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第54話 神託の儀

 新築した屋敷に転居して半年。俺達は1年前倒しして神託の儀を迎えた。ちなみにひと月前にはオレに妹が出来ている。シェリーと名付けたそうだがまだ会えなさそうだ。


俺達は、陛下の手回しで通常より2時間早く8時に王都の教会へと入った。


具体的な手続きは、3人~5人ごとに神父さんからステータスカードを受け取り、順に神様の像のある場所へと移動する。


そして神像の前に跪き、受け取ったカードを挟みこんで手を合わせて祈ると成功すれば、ステータスがカードに書き込まれるそうだ。


この時に生活魔法である四つの属性が付与(解放?)される。その後に神父さんからジョブの選択と魔力操作の事について説明をされることになっている。


前に本で読んだとおり、職業スキルやユニークスキルは血筋が関係してくるのだが、職業スキルを得た者は家族と話し合って決めることもできるように24時間以内なら変更も可能になっている。進路相談みたいな感じだな。


「いよいよね。長かった…」


ジュリエッタが、小声でそう言ったのが聞こえた。


「んっ?今何か言った?」


「えっ、ああ、最近の中で一番緊張するわね…って言ったのよ」


「ええ。どんなジョブが与えられるのかは不安ですが、楽しみでもありますね」


『ジュリエッタが動揺しているっぽいけど、どうしたんだ?』


「まあほら。どんなジョブでも、がんばりや努力でスキルが新たに芽生える事もあるみたいだし、16歳になったらもう一度選び直せるんだ。それに少なくとも俺達は、この1年間がんばってきたんだから、あとは神様に任せよう」


そう言うと二人は笑顔で頷いた。


中ではマーレさんが待っていて、笑顔で俺達を出迎えてくれた。


「3人とも、おはよう。とうとうこの時がやって来たな。年甲斐も無く昨日は期待と興奮で眠れなんだ。さっ陛下が部屋でお待ちだ。中に入るがいい」


教会の中はステンドグラスを通した日光がキラキラしている。空気が変わったのを感じた。神聖な場所に相応しい。


祭壇に目を向けると、陛下が跪き神像に祈りを捧げていたようで立ち上がって手招きをする。


「3人とも早くこちらへ来るのだ。何せお忍びだからな。急かして悪いが早速儀式を始めよう」


朝の挨拶まで端折る。よほど急ぎのようなので、俺達は陛下の待つ祭壇まで歩いて行くと、神父さんが扉を開けてやってきた。


神父さんは祭壇へと上がる。


「皆様、お揃いになられたようなので、こちらをどうぞ」


神父さんが俺達3人に王侯貴族用のプラチナ色のステータスカードをくれた。


「それでは新しく神託を受けられる皆様。本来ならば12歳で神託の儀となりますが、陛下たっての要望で今ここで執り行うことにします」


「さぁ、こちらの神の像の前に来て跪き、ステータスカードを手に挟み祈るのです」


本に書いてあった手順どおりなので、俺達3人は神様の像の前に跪き、カードを手のひらに挟みこんで祈りを捧げた。


するとどうだろう。一瞬時が止まりまわりの世界がモノトーンになるとパッと光り周りの世界が真っ白になる。これが神託の儀?


瞼越しの光が無くなると、そっと目を開けた。


「よく来たな。ヴェルグラッド」


ここどこだ?俺は神殿ぽい所に立っていた。


「ここはどこだ!!教会じゃないのか?」


「そう慌てるではない。ここは神界じゃ。ワシがこの世界の創造神オルディスである」


声がする方を見てみると、長い髭を生やした老人が一人立っていた。死んだ時にはこんなイベント無かったのに今になって神様に呼ばれたようだ。容姿も喋り方もテンプレどおりだが、神々しさが半端ない。


すると後方から「ヴェル!!」と言って、長く赤い髪の物凄い美人が走って来ていきなり涙を流しながら俺に抱きついた。


「ヴェル。会いたかった!!」


「どどど…どなたですか?!」


いきなりこんな美女に飛びつかれて狼狽しない方がどうかしている。それほどの美女であった。


「私よ。ジュリエッタよ」


どことなく雰囲気は残っていたが、まさかの大人になったジュリエッタ。いやこんなに美人になるのか。


「僕の知っているジュリエッタはまだ11歳の子供なんですが?」


「ジュリエッタ。そのくらいにしておきなさい。彼、戸惑っているわよ」


恐らく女神様だと思う。神様の隣で立つこれまた凄い美人が、大人モードのジュリエッタにそう声を掛けた。


ふと気がつくと、自分の体も大人になっていて正直びびった。贔屓目に見なくても首から下はイケメンだ。うむ。


「ありえないだろこれ。どう言うことだ?」


「驚かせてごめんね。どうしても大人の姿のあの時のあなたに会いたかったのよ」


「ん?ちょっと今何が起こってるのか理解できないってば。それにこちらの方は?」


「私はこの世界の時を司る神、レアリーフ。ヴェル、忘れてしまっているようですがあなたは一度この世界で亡くなっているのです。赤子の時に言葉が理解出来ることを、不思議に思いませんでしたか?」


「それでだったのかっ!と言う事は、今この世界で人生をやり直ししていると?」


「ええ。そのとおり。合っています」


「それで、なぜ僕は死んだんですか?」


「魔王の四天王である、シルフィスを倒した直後に、あなたに駆け寄って行ったら、シルフィスが残りの力を振り絞って、私に向かって槍を投げ放ったの。それをあなたが庇って、私の代わりに…」


俺が日本で死ぬ前に見た夢を思い出した。まさかあれが現実だったなんて…意味が分からん。


「私はこちらに転生をする前に、夢で何度か転生前の夢を見た事があります。あの夢は本当にあった事と言うわけですね」


「完全には魂から記憶は消えなかったようですね。恐らくはシルフィスの魂に掛けた呪いが原因だと」


「なるほど。それで…」


全ての謎は解けた。あの夢は全て現実に起こった事で、それを俺は小説に書いたのである。


「それでは、今の体に戻しましょう。それと賢者であるマイアにも色々と説明しておいた方が良いでしょう」


「へっ?マイアが賢者?!!」


女神様はそう言うと、俺とジュリエッタの体は元に戻り、隣にはきょとんとしたマイアがいた。


「ヴェル、ジュリエッタ。ここはどこなの?」


「神界と言えばわかるかしら」


ジュリエッタが説明をするとマイアが固まる。そりゃそうだろ。いきなり神界だぜ。神様だぜ。俺もびびったよ!


「本当なんですか?」


「ああ。本当の事らしい。正直言えば俺もまだ思考が追いついてない」


「そっ、そうですね。明らかにここは教会ではありまえんものね」


マイアは自分のほっぺたを引っ張ると痛くないのか、変顔になっている。オレも試しに引っ張ると確かに痛くない。


別に笑いを取る為にやっているのではないのだが、ジュリエッタは大笑い。神様達は苦笑いをしている。


「それでは今から、ジュリエッタの記憶を再現したものを見てもらいます。予め言っておきますが、これは現実に起こった事です。目を逸らさないで見て記憶に留めるのです」


女神様はそう説明をすると、まるで映画を見るように、目の前に映像が流れ始めた。

いつも読んでいただいてありがとうございます。


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