第101話 異世界転移したみたい…
眩く白い光が収まると、俺の前に年が変わらないくらいの少年が立っていた。
「あれ?君は?神様は?」
「それを僕に聞くかな。僕はこの星、ガーランドの創造神でメルスと言うんだ」
ん?ガーランド?ここってそんな名前だったっけ?て、創造神さまが別人?あれ?ちょっと何言ってるかわからない。
「ふふふ。君の記憶を覗かせてもらったけど随分と変わった人生だね。流石ここにやって来るだけのことはある」
「はあ。ありがとうございます。と言うか、私は今どうなっているのですか?」
「ああ、ごめん。僕だけが知っていちゃ会話にならないよね。びっくりしないで聞いて欲しいんだけと。君は迷宮の狭間に落ちていわゆる異世界転移をしたんだよ」
は?ちょっと何言ってるかわからない。ここはあそこじゃないの?あそこはどこ?
「そりゃ驚くよね。2度の転生に今回の転移。そんな人間僕も初めて見たから非常に興味深いよ。でも君は半神半人だからこうして神界にいられるんだ。生身の人間なら狭間に落ちた瞬間に魂ごと消滅さ」
そう言うと目の前の少年、もとい創造神さまは苦笑する。
「それで神様。私はどうやったら元の世界に戻れるのでしょうか?きっと仲間も心配して探してくれていると思います。もう一度巻き込まれれば戻れるんですか?」
「ちょっと、と言うか全然違うよ。落ちたって意味を理解しようか。超空間を移動したって言うのはわかるかな?さっき言ったけど、君の知る言葉で言うと異世界転移ってやつだよ。で、異世界転移した者が元の世界に戻れるってパターンはほとんど無いのはわかる?」
つまり。おれは元いたとこから地球に転生、そこからさらに元の世界に転生。そこで終わりじゃなく今ここに転移。そういうことか…いや、そりゃ無いんじゃないの?落ち着け、まずは冷静になろう。
「まさか、私はこのまま…」
「そう焦ることは無いよ。ちょっと待って。君のいた世界の創造神オルディス君を呼ぶからさ」
へ?神様同士は行き来できるの?て顔見知り?と思ったら前回会った神様が現れる。ありなのか。あー、顔見知りに会った安心感が押し寄せる。
そして現れた元の世界の神様は、オレの顔を見るなり物凄く残念そうな顔をしていた。ごめんなさい。うっかり異世界転移をしちゃいました。なんてことは言えないよね。
「神様。ご迷惑をお掛けしました。みんなは無事ですか?」
「うむ。皆無事じゃ。つい先ほどまでそなたを探しておったが、見つからないので明日の朝にギルドに捜索依頼を出すとことじゃな。そこまで見ていたらメルス様に呼ばれたんじゃ」
ああ、みんな無事だったんだ。よかった。でもみんなにも迷惑をかけちゃったな…
「オルディス君、どうする?君の世界の勇者くん。残念ながらこの世界では10年前に勇者魔王を倒したから、こっちでは今勇者って存在はイレギュラーなんだけど」
つまり扱いに困る子。呼ばれたんじゃなくて来ちゃった子…なんだかちょっぴり切ないや。
「うーん。ワシもまさかこんな展開になるとは思わなかったのでな。ヴェル、今のわしでも魂を連れて帰ることはできるんじゃが、その器である肉体を元の世界に戻すにはリソースが足らん」
詳しく話を聞くと、オレを転生させ時間を巻き戻すのに全てリソースを使ってしまい、今の状態はすっからかんなのだとか…オレが転移が出来るまでのリソースを溜まるには、今から4年はかかるらしい。
「なるほど。4年…つまり4年間こっちで頑張れば元の世界に戻れるってことですね」
「むう。本当は理を乱すことになるので良くは無いのだが。ただこのままでは、あっちの星が滅亡してしまう。ならばワンチャン賭けるしかないのう。それにジュリエッタには一度あの星を救って貰った恩義があるしな。やってみるしかあるまい」
「宜しくお願いします」
オレが頭を下げると、オルディス様はため息を吐く。
「メルス様、私がまた他の世界に飛ばされるのはやむを得ないかも知れません。それでも星が滅びを止めるにはこの者の力が不可決なのです。ご協力お願いします」
飛ばされるって…創造神の中にも序列があるのかな…
「魔王が倒されて暇だったし、面白い事になりそうだから僕は構わないよ。ヴェル、君には僕の為にもがんばって貰うからよろしくね」
頭を上げると悪い顔が目に入る。でも他に選択肢は無いので受け入れる他ない。
「わかりました。元の世界へ戻れるならがんばります」
「それじゃ交渉成立だね」
メルス様は笑顔でそう言うと、オルディス様は天を仰ぎ目を瞑る。とりあえず一安心だ。
「ヴェル、これからギルドの捜索が始まる前に神託を降ろし、ジュリエッタとマイアにはそなたが無事だと報告しておこう。リソースが溜まるまで死ぬなよ」
オルディス様はそう言うと、お礼を言う前にぱっと消えた。
「さ、それじゃこれから君がこの世界を生きて行くために…まずはそうだね武器を預かろうか」
「へ?」
「へ、じゃないよ。さっきも言ったけど、この世界にはもう勇者がいないんだ。魔王を倒す力を持つ武器なんて持っていたらおかしいだろ?元の世界に戻る時には返すからそれまで預かるよ」
「そういうことですね。わかりました」
「うん。あとは勇者の称号と光属性、闇属性も消しておこう。その代わりスキルとアイテムボックスの中身はそのままにしておこうか。あとは生活するのに不便だろうから言語理解のスキルを付けとくよ」
「とても助かります。ですが、いきなり喋れるようになったら、それこそおかしくはありませんか?」
「いいんだよ細かいことは。そんなアイテムを持ってたって事にすれば問題ないだろう。教会に戻ったらアイテムボックスを確認するといい」
『持ってるだけで使える翻訳こんにゃく的なあれね』
「それじゃ、本題に入るよ。ここは君の知ってる世界で言うと、さっきまでいた世界に近い。逆に地球とは大きく違う。それはわかる?」
「はい。魔法が使えて魔物がいたので、異世界に転移したとまでは考えていませんでしたから」
「うんうん。充分だ。加えて言うと、魔法は君のいた世界よりもこの世界の方が進んでるよ。それは自分の目で確かめてみて。ここで過ごす時間は、君が戻ったときに向こうでもきっと役に立つと思う」
「で、急用かあれば神託を降ろすかもしれないけど、簡単なお願いはギルドの指名依頼で出しておこうかな。あと、月に一度は僕に祈りを捧げてもらうってこと。大丈夫?」
「はい。がんばります」
「それじゃ、死なないように気をつけて。あと、最後に。君がいた世界の事や君の力は、身近な人ならステータスカードに載ってることなら喋ってもいいから。一度力を見せてしまったから取り繕うのも面倒だからね」
あー、冒険者を助ける為に普通に戦っちゃったからね。助かるわ。
「わかりました。じゃ遠慮なくいきます」
「うん。それでいい。この世界でも神託の儀は12歳だからステータスカードはこっちで調整しておくよ。これで話は全部おしまいだ。今から4年間好きに生きるといいさ。今度こそ、それ!!」
メルス様がそう言うと、俺はまた白い光に包まれた。




