密な考えのもとに決めたものだ。みなさん(誰?)にも説明しよう。


まずマントやらローブ。鎧も考えたが、持ち前のスピードが生かされないのでやめた。片手剣を選択した者は盾を装備するのが基本だけど剣道に盾は使わない。当然慣れていないし動きが悪くなる。刀に盾は似合わないしね。もしどうしてもと装備を考えるのなら、コテって言うかガントレットがいいかな。


でその代わりにミスリルの腕輪よ。ミスリルの腕輪を装備していれば防御系の魔法が付与出来る。出来れば緋緋色金の腕輪が欲しいのだが希少金属なので素材が無い。


ミスリルは硬さこそ鋼と同じぐらいだが魔法付与が出来る。で、ミスリル以上の鉱石となると魔鉱石と呼ばれる更に魔力伝導率が高い石。これを使うと防御魔法あるいは身体能力を向上させるスキルさえあれば、Sランクの防具と同様の防御力が得られる。


その上が緋緋色金だ。ランクが上なのはミスリルよりも硬く魔法付与出来る数が多いと言う事。なのでこれは今はともかく大人になるまでに入手は必達。その機会が早く来る事を願うばかりだ。


ただし。魔鉱石全般に言える事は魔力を流し続ければならないのと、それなりのスキルを覚えていないと鋼と変わらない。なので実は防具としての人気はかなり低い。


逆に武器としてミスリルを使えば、魔道具のように魔剣、魔槍、魔杖として使えるのでみんな防具では無く武器に使う。現にこの店に売っているミスリル製品はほぼ攻撃用の製品ばかりだった。


魔力についてはオタクレベルまで鍛え上げたオレたちからすれば、現段階でミスリルほど有用な素材は無いと断言していい。


ついでに言うと。ワイバーンの皮は防御力が高く魔法攻撃にも強い。ワイルドウルフのブーツは軽くて丈夫なのが特徴。


うむ。我ながらバランスが取れている。何よりオレ達はまだ子供だからな。成長に合わせて装備も替えていくし、子供が激レア装備で固めてたら間違いなく悪目立ちする。ふっふっふ。完璧。どうよ?


全員が防具を装備すると、完全にVRMMOになった。テンションも上がる。もっとも、ゲームと違い痛みはあるし、ミスは死に直結する。生身の世界なので残念ながら都合のいい設定は無い。


「どう似合う?」「似合いますか?」


クルリと回ってハモった。いつもながら息はぴったりだ。


「うん。似合っているよ」


魔石と外套の支払いをして店を出る。

あ、念のため言っておくとじいやさんへのプレゼントは外套じゃないぞ。いくらオレが子どもでもそんな無粋なことはしない。

目利きではないけどそれなりのワインをプレゼントすると涙目で喜んでくれた。


じいやさん、オレ達が成人したらぜひワインを酌み交わそう。楽しみだ。

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