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第124話 インテリジェンスソード?


鍛冶屋を出てからちょっと買い物して、レストランで食事して宿に戻ると領主から手紙が届いていた。それだけでテンションが下がる。


手紙を読んでみると、やっぱり萎えるに充分な内容だった。


簡単に言うと、3週間後に王都で開かれる舞踏会へ護衛を兼ねて出席せよと。ちなみに王都までは馬車で1週間。余裕をもって出発は10日後だとのこと。


報酬は二人で金貨10枚。往復で20日間以上拘束されるのか。


ぶっちゃけ迷宮に潜って得られる魔石、魔物の素材、ドロップアイテム全部ひっくるめてコスト換算するとかなり割に合わない。4年後には金貨はいらなくなるからいいけど…


面倒なので断りたいのだが、手紙の2枚目には更に面倒な事が書かれていた。


俺がギルド長に渡しておいた索敵魔法の魔石を女王陛下が随分とお気に召したのだとか。


なので女王陛とも謁見の機会を設けるので準備しておくようにと、もうこうなると護衛の依頼と謁見とどっちがメインだかわからない。


最終的にクルムさんにもそれなりの地位をと思っているので、Sランク冒険者になったしそのうち王都に行く必要があるとは思っていたけど…今じゃないでしょ!


勇者世界ではコレラからみんなを救う目的があったから影響力のある身分が必要だったけど、今この時期にここで貴族になる必要は全くない。と言う個人的な事情はさておいて。


「エミリーさんをエスコートする約束もしちゃったし、正直本当に行きたくないけどこれを断るわけにはいかそうだな…ってこの国の元首は女王なの?」


「そうよ。でも安心して。陛下はエルフで既に結婚もしているし、子供達も全員幼い男の子ばかりよ」


それのどこに安心要素があるのかわからない。するとクルムさんがいかにも憂鬱そうに顔を曇らせる。


「どうかしましたか?」


「いえ。私も付いて行こうと思うんだけど、貴族の作法とかダンスとかも踊った事がなくて…」


「あー、そのことですけどクルムさんも4年後には王家の者や貴族と一緒に旅をしたり生活をすることになります。機会をみて覚える必要があるとは思ってましたがここで覚えておきましょうか」


「鬼がいる。鬼が!」


勇者世界に一緒に連れて行くと決めたのだから元々どこかのタイミングで必要な事だ。是非とも作法は身に着けて貰わないとね。


それから薙刀が出来るまでの3日間、俺の指導の元、貴族の言葉や言い回しや礼儀作法を嫌がるクルムさんに←(ここ重要)みっちり叩きこんだ。


クルムさんにすれば地獄のような3日間だったようで、薙刀が完成したと連絡があった時には涙目で歓喜し、その後の迷宮アタックではストレス発散とばかりに容赦無く魔物を駆逐していた。


俺も完成したばかりの薙刀で魔物を倒す。リーチも長く殺傷能力がかなり高い事を確認できた。もっともメルス様の刀には遠く及ばないけど。


20層のボスはレイスが3体。聖魔法が有効な俺達二人にとってはただ美味しいだけのザコだった。


ドロップの仕様が向こうの世界とは若干異なるようだけど初のドロップアイテムが!期待してみたらミスリルのカブトだけ。どんな嫌がらせだよ。


ま、武器に作り替えればいいし、クルムさんが喜んでいたのでよしとしよう。


これだけ楽だとボスが復活を待って周回してはどうかと思って聞いてみると、ボス復活には4時間ほどかかるそうだ。さすがにそこまでは待てないな。


翌日からの3日間は21階層から23層へ。全部洞窟ステージで狭い空間もあったので薙刀が邪魔な棒に。長物は狭いところだと厳しいな。


ただ、ここにきて、やっと盗賊スキルが大活躍。なぜかわからないけど罠のある場所が薄っすらと青く光っている。詠唱すると簡単に解除できる非常に便利なスキルだった。ポンコツスキル扱いして正直すまんかった。


23層のセーフティゾーンで昼食を机に並べていると突然刀が光る。


刀の柄をにぎると(やっほー。久しぶりだね~。聞こえているなら念話の要領で返事して)と、インテリジェンスソードのようにおれの脳内に直接声が響く。


それにしても「やっほー」って。日本の女子が聞いたらオタク認定される気がする。偏見かもしれんが。


(この声は、まさかメルス様?)


(うん。そうだよ。適当に作ったけどパスが繋がって良かったよ。君が薙刀に得物を変えた時は焦ったけどね)


神様が焦るって。しかもこの出鱈目な性能の刀、適当に作ったのか。


「クルムさん。ちょっとまって。メルス様から念話が入った」


「了解」


再び柄を握りメルス様に念話を飛ばす。


(お待たせしました。僕に念話を飛ばすってことは、何か依頼でも?)


(うん。君、王都に行くことになったでしょ。王都から少し離れた所で山賊が悪さしてるんだ。それを壊滅してほしい)


(なぜメルス様がわざわざ山賊を気にするんです?)


(奴らは僕の元ペットだった神獣フェンリルの子供をさらったんだ)


ペット?神獣フェンリルが神様の元ペットなの?そりゃスケールの大きな話だな。


メルス様の話では、先の魔王軍との戦いの時に神獣フェンリル夫婦を戦いに参戦させたのだとか…


戦いが終わり、お役御免となったフェンリル夫婦は子を設け、人里離れたオールドスイープと呼ばれる森で、また出番がやってくるまでひっそりと暮らしていたらしいのだが、たまたま、フェンリル夫婦が出かけていた最中に住処であった洞穴から山賊が子を強奪。


山賊はフェンリルの子と知らずに悪用しようと、魔物使いのスキルでテイム出来るように弱らせているのだとか。ただ、どんなに弱らせても痛みつけても神獣をテイムする事は不可能らしい。


ならば、フェンリルの親に直接山賊の事を教えてやればいいんじゃないか?と聞いてみると


(連れないね~、フェンリルが教会に行くわけでもないから伝える方法が無いんだよ)


(内容は分かりましたが、私は今回は領主の護衛で王都に向かうことになってます。勝手に抜けるわけにはいかないのでは?)


(大丈夫。ギルドに行ってごらん。山賊の討伐依頼があるから。君のところの領主も山賊には困っていたようだから、君が引き受ければ止やしないよ。もしそれでも駄目だというなら僕に言って。何とかするからさ)


どのみちメルス様直々の依頼だ。元々そういう約束だったし断る選択肢は無い。


(分かりました。引き受けます)


(ありがとう。それで今回の報酬だけど、もし達成できたなら、君の婚約者の魂をこちらに招いて引き合わせてあげようじゃないか)


(そういう話はもっと早く言ってくださいよ)


(サプライズは最後にした方がモチベーション上がるでしょ?)


(わかりました。それでは明日にでもギルドに寄って受諾をします)


(うん。それでいいよ。それじゃ宜しくねー)


メルス様との念話を打ち切ると、クルムさんに内容を話す。


「神獣フェンリルね。ヴェル君ってフェンリルの事どれぐらい知ってるの?」


「僕の知識だとSランク級の攻撃力と素早さを持つ大きな狼ですかね」


「なるなる。こっちでは神話で名前は有名だけど実際に見た事ある人はあまりいないかもね。もしかしたら山賊達はフェンリルの事をただの子供の狼ぐらいに思ってないのかもよ?」


ああ、日本でもたまにあった捕まえてみたら新種でした的なやつか。


「鑑定を使えばフェンリルだと分かるはずじゃないかな?」


「何を言ってるんだか。鑑定眼のスキルはクラス2の治療師のスキルボーナスよ。ヒールも使える鑑定眼持ちが山賊なんてやらないってば。持っているだけで食いっぱぐれないんだから、そんなリスクを冒すなんてあり得ないわよ」


「クルムさんがそう言うなら、そうなんだろうね。珍しく正論だし」


「引っかかる言い方がちょっと気になるけど、今日はストレスも発散できたし、せっかく机を出して用意したけど、今から帰って美味しいごはんを食べようよ」


「いいけど、食べ終わったらダンスの特訓の続きをするからね」


「この鬼教官!べーだ!」


クルムさんは心底嫌そうな顔をして舌を出す。それから転移魔石を地面に置くとダンスの特訓(美味しいご飯)に向けて迷宮を出た。


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