大魔王と聖女がドラゴンで飛びたった、あの伝説のハネムーン
「なかなか良いところだな」
「そうですね」
「天気も良く、景色も素晴らしいではないか」
「そうですね」
「ん……。いったい何が不満なんだい?」
「……しいて言うとですね。ここが無人島で、私たちが取り残されている事です」
「あー、それな!まさか乗ってきたドラゴンが、この島にいたドラゴンと駆け落ちするとは思わなかったな」
「あれ駆け落ちなんですか?私には乗ってきた黒いドラゴンが、ここにいた白いドラゴンに襲いかかって、白いドラゴンが必死に逃げていったところを、黒いドラゴンが追撃しているように見えましたが」
「うむ。あれはドラゴンの求愛行動だぞ」
「知りませんでした。というか知りたくありませんでした。あんな風に追いかけたら、女の子なら誰でも逃げるのは当然ですのに」
「念のため言うが、乗ってきた黒いドラゴンはメスだぞ。名前はジュリアだ」
「……なら仕方ないです。あ、女勇者から通信魔法です。……なんですか?」
『ちょっと聖女!あんた何してくれてんのよ!』
「なんのことです?」
『とぼけないでよ!今、王都にある私の家の上空で、ウチのポチが黒いのに襲われてるんだけど!あれって大魔王のところのドラゴンでしょ!』
「そちらにいましたか。あの白いドラゴンはポチっていうんですね。まあ、求愛行動らしいので暖かく見守ってあげて下さい」
『はぁ!?それどころじゃ……ぎゃーー!やめて!そこ私の家!お願い!壊れちゃう!まだローンが……ぎゃーーー!』
「あ、通信が切れました」
「大丈夫かな?勇者に攻め込まれるのは困るのだが」
「大丈夫です。新婚家庭に攻め込むような輩は、例え勇者であっても返り討ちにしてやるのです」
「……。なるべく、穏便にな?」
「はい。私の必殺技。『超悶絶くすぐり特選百景』をお見舞いしてやるのです」
「君を妻にして、本当に頼もしいよ」
「でしょ」
元ネタ
前世ブラック企業勤めだった聖女ですが、スキルが「お茶汲み」と判明し勇者パーティから追放。実は茶柱に超絶幸運バフが付いてる事が判明。いまさら戻ってこいと言われても大魔王の嫁に永久就職するのでもう遅い。
これが忘年会ギルド発祥の地である!