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14話 VRSNSで行動を起こそうと考えた

 戸倉と共に先に事務所に戻ったモミジはソファに戸倉を座らせた。


「VR空間ですとお茶も出せなくてごめんなさい」

「いえ、どうせ私のヘッドギアでは味も感じませんので」


 現在市場に出回っているヘッドギアは二種類。通常のヘッドギアと、高性能ヘッドギアだけである。

 通常のヘッドギアで感じることができるのは触覚のみであるが、高性能ヘッドギアでは五感すべてをVR空間で感じることができる。

 この触覚のみを感じることを逆手に取り、疑似的に痛覚に働きかけるのが攻撃アプリの仕組みである。


 事務所に誰かが入室するベルが鳴り、モミジと戸倉はそちらに視線を向けると、そこにいたのはありとあらゆる筋肉が膨張し、綺麗にメイクをした男性アバター。


「あら? クロードちゃんは?」

「あー、お仕事中ですね。後始末とかでしょうか? 多分」

「さすがにそこまでモミジちゃんには付き合せないのね」

「…………? まあ、私は依頼人をここに連れてくるという仕事もありましたし」


 依頼人というワードを聞いたイーサンは、戸倉に視線を向けると、二人の視線が交差する。

 戸倉はイーサンを見ながらふるふると震え、イーサンは戸倉を見ながら可愛い小動物を見ている気分になった。

 そして見られていることに気付いたイーサンはすかさずサイドリラックスポーズを取った。

 当然、目の前でそんな奇行を見せられた戸倉は白目をむいてしまった。


「もう! 見るなら見るって言ってよね!」

「イーサンさん? 依頼人さん卒倒してますからそのポージングは控えて頂けますか?」

「あらそうなの? 美はそれぞれの形があるものだからこそ、互いを尊重し合おうかと思ったのに」


 モミジは自分の感性と大幅にずれたイーサンの美学はさておき、気絶状態に近い戸倉の体を揺さぶりながら名前を呼ぶ。

 当然、VRSNS内で他人を触るには許可が必要なのだが、モミジは改造した攻撃アプリの手袋で自在に他者のアバターに触れることができる。


 しばらくして事務所にクロードが戻ってきた。


「戸倉さん。しばらく様子見ですが、ひとまず彼がまた再犯を犯さない様に、匿名で通報しておきました」

「ありがとうございます」

「おそらく彼のアバターに残っている移動ログでストーカーであることは証明されるでしょう。ただ、違法ツールに関しては私の方で削除させて頂きました。理由はいろいろありますが、部外者である貴方に教えることはできかねます」


 クロードの説明を受け、戸倉は頷く。それを横で聞いていたモミジは、クロードの中で、自分は部外者なのか身内なのかという考えがぐるぐると回っていた。


 戸倉が事務所を出ていくあたりで、モミジはじーっとクロードを見つめるが、クロードはその視線に気付ているのか気付いていないのか。いつものようにソファに横になって帽子を顔に被せた。

 その行動を拒絶と受け取ったモミジは、今度はイーサンの方に向けて首をグインと動かした。

 しかし、イーサンも困ってしまったのかその場でスクワットを始めるのだった。


「筋トレ好きですね」

「『ウロツイター』でのアバターの筋肉はVR空間で身体をどれだけ動かしたかが重要だからね。現実でも仮想でも、美しい肉体であるべきだからこそトレーニングは怠れないわ」


 どうやら自分はまだ部外者か足手まといという認識なのだろう。改めてそう再認識したモミジは、ため息を吐いて自分の残高を確認する。


(バイト代っていつ頃振り込まれるのかな。早く私の事件も捜査して欲しいんだけどなぁ)


 少ない残高を眺めながら、VRスリ事件のことを思い返す。


(犯人は間違いなくあのデパートにいたんだから、もう一度行けばもしかしたら何かわかるかも)


 モミジは来週末に事件のあったデパートにでかけようと考え始めた。


 先ほどまでしかめっ面だったモミジは、急に明るい表情になったことに、イーサンは目を離さなかった。


 そしてモミジは用もなくなり、事務所を後にするのであった。


「クロード?」

「お前の言いたいことはわかっているよ。さすがにそろそろあいつの依頼も考えてやらんとな」

今回もありがとうございました。

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