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第129話 扱いが…

山賊のリーダー?ボスを倒すと、クルムさんが駆け寄ってきた。


「ヴェル君、だいぶやられちゃってるように見えるけど大丈夫?」


「大丈夫、これ返り血だから。身体はこのとおりピンピンしてるよ。クルムさんこそ服が破けてるじゃない」


「ちょっとエアカッターが当たっちゃって。でも怪我なくて良かったわね。とりあえず山賊が残っていないか確認しよっか」


クルムさんと一緒に周りを見渡すと、山賊達の死体がいたるところに散らばっている。


「やっぱ人を殺すのはあまり気持ちのいいもんじゃないよね」


まったくだ。こうしてみると死んでしまえば犯罪者でも人間の死体なわけで、それがあちこち転がっているのは本当に気持ちいいもんじゃない。


まあメルス様も依頼のときに、山賊に酌量の余地があれば殺すまではしなくてもいいかもね…くらいの助言はあっただろうし…


「そうだね。こうして死体が転がっているのを見ると特に。でも放置しておいたらまた誰かが攫われたり殺されたりするわけでしょ?これ以上犠牲者を増やさずに済んだことを考えるとしょうがないかな。元々生死問わずの依頼だし」


「まあねえ。それにしても、中身はどうであれ、見た目が子どもに真顔でそんなこと言われたら、おねーさん言葉が出ないわ。あはは…」


それから生き残った山賊がいないかひと回りしてみたがそれらしい気配は感じなかった。それにしても死体を放置しておくのはあまりいい気分ではないな。


ギルドのルールって言うけどこれ、職員が片付けたりするのかな。だとしたら大変だぞ…50じゃきかない数だし。


それから、ギルドに伝書鳩を飛ばしてから山賊が出てきた洞窟へ入ると、内部の道は結構複雑に入り組んでいた。


索敵魔法をかけると数か所に固まるような反応があったので、そちらの方向に向かって進んで行く。すると牢屋らしきもの見えて来た。


手前の牢に近づくと若い女性たちの姿が現れる。


全員の髪がぼさぼさで、薄汚れたワンピースを着ていた。風呂も入れず浄化の魔法も使って貰えなかったのだろう。ちょっとかわいそうだな。


数はざっとみて8房の牢の中に10人づつ。山賊の数より多い。


そのまま近づいて「大丈夫ですか?もう心配しないでいいですよ。助けにきました」と声を掛ける。


「え?山賊達は!!」


「私達が全て山賊を倒したからもういないわよ」


「あんたのような子供と若い女が大勢いた山賊達を倒したなんて誰が信じるの!」


若い女性たちが、口々に俺をウソつき呼ばりする。え?何言っちゃってんの?だいぶ面食らうんだけど。


おまけに俺ぐらいの歳の娘に「ケダモノ」と怯えた目をされるとどうしたらいいかわからない。てっきり喜ばれると思ったのに、人間不信になるほど酷い目にあってたのかな。


飛び交う怒号にがっかりしつつ、これは何を話しても無駄だ。さっさと牢屋から出そう。と思ったら鍵が無い事に気が付いた。


「とりあえずカギ壊すんで一番奥の壁際まで下がって」


女性たちはオレが刀を鞘から抜いた瞬間、怯えとおぞましさが入り混じったような目をして壁際に引いて行った。俺はGか!


酷いな…普通はここは『助けてくれてありがとう』だろうが!


流石にわんわん泣きながら礼を言われるとまでは期待していなかったけどここまだとはね。


安全を確認し、斬撃が飛ばぬように刀を軽く振りぬいて牢屋の入り口を次々と壊していった。


クルムさんが牢屋の扉を開けると女性と子供達に外に出るよう言っている。


女性達はまだ信じらないという顔をしつつ入り口に向かって次々と逃げるように駆けていった。


「今思うとギルド職員がくるまで牢の中に放置しときゃよかったかもな。町に向かう途中魔物に襲われても責任取れないし…」


「せっかく助けてたのにあの態度はなんなの。ギルドの依頼は達成したんだから、もう好きにさせといたらいいわ」


おうおう、クルムさんも怒ってるな…それよりフェンリルだよフェンリル。忘れるところだった。


もう一度牢屋を調べたけどそれらしき動物はいない。あれ?ヤバいかな?と少し焦りながら洞窟にある小部屋を次々に開けていく。


すると10ある部屋の6部屋目を開けたところで、小さな子犬?いやこれに間違いない。ゲージに入れられていたフェンリルを見つけた。


壁にはムチが立てかけてあり調教の跡が…動物愛護団体が見たら気絶しそうな光景だ。いや酷いな。


「クルムさん。いたよ」


傷ついた子供のフェンリルはゲージの中から「グルゥゥゥゥ」と喉を鳴らして俺を威嚇する。取り敢えずヒールをかけて傷を治す。 


刀の柄を握り締め、メルス様を呼んでみる。


(メルス様聞こえますか?フェンリルの子供を無事保護しました)


(やっ、ヴェル君、精神的にも身体的にもさほどダメージがないようでよかったよ。フェンリルの子供を救ってくれてありがとう)


(てっきりメルス様が精神補正を入れてくれたのかと思ってましたけど違うんですね。僕、思ったより悪人嫌いだったみたいです。まあ人質の態度とか、フェンリルの様子を見るとかなら酷いことしてたみたいですし。それよりメルス様の依頼を無事に達成出来てよかったです。それで、このフェンリルどうします?)


(それは良かった。ヴェルも勇者や冒険者をしている以上いつか通る道だからね。フェンリルの子供の件なんだけど、君明日も暇だよね?)


(いえ。今日の疲れを取って英気を養うため惰眠を貪るという大事な用事があります)


(相変わらず連れないね~。実はフェンリルを、この山を二つほど越えたオールドスイープの森に返してきてほしんだよね)


(無理っす。こんなに警戒されてたら保護できませんよ?)


(そこは大丈夫。子供でもフェンリルは神獣だからね。ゲージに入れたままならアイテムボックスの中でも生きられるから基本放置でいいよ。森でゲージから出したら親が気づいて勝手に助けるよ。その時は念のため逃げてね)


(やっぱり、危ないじゃないですか)


(そう言う?依頼を受けてくれるなら、セイントバンパイアの娘に武器をあげちゃおっかな~)


物で釣るか!いや、メルス様はこうだったな。


(分かりました。お受けします)


(よかった。じゃ依頼達成って事で、君の婚約者達の準備が整い次第連絡するね。フェンリルの依頼は前払いがいいかな。それ!)


メルス様がそう言うと、俺の身体が光る。


(よし、君のアイテムボックスにセイントバンパイアの娘の武器を追加しておいたよ。君から渡してあげて。その方が彼女きっと喜ぶから。じゃね~)


じゃね~じゃないよ。絶対に楽しんでるよな…しかも、アイテムボックスの法則ぶっとばしてるし…


ま、なんだかんだやり取りしたけど、どのみちメルス様の依頼を受けるのはここで過ごすときの約束だから断わる選択肢はないんだけど。


言いようによっては、神託を受けて試練…無いな。軽すぎる。ひとつ確かなのは明日惰眠を貪って過ごすことが出来なくなったってことだろう。

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