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第118話 逆転現象

誤字脱字報告ありがとうございました。

俺とクルムさんのパーティとしての生活が始まった。


その最初のイベントが正座した大人を子どもが叱るという、かなりシュールな絵面なんだが、それは俺もいかがなものかと思わなくもない。


でもやっぱりあれはいただけない…というわけで、昨晩は盛大に叱っておいた。そこまで怒ることはないと思うかもしれないけど、メルス様にペナルティ受けるよりは充分甘いと思う。


「少しぐらいの喧嘩ならば、一晩寝れば忘れてやれ。それで普通の生活に戻ることが出来るのが夫婦円満の秘訣だ」と、遠い昔に先輩から聞いた事がある。


そんな先輩のアドバイスもあり、翌朝には何事もなかったように「おはよう。今日もいい天気だね」とさわやか笑顔で朝の挨拶をしてみる。


「おはよう。コーヒー入れるね」


と何事もなかったように返事が返ってくる。ちゃんと反省してるよね?


朝食が運ばれてくるときに宿の従業員からメモを預かった。


メモによれば、孤高の風のメンバーは明日の朝一で地元に帰る。昨日たっぷり話し尽くしたから挨拶はしないけど俺たちのことは応援してると…


クルムさんの話では、地元へはこの町から2日程度の距離なのだとか。意外に遠い。


これで少しは楽が出来るかな~。今日は錬金薬学の本でも読んで勉強にでも励むかと思っていると、今度は従業員からメモではなくて領主様からの封書を受け取る。


めんどくさいなーと思いながら封を開けると内容もやっぱりめんどくさかった。


明日午後、お茶会を開くので出席するようにとのことだけど、形の上では支援者に当たるので断るわけにはいかないんだろうな。


ただ、こんなことが続けば領主の言いなりになりかねない。あくまで対等だと示すいい方法は…ってあるじゃないか!女性である領主向けのとっておきが! 


そんなわけで、今日は領主に進呈する化粧品の材料を買い揃えるために買い物をしよう。ついでに町で売ってるものもいろいろ見てみたい。


身支度を整えて町に出かけ、目的の物を買いそろえながら、店でどんなものが売っているのか興味深く眺めていた。


「そう言えば領主様と会った後にギルドを通して従者は従者らしい振る舞いと行動を、とか言われちゃったんだけどどう思う?」


「関係ないんじゃない?雇用している形をとっているだけで実際は後見人でしょ。従者じゃないよね」


「それはヴェル君がそう思っているだけだってば。周りの人はそう思ってくれないよ。昨日だってヴェル君におんぶしてもらったのいろいろ噂されて…そりゃちょっと嬉しかったけど…」


顔を真っ赤にして何言ってるんだ?無駄に酔ったクルムさんの自業自得じゃないか。ここで嬉しいのならいいんじゃないの?とは絶対に言わないよ。これ以上調子に乗られても後が面倒だし。


なにより、控えめに言っても美しい女性とウフフキャッキャしていると思われたら、ジュリエッタとマイアに合わす顔がない。


俺としてはそんなポエム的なのは無いんだけど、婚約者と言う立場からみたら穏やかじゃ無いだろうと思う。


それから、クルムさんが服が見たいと言うので店へと入る。


「そう言えばちょっと聞きたいんだけど、クルムさんの羽ってそれに服を合わせて加工をするの?」


「そんな面倒な事はしないよ。ちょっと値は張るけど魔綿っていう素材を使った布で作られた服を買えば羽を通してくれるのよ?こんな具合にね」


クルムさんがそう言うと羽の根本から服を貫通して肌が見えない。まさにマジック!!これを見たらMrマ〇ックもビックリするだろうな。古いか。


それからもクルムさんは、服を選ぶのに迷っているようで「ヴェル君、良ければ自分で選ぶから本でも見てきたら?」だって。


「それじゃこの通りの角にある本屋にいるので服が選び終わったら来てください」と、手を振りながら本屋に向かった。


本屋に入ると向こうの世界でも役に立ちそうな本を物色。この世界でも印刷ではなくて写本のようだ。値段もそこそこする。


目ぼしい物がないかと、本棚を探すとマッ〇ルのような地図を発見。空が飛べる亜人や魔物使いがいるだけの事はあって地図の精度が高いのが窺える。


マップ○を見ると、この世界は6つの大陸に分かれていて、大陸の横断には海を渡るための船か飛行する乗り物が必要になるっぽい。


今はここを離れるつもりは無いし、4年後にはこの世界から離れなければならないので知識としてはこの程度で充分だ。


別の本棚を物色しているとクルムさんが笑顔で「おまたせー」と言いながら店に入ってきた。


とりあえず地図だけ買い店を出ると、お昼を過ぎていたので、露天などでジャンクフードを買って色々食べる。


あまりにも美味かったので、非常食兼おやつとして串焼きを大量買いしアイテムボックスに放り込んだ。


ちなみに、クルムさんのアイテムボックスもジュリエッタ達と同じで中では時間が進まない物だった。暖かい食べ物と飲料水が適温で保温出来るのは、いろいろと使い勝手がいい。アイテムボックス最高!


こちらでエンカウントする魔物と、向こう側でエンカウントする魔物はほぼ同じなので、料理の本も買えばよかったな。今度は絶対買うぞ。


それから2人で街をひとまわりして宿へ帰るとちょうど夕飯の前だった。


クルムさんにせっかくだから孤高の風のメンバーが帰る前に楽しんできたらと聞くと「ヴェル君は私と一緒にいるのは嫌なの?それに私はヴェル君に雇われているのよ。命令なら行くけどさ…」と拗ねられた。


付き合いたてのカップルじゃあるまいし。なんだろうなあ。ちょっと面倒くさい性格なんかな?


今思えば、勇者世界では、おっさんが少女に翻弄され、この第三世界では、年上のお姉さんに子供姿のオレが翻弄されるという逆転現象。


丁度いい設定をオレの為に考えて欲しい。だいたいどこかの探偵みたいに中身はオトナ、見た目が子どもってとこに美味しい要素がなさすぎる。


脳内に、まだ駄目だよ~ん。リア充死すべし!との返事。誰だ?(笑)


ため息を堪えながら夕食を食べつつ今後の方針を話し合う。


結果、Sランク迷宮には行かず、まずはクラス1の職業をAランク迷宮で全て回収する方向で話がまとまった。


マルチプレーヤー化は、前の世界でもしようとしていた事だ。確実にこの世界ではコンビのまま4年後を迎えるはずだ。であれば何役もこなせる方が間違いない。


罠対策や隠密系も欲しいし、クルムさんにだって治癒魔法を使えるようになって欲しい。扱い的には聖女だから回復魔法が使えてなんぼだ。


それから大浴場で風呂に入り、明日領主へ献上する化粧品やリン・イン・シャンを用意してベッドに入る。


明日の領主の出方がちょっと楽しみだ。


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