第65話 初級攻撃魔法を試す
砕石場では、神託の儀を終えたらしき子供が何組か、親と一緒に試し打ちをしている姿を見かける。思っていたよりも少ないな。
「すごく人が少なくないか?」
「それはそうですよ。神託の儀を受けた子供の中でも職業スキルを与えられた者は限られます。レベル2からしか攻撃魔法は使えませんしね。練習できても数発しか練習出来ないのです。親がついて来ているのは、もしこの場で気絶したら大変だからですよ」
呆れ顔のレリクさんにそう言われた。
そんな訳で、人のいない場所に移動。じゃんけんで勝ったマイアから試す事になった。兵士の演習に実際見たていたのと、事前に本で勉強をしていたみたい。イメージはバッチリだそうだ。
そんなわけで各属性魔法を試し打ちする。
ちなみに、魔法書に書かれている順番は、
火属性魔法:【Lv2】ファイヤーボール=火の弾を敵に向って射出。
水属性魔法:【Lv2】ウォーターアロー=水の矢を敵に向って射出。
風属性魔法:【Lv2】ウインドカッター=風の刃を敵に向って射出。
土属性魔法:【Lv2】サンドシールド=暑さ10㎝ 1.5m四方の土の壁が出来る。
雷属性魔法:【Lv2】サンダーナイフ=雷を帯びたナイフを敵に向って射出。
とまあこんな感じ。
それから婚約者の二人は「ユグドクラシルのロッドよ顕現せよ!」ハモる。なんだか魔法少女なんちゃらと言いたくなるほど息が合っていて思わずにやける。これで変身でもしようなら万歳してしまいそうだ。
「まさか本当に詠唱で武器が出てくるとは…まさに神器にふさわしいな。それでは姫様、火属性魔法のファイヤーボールを試してみましょう」
「分かりました。やってみます」
先ほど馬車の中で聞いた話には続きがあって、俺たち3人は全属性魔法が使えるので魔石を装備する必要は無いそうだ。
マイアは、ロッドを岩に向けて「ファイヤーボール」と詠唱をすると、ロッドから赤い火の玉が顕現。ロットを振るような動作をすると、もの凄いスピードで飛んで行った。
大きな火の玉が岩に当たると火柱が上がって5秒程度で消えた。岩は黒い煤だらけなっている。
「凄い威力ですね」
シャロンさんは大きく目を見開いて目を白黒させている。マイアも自分で魔法を放ったのに驚いている。
「ユグドクラシルの武器はどうやら、魔法の威力が上がるようだわね」
ジュリエッタの記憶は、神様からユグドクラシルのロッドを与えられる前までなので、効果までは知らなかったようでジュリエッタも驚いている。
「ええ。普通の倍といったところでしょうか。姫様、魔力切れとか大丈夫ですか?」
「問題ないですわ。次はウォーターアローですね。少し試したい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
「危険が無いならよしとします」
マイアはにっこり笑うと「ウォーターアロー」と詠唱する。水の矢が5本顕現して岩に突き刺さって消えた。
「シャロンさん。これって普通なんですか?」
「いや普通は1本ですよ。まさかいきなり5本とは…」
「これって狙いを分散させる事って可能なのですか?」
「普通は1本しか飛ばせないないので、分かりません。一度実験してみましょう」
マイアは言っている意味を理解したようで、もう一度「ウォーターアロー」と詠唱する。すると、5本の水の矢は別々の方向に飛んで行った。
「やったー!!イメージどおり!!」
「イメージどおり出来るなんて凄いじゃないか」
褒めるとマイアは「イメージすれば出来そうだから、何か思いついたら言って下さいね」とドヤ顔を向ける。チョロ…素直と言うか単純と言うか扱いやすい。
『しかし、イメージすればそのとおり出来るのか。神器って凄すぎる』
それから、時間差で矢を飛ばして貰ったが、これも出来てしまった。複数の魔物にとても有効だと思う。
次は風の魔法だ。マイアは「ウインドカッター」と詠唱すると、横2m程の風の刃がの岩に射出されて岩を切り裂いた。
シャロンさんが「縦になる様にイメージをしてウインドカッターを放って見てください」とアドバイスする。
目を瞑り「ウインドカッター」と詠唱すると風の刃は、アドバイスどおりに縦に飛んで行き岩を切り裂いた。どうやら風の刃の向きは自由に変えれるようだ。
「出来ました!」
「流石は賢者様だ。スジがいいと言うか、普通のウインドカッターなら、風の刃の大きさは1mほどなのに対し見た目だが倍の大きさだ。これなら複数の魔物を殲滅できそうですね」
「それは助かりますね。ちなみにウインドカッターって魔物に当たると消えるのですか?」
「ええ。その認識で構いません。もし当たらなかった場合も有効射程距離、概ね4mを越えると消えてしまいます」
「なるほど」
それから、サンドシールドと詠唱すると、厚さ10㎝ 1.5m四方の土の壁が出来た。中級程度の物理攻撃、魔法攻撃が1度だけ防げ、壁ができて消えるまでの持続時間は30秒間だった。レベルが上がれば持続時間が延びるそうだ。
最後は雷属性。マイアが「サンダーナイフ」と詠唱すると、黄色く光るナイフが3本は別々の方向へ向いて飛んで行く。
ウォーターアローと似ているのだが、ウォーターアローは突き刺さって消えたのに対して、サンダーナイフは岩に突き刺さると帯電したかのように黄色く光り、岩はそのまま砕け散った。
「言われる前に別方向に飛ばすなんて流石だね~」
「へへへ。それぐらい分かりますってば」
マイアは、今度は照れくさそうに笑う。百面相みたいで面白い。姫様なんて清楚なイメージは全くない。いいのか?これで?
マイアの魔法の試し打ちが終わったので、今度はジュリエッタに交代だ。
「さあ、次はジュリエッタだ。マイア、交代しよう」
「はい」
ジュリエッタは火属性(3)のみと言う事で、ファイヤーボールを試し撃ち。威力がマイアよりも凄かった。
ちなみにジュリエッタは無調整で魔法を放っていたようで、明らかなオーバーキル。魔力のコスパが悪い。そう、スライムにベ◯ラゴンのように。なので魔力の微調整しながら魔法を撃ってもらう事にした。
いろいろ試した結果、魔力操作で最大値は固定されるけど、火の玉の大きさはまるでコンロの火の様に自在にコントロール可能だった。
ジュリエッタは「愚直に魔力操作の鍛錬をしていて良かった」と満足気だ。俺としては、ヒーラーなのに攻撃魔法を使えるのは大きい。
ちなみにマイアも魔力操作をしながらやってみたが、ジュリエッタほど上手くは出来ない。
シャロンさんにはそれでも凄いと言われていたが、本人は納得してないな。頬がふくらんでいるよお姫様。負けず嫌いなのもいい事だし、そこががかわいいのだけどね。




