プロローグ
俺はヒーローになりたかった。
誰だって1度は夢見た事があるだろう。
正義の味方。悪の敵。
弱きを助け強きをくじく。
強大な悪に立ち向かい、その恐怖から人々を救う。
怪人が現れたら変身して、ボロボロになりながらも戦って最後に必殺技で勝利する。
そんなヒーローになりたかった。
普通の人が現実を見始めている時にすら俺は本気でヒーローになろうとしていた。
だけど、なれなかった。
俺はヒーローって器じゃないと悟ったのは小学5年生のころだろうか。
俺は虐められていた。
理由は単純だった。
俺はクラスのカーストトップ連中に喧嘩を売った。
そいつらは虐めをしていた。俺じゃない誰かに。
俺はそれが許せなかった。
そして俺はそいつらに喧嘩を売った。やっすい正義感に動かされた。
別に俺はその子と仲が良かった訳では無い。名前も顔も覚えていない。何で虐められていたかも分からない。
ただ助けなきゃと思ったんだ。
もちろん結果はボロ負けだった。
変身も出来なきゃ必殺技も使えない。
相手は5人 俺は1人
タイマンでも間違いなく負けてたけど
勝てるはずがなかった。
ボコボコにされた。
あの日を上回る痛みはもう来ないだろうと思っている。
体だけでもなく心も痛かった。
そして俺は虐められるようになった。
だけど、俺はそれでも良かったと思っていた。
虐めのターゲットがその子から俺に移れば、その子は救われる。
だけど、現実は甘くはなかった。
虐めのターゲットは俺とその子になった。
どちらか1人では無く、どちらも虐める。
俺はあの子を救うことすらできなかった。
被害が増えただけだった。
その時だった。俺が理解したのは。
俺はヒーローになれない。
力が無ければ正義なんか名乗っちゃいけないんだ。
俺はあの時からヒーローの助けを待つだけの一般人Aになった。