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第5話 買い物に出掛ける

今いる屋敷の周辺地域を知る為に、自分なりにこの地域の事を調べたりした。この屋敷の周辺には農業を中心にした6つの小さな村が点在していて、父はこの近辺の村を治めて統治している事が分かった。


この先馬車で30分の場所にフォールと言う小さな町がある事も確認済みだ。


両親に行ってみたいと言ってみたがあっさり却下される。町の中は馬車の往来が多くて危ないからと説明されて、死ぬのはいやだから諦めた。中身はおっさんだから大丈夫なんだけどね。


でも生まれてから3年間、屋敷の外周を母と一緒に散歩するだけで外に出て遊んだ事など無い。これじゃストレスも溜まる。なので、日本で言う公園デビューのようなものを母親に求めたが、母はそれですらやんわりと拒絶する。


「お母様。町は遠いから諦めますが、なぜ近くの村に行っては駄目なんでしょうか?」


「この付近では魔物は滅多に現れないけどゼロと言うわけでは無いの。それに上級騎士は下級貴族だから、もし誘拐や村人がヴェルにケガをさせたら大変な事になることぐらい、賢いあなたなら分かるでしょ?それに流行病も怖いし、この付近の村には、ヴェルと友達になるような子供なんていやしないわ」


そう言われて絶望する。ま、身分はともかく確かにこんな3歳児がいたら周りは不気味がるに違いない。


改めて言うが、ここまで細かく設定をしたり書いた事は無いんだ。


 それから2年の月日が流れて5歳になった。


この間は体や魔法を鍛えるだけでは無く、前世で読んだラノベを参考にして、今後の人生で役に立ちそうな事を箇条書きで兎に角メモをした。


人間の記憶など使わなければ時間が経つにつれて忘れるのは当たり前の事だし、そもそもメモとは忘れる為にある。


そんなある日の事、上級騎士、上級文務官の息子は5歳になると父親と一緒に自分の治めている村へと向かい、父の仕事内容を見せるというセレモニー的なものがあると知らされた。それならそうと、3歳の時に言って欲しかったよ。でも、初めての村訪問に心を躍らせた。


そして、その日はやって来た。


父に馬に乗せられると馬はゆっくりと走り出し、見渡す限り稲が刈り取られた田園風景が広がる。これじゃ屋敷はぽつんと見える一軒家だ。上級騎士と言う爵位はていのいい左遷じゃないか!とツッコミたくなる。


そんな事を思いながら馬で数10分ぐらい走るとひとつ目の村に着いた。村は害獣もしくは魔物対策の簡易的な木柵があったりはしたが門兵などはいなかった。


父に馬から降ろして貰い、馬屋にある杭に馬を括りつけてから、村に入ると村の中に畜産の牧場があったり家庭菜園のような畑があった。


村人が住む家は、素焼きの瓦屋根で平屋建てで家が大きい。父が言うには、3世帯同居は普通で村長などはいないらしい。


「お父様、なぜ村には村長とかはいないのですか?」


「他国のことは知らないが、この国では村長や門兵は百人以上の村にしかいないんだよ。ちなみにこの村は50人ほどが住んでいる。だから父さんみたいな上級騎士や上級文務官が、こうしていくつもの村の管理を任されているんだ」


なるほど。と思いながら村を歩いて見渡すと、老人がひなたぼっこをしている姿はみるけど村は閑散としていた。父の話では、この時間は村人は田畑に仕事に出かけたり、未婚の女性は町で働きに出ているし、子供も作物の刈り入れなどの手伝いに出かけていると説明された。


それからも各集落を回ったが、どこもたいして変わりなく期待していた分だけ落胆は大きい。


これじゃ友達も出来る筈もないか。まさかここまで田舎だとは。おっくうだったので、近隣住民の事を書かなかった罰だなこりゃ。


それと、父に聞いて分かったのだが農民は徴兵制度がある。農兵の訓練は儀式が終わった後、つまりスキルが与えられる12歳から行われると聞かされた。


農兵の仕事の内容は、魔物の間引きや盗賊、野盗、更に言えば戦争が起きた時に戦うらしい。災害が起こった時に動けるようにそれに準じた対応訓練があるようだ。


神託の儀でスキルが与えられるので、農兵とはいえど戦力的に見ても侮れないみたい。こちらの訓練は国策の為か、農民にも減税と言う形で時給が支払われるので自警団と言ったところか。村社会なので絆は深いと思う。


よって騎爵は農民の訓練や指導も含まれていた。父がどんな仕事をしているのか気にはなっていたが、まさか、そんな仕事をしているとは思わなかった。


 それから、更に2年が経ち7歳になった。


筋トレと屋敷の外周でそれなりに筋力と体力もついた。魔力に関しても最近ではかなりついたようで、なかなか魔力切れにならなくなってきた。


役に立つのかどうか分からないがメモ書きも大量となったので綴り紐で結んで管理している。


そんな中、1週間後に父親が30歳の誕生日を迎えるので、特別に父親の誕生日プレゼントを買いに町に一緒に着いて行く許可が出た。やっとの思いにテンションが上がる。


ちなみに、こうした誕生パーティーは10年ごとにやるのが一般的だと言う。


トラブル防止の為に、母親と一緒に平民の服装に着替え近くの町へと出掛ける準備をした。移動手段も幌付きの乗合馬車を装っている。


その他は、本の知識ではあるが、馬車を引くのは普通は馬のようだが、見た事は無いが長距離移動用の竜馬なるものもいるそうだ。


本の挿絵を見た感想は、竜馬は頭が蜥蜴のような感じで、足も太く爪もあるので馬力もありそうだ。この竜馬は数が希少で魔物を恐れない為、上級貴族や王宮騎士、大商人などの富裕層に優先的に割り当てられているみたい。


どんなものか実物を見たいと言う気持ちはあるけど、まだ暫くは見られそうにも無いな。


馬車に乗るタイミングで、ワガママを言って御者台に乗せて貰った。ここまで来て、乗り物酔いで買い物を潰されるわけにはいかないからね。御者台から初めて見る異世界の町に心を躍らせる。


馬車が出発すると少し暇なので、御者さんに魔物の事を聞いてみる。この世界に転移をしてから未だに魔物の姿を見ていない。


屋敷の中にある本には魔物図鑑はあったが、名前と特性だけでエンカウントの事などについては触れられていなかった。


もちろん小説にも書いてはいない。プロットには書いたが魔物に遭遇する話の前に死んでしまったからである。ちなみにプロットの中では、魔物と戦うのは12歳を過ぎで学園にある迷宮に入る時からだった。


「少し質問があるのですが、魔物ってこの辺りに出る事ってあるのでしょうか?」


「あまりありませんね。この先にある大きな街道や森があるのですが、結界がいたるところに張られているのですよ。それでも絶対ではないのですが、もし魔物に遭遇してもすぐに冒険者や農兵に駆除されるので、よほどの事でもない限り魔物とは遭遇しませんね」


「そうなんですね。どおりで今まで魔物を見た事がないわけだ。色々と教えていただいてありがとうございました」


「構いませんよ。また何か質問がございましたら、気軽に聞いて下さい」


そう言えば、結界は結界石と言う魔石があると本で読んだ事があるのを思い出した。


それからも何事も無く馬車は町へと辿り着く。


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