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第37話 やっぱり

食事の間に到着をすると椅子を引かれ席に腰掛ける。正面に伯爵閣下、その隣に父が腰掛けた。


俺の隣にはジュリエッタが腰掛けるのだが、子供用の椅子が3席横に並んでいる。これってやっぱりそういう事なんだろうな…でもなんで?あっち側じゃねーのかよ。ジュリエッタを真ん中にしてやった方が良かったかな。同性だし。


それから、待っていると王族達がやってきた。


「マイア。希望どおりヴェルグラッドの隣に座ると良い」


そうきたか。ジュリエッタは苦い顔をする。伯爵閣下は横に首を振り、父は苦い顔をした後に、こめかみを押さえる。


「ここに、お掛けしても宜しいでしょうか?」


「どうぞ」


「ジュリエッタもそれで構わないかな?」


「マイア姫とお近づきになれるのなら、構いませんわ。ほほほ」


『珍しく動揺しているな。ま、ジュリエッタもどうしたらいいのか、わかんないんだろう』


近くで見る姫様は、先ほどよりも白みがかった金色の髪で美しい。ジュリエッタも美少女だが、姫様もかなりの美少女だ。陛下が可愛がるのも無理は無い。


「ふふふ。本当にあなた達二人は凄いですわね。勉強で負けたり、同点など生まれて初めてでしたわ。言葉礼儀作法もそうですが本当に同じ歳なのですか?」


「見た目どおりですよ」


『ふふん。中身は違うがな』


「そうですね。私もヴェル様とお呼びしても?」


「はい。お好きに呼んでいただいて結構です」


「それと二人にお願いがあるのですが、私の事は、今後は姫様と呼ぶのはやめて下さい。マイアと呼び捨てで呼んで下さい」


マイア姫は笑顔でそう言うが、俺もジュリエッタも一瞬固まる。


「流石に王族の方にそれはできませんよ」


「あら。お父様も了承してくれていますわよ。命を救ってくれた恩人ですし、ジュリエッタさんもですが、初めてお話の合いそうな同世代なので、ぜひお友達になっていただきたいのです」


「マイア姫では駄目でしょうか?」


「駄目です。もう決めました」


ジュリエッタも苦笑いしている。やれやれ。ここにも頑固者がいたよ。


「わかりました。ただこれにより不敬を問われると困りますから周知をお願いします。それに、マイアと呼ばせていただく以上私のこともヴェルと呼び捨てでお願いします。ジュリエッタも構わないよね?」


「ええ。私の事もジュリエッタと呼び捨てにして下さい」


「分かりました。それではジュリエッタと呼び捨てさせていただきますわね」


マイア姫、いや、マイアは笑顔だ。ジュリエッタは顔が少々引き攣っているが笑顔を崩さない。動揺を抑えきれないオレとは違って少し大人だ。


そう決まると、早速マイアはじいやと呼ばれる執事を呼んで、我々の関係を周知するよう指示を出した。仕事が早すぎる。


そうしている間に、ワゴンに乗って前菜から食事が運ばれてくる。ナスは出てきても食わないけどな。


料理が運ばれる合間に、マイアはおれとジュリエッタに好きな食べ物とか嫌いな食べ物を聞いてくる。最初が大事だとナス嫌いを力強く主張したらジュリエッタが呆れ顔を向けていた。ジュリエッタ、俺はブレない男だぜ。


食事を終えると再び会議室に呼ばれる。会議室に入ると、陛下と王妃様、宰相とマイアがやってきた。


「それではまず、褒賞の話をしようか。今回、ヴェルグラッドが救った命は、10万人とも言われている。これは、都市1つ分の人口に匹敵する。それにマイアを始めとして、上級貴族や下級貴族達からも多くの命が救われたと感謝の言葉がいくつも届いておる」


「10万人とはどのようにして計算をしたのですか?」


「これは過去50年間の統計から計算した数字だ。多少の誤差はあるが平均値だと言えば分かるな」


「なるほど」


「それでだ、本来ならその功績を称え、上級貴族として伯爵位を授爵することにした。だだヴェルグラッドはまだ9歳の子供だ。よって16歳の成人の儀まで余が爵位を預る予定だ」


そう陛下が言うと、正面に腰掛ける伯爵閣下と父が驚いている。そりゃそうだろ。いきなり子供が上級貴族の仲間入りなんだからな。俺なんか手が震えているよ。


「お待ち下さい。それは困ります」


「なぜじゃ?不満か?」


「いえ。陛下はご存知かと思いますが、私はジュリエッタの専属騎士になることを決めています。上級貴族になってしまったらそれが果たせません」


「知っておる。だから仮で預かりなのじゃ。16歳になったら結婚をすればよかろう」


ちょっとまて。よかろうじゃねーよ。ジュリエッタもそこで照れるな。


「それと、マイアの強い希望でな、ヴェルグラッドよ、マイアの専属騎士にもなってはくれぬか?」


「はいぃぃ?」


素っ頓狂な声を出してしまった。身内も全員声を失っている。これまでの異例はこれか?このためか?つーか、専属って辞書引いてみろ。何人もの専属なんて、それはもう専属とは言わんだろ?


「ちょっとお待ち下さい。冷静になりましょう。先ほど陛下はジュリエッタとの結婚を認めたではありませんか?」


「うむ。認めたぞ。今でこそいないが、二人の専属騎士は昔は存在しておった。多くの文献にも残っておる。だからこそ授爵する事を決めたのだ。上級貴族は一夫多妻制を設けておる。より良い優秀な血は国を発展させるのだ」


唖然として反論の言葉が出てこない。


「これからもっと優秀な人材が現れるかもしれないじゃありませんか?」


「大人になった娘と年端もいかぬ子供と結婚などさせるわけにはいかぬ。それに仮にそうであったとしてもだ、その子供が成人する頃にはマイアは適齢期を過ぎるであろう。嫌なのか?」


「そうではなく、ジュリエッタの同意も無く知らない間に妻が増えるんですよ?私9歳ですよ?」


「あら。私は賛成よ。ヴェルほどの才能を持った子供が今後出てくる可能性なんて、はっきり言って皆無よ。ヴェルのような人間がそうぽんぽん出てきたなら、どこの国も苦労しないわよ」


『え?まさかの肯定!!!この世界の女子いったいどうなってるんだ!!』


「ジュリエッタ。よくぞ言った。流石は伯爵家の娘だ。一夫多妻制の重要性を理解してくれて余は嬉しいぞ。マイア。この話は、おまえからも望んだことだ。おまえからも一言無いのか?」


「ヴェル様、いえヴェル、ひと目見た時からこの方ならと思ってました。コレラで亡くなっていたら、こうして今この場にも立っていないでしょう。救われた命をどうか捧げさせて下さい」


『命を捧げるなど、重過ぎるだろ~が!!しかも姫様だぞ!!』


「うむ。これで円満解決であるな」


陛下はそう言ってるけど伯爵閣下や父も今初めて聞いたんだろ?すんなり受け入れられるものか!


「お父様!閣下!宜しいのですか?」


「宜しいも何も息子の出世を喜ばぬ親がどこにいる」


「そうだぞ。娘と肩を並べるのが姫様なら、ジュリエッタにとっても喜ばしい事だ。それにヴェル君は将来公爵を約束されたと言うことだ。反対の余地がない」


「王妃様も、お認めになられるのですか?」


「ええ。もちろんよ。マイアに見合う男性など見つからないと思っていましたから、まさにこれは僥倖。この波に乗らないわけには参りませぬもの」


「ふははは。な~に。マイアに不満があるのなら専属騎士を解除する事も出来る。そなた達はまだ子供だ。ゆっくりと絆を深め愛を育むがよかろうて」


『王族と婚約解消なんぞ出来るわけないだろ!暗殺されるわっ!!』


こうして盛大な茶番劇は幕を閉じた。ジュリエッタとの専属騎士の儀式も済んでいないのに、俺に婚約者が増えるという結果だけを残して。


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