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第103話 年上の美女

 教会を出て宿に向かう途中「ヴェル君、お腹は空いていない?お姉さん腹が空いちゃった」と恥ずかしそうにまさかのテヘペロ…かーっ、これはたまらん…


その声に改めてクルムさんを見ると見た目は10代後半~20代前半。もっとも、今まで魔族って関わったことが無いから実年齢はわからないけど。とにかく若くて魅力的な美人の健康的な笑顔はそれだけで正義、いや反則と言っていい。


「そうですね。僕もお腹が空きました…」


それは嘘だ。今さっき教会で食べたばかりだから腹ぺこってことはない。ただ食事のお誘いを断る選択肢が無い事も事実。実際腹5分も食べてない程度だからまだまだ普通の一食くらいならペロっといけるだろう。無問題だ。


「それじゃ、私のおすすめのお店に行きましょうか」


「はい。お願いします」


大事なことだから何度も言うけど、美人が無防備に振りまくフェロモンはダメだ。いかんやつだ。俺が子どもで何の警戒もしてないからだろうけど、こっちからみたら好みが服着てしゃべってるわけだからホントヤバい。眼福眼福。そう言えば地球を出てから会う女性会う女性美人が多いなあ。


ニヤニヤ(子どもの特権で側から見たらニコニコ。たぶん)しながら洋食屋っぽいレストランに着くと半オープン型の個室に案内され、すぐに犬耳の男性従業員が水とメニューを持ってきた。


「ヴェル君は何が食べたい?お姉さんのオススメは、ケンタウルスのやわらかステーキと季節のサラダかな」


ケンタウルス?とメニューを見ると、動物の肉料理の他にオークのステーキ(ハーブ添え) ゴルゴンの白焼き、ギガントクラブのスープなど魔物の料理も並んでいた。


向こうの世界では結局出会えなかった魔物料理だったけど、こっちでは普通に食べるんだな。


「宗教上食べられない物とかあるの?アレルギーとか…」


「いえ。僕もクルムさんと同じでお願いします」


注文して従業員が下がると「ねぇ、ヴェル君はいくつなの?」と、聞かれた。


微妙だ。「いくつに見えますか?」的なお約束はここは置いとこう。かと言って正直に10歳です。と言うのもなあ。


「12歳です。見た目どおりでしょ?」


「12歳ね。それじゃお酒が飲める年なのね。どう?私も頼むけど飲む?」


『ヒャッハー』脳内で天使がラッパを吹きながら小躍りしている。キタキタキタキタ!


「はい。ぜひお付き合いさせていただきます」


「ふふふ。まるで告白したあとの答えみたいね。でも1杯だけって決まってるから乾杯だけよ」


いやいや。ここに来て酒が飲めるなんて考えもしなかったからな。僥倖僥倖。と追加でエールを頼むと直ぐに出て来た。


「それじゃ、私達との出会いに乾杯」


苦節10年。念願のエールを飲む。ああっ酒そのものが懐かしい。味なんかわからないけどとりあえず美味い。しかも目の前には美人。う~ん幸せ…いい夢が見れそうだ。


料理は勇者世界の料理よりも美味しかった。流石に日本の料理程じゃないけどね。


「ヴェル君、知ってる?強い魔物の方が高級で美味しいのよ。魔力の埋蔵量が多いからなんだって」


食べながら話を聞くと、この世界では草木にいたるまで魔力が宿っており、食するとまたその魔力を取り込むことができると考えられている。だからと言って食べ過ぎても魔力を過剰摂取することはないんだとか。まあ概念的なもの、と言うことで。


八百万の、それこそ竈門にまで神が宿っている日本の神道に近いのかな~。ちょっと懐かしい。


「勉強になります。また色々と教えて下さい。実は魔族の方にお会いするの初めてなんですが、こっちでは多いんですか?」


「へ~、気になるんだ~。続きは宿に戻ってから説明するわね」


夕飯を食べてからほろ酔い気分で宿に到着すると結構な高級宿だった。


「もったいないから、私の部屋で一緒でもいいよ?」とクルムさんから魅力的な提案があったけど、このあたりはオレがジュリエッタとマイアに向ける感情に近いんだろうと思う。


好きとか好きじゃないとかの前に、この子はまだ子供ってのが先に来ると言うか?


だったらなおさら同室はできないなあ。いくら俺が10歳だからといっても中身は成人男性なわけだし、婚約者もいるわけだし。


ここは分別のあるオトナとしてきちんと別に一室借りることにした。念のため言っておくと、クルムさんを目の保養にするのは、グラビア見て楽しむのと同じ性質のものだからノーカン。誤解のないように。


さて部屋だけど、部屋風呂があるのはありがたい。赤と青の魔石に魔力を流すとパイプからお湯が出始めた。


手を離しても湯が出続けていたのでそのまま湯を張る。埃っぽくなった顔と体が気になったので置いてあった木桶を使って軽く身体を流すと、アイテムボックスから部屋着を出して着替える。


ここでやっとステータスカードを確認出来る。これまで常に誰かが近くにいて1人の時間がまったく取れなかったからね。


ステータスを開くと自分の目を疑った。


名前︰ヴェルグラッド・フォレスタ 

種族:人族

年齢︰12

職業︰☆サムライ(???)

レベル︰55

称号:英雄、伯爵

MP 1750/4255

ランク評価

物理攻撃︰B

物理防御︰D

素早さ︰B

魔力攻撃︰C

魔法防御︰D

魔力操作︰A

スキル︰★全属性攻撃魔法(中)★鑑定眼 ★付与魔法 ★聖魔法 ★回復魔法 ☆重力魔法 ☆索敵魔法 ☆忍耐 ☆サムライ道 ☆アイテムボックス(無限)


誰これ?名前は俺だけど中身がまったく違うんですけど。人族以下の項目、年齢から何から何まで誰かのステータスとすり替わったかと思うくらいわからない。これだと強いのか弱いのかもわからん。


12歳(合法的飲酒年齢なのは◯)?職業がサムライ?しかもスキルのサムライ道って何?居合、縮地、連続剣はどこいった?


こんなん誰に聞きゃ教えてくれるんだよ。戸惑っているとドアをノックする音がしたので、慌ててステータスカードをしまう。


クルムさんかな?だったら聞いてみようかとドアを開けると、今日助けてくれたパーティーメンバーが立っていたので部屋に招き入れる。


「おう少年。謎アイテムで言葉が喋れるようになったってクルムから聞いたが本当かい?」


「そうなんです。気にかけてくださってありがとうございます」


ヴェクトさんに答えると、クルムさん以外のメンバー全員がほっと安心したと言う表情になる。


「そうか。ま、色々とクルムのヤツから聞いたが、少年。君は本当に人間か?」


ヴェクトさんがそう言うとクルムさんが被せるくらいのタイミングでスパーンと頭を叩いた。いや、ツッコミのお手本どおりだ。


「いってーな~!」


嘘だ。あれだけ綺麗にしばかれたら痛くないって聞いたことがある。痛そうだけど。


「いくらなんでも失礼でしょ?別の世界の人間でも、彼はまだ子供だし貴族よ」


「悪かったよ」


「いいんですよ。ここでは何の役にも立ちませんから。で、僕は正真正銘の人間ですよ」


「まあ、見た目は人族で間違いないな。あの戦闘力は気になるが…とにかく無事解決出来て良かったってことで、そろそろお暇するよ。クルムあとは頼む」


「はいはい。引き受けた以上は責任はあるからね」


「色々とすいません」


どうやら、安否確認をしに来ただけのようだ。クルムさんだけを残して部屋に出て行った。


「ごめんね?騒がしくしちゃって」


「いいんですよ。皆さん気を遣ってくれたんですから」


クルムさんは思い出したかのように「あっ、魔族の事を聞きたいのよね。それ!」と言うと背中からコウモリのような羽が出てきて、ちょっとびっくり。


「驚いた?私達魔族は獣人族と同じで亜人扱い。寿命は200年で少数民族。力も魔力も人より強くて空も飛べるのが特徴かな?」


「力も魔力も強いと他種とは争ったりしないんですか?」


「無いわね。まず絶対数が違うから。それにね、人に交われば、エルフと一緒で人と一緒になる亜人も多いのよ」


「なるほど。クルムさん的に見て人族にはどんな魅力があるんですか?」


「あら、ヴェル君、私のこと好きになった?」


「気にはなります。ってからかわないで下さい」


「冗談よ。んーとね、確かに全ての人がいい人族だとは思っていないわ。でも長くは無い寿命の中で必死に生きて多方面に努力をしている人もいるでしょう?私達亜人はどちらかというと何に対しても淡泊なの。だから一生懸命な人に惹かれることもあるわ」


「僕のいた世界には魔族がいなかったし、エルフも獣人もいましたけど周りにはいなかったので。変なこと聞いてごめんなさい」


「いいのよ。気にしないで。良く眠れそう?今日はいろいろあったからゆっくり休むといいわ。じゃそろそろ部屋に戻るわね」


面倒見がいいなあ。ありがたいや。いつか何らかの形でお返しできるといいな。


ちなみに、お湯を張っていた事を忘れていたけど風呂の湯は自動で止まっていた。便利。そのままゆっくり湯船に浸かってこれからのことを考える。


まあステータスのことはよくわからないけど、みんなの反応を見る限り戦えないってことはないだろう。ここには迷宮がいくつもあるようだし生活に慣れたら潜ってみよう。


風呂から上がり布団に入って目を瞑る。今日は色々とあり過ぎた。濃い一日だったな…と思いながら意識を手放した。


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