第十九話 騎士団長
聖加は一人暗い道を歩いていた。
退職するときは騎士たちに見送られ、花道を通ることを想像していたが、全く違ったものだった。
誰一人、自分の話を最後まで聞いてはくれなかった。
そして自分のことを理解してくれたのは、先ほどの三人だけだった。
そしてその三人は遜頌を疑っているようだった。
「まさか。」
もう一度否定をしてみた。
けれど、すればするほど自分の中の疑念が大きくなる。
「・・・そんなはずはない。」
聖加の脳裏にいつも遊説先で笑顔で子供たちに父親のように「信」について説き続けてきた青年二人が甦る。
まだ、二十歳と十六歳の若い二人だった。
それでも彼らは人の心を満たすという仕事を嫌がることなく誇りを持ってやっていた。
「・・・くそ。」
聖加は教会を見上げて、そして早足で歩き出した。
まだ仕事に残っていた騎士たちはその聖加の姿に驚いていたが、止められる前に聖加は暗想の部屋へと入った。
中では老人が頭を抱えていた。
「おい、お前何してるんだ?」
「話を!話を聞いて欲しい。」
「何ですか?退団した筈の人が。」
扉を開けて入ってきたのは魔宗だった。
「お前もいたか。ちょうどいい。話を聞いてくれ。」
「あなたの話など聞く耳持ちませんよ。聞けば我々までが疑われる。」
「聞くだけでいい!」
暗想は今にも激高し暴れてしまいそうな聖加を座らせ、魔宗にも視線を送った。
「聞くだけ聞いてやって、あとは我々が判断すればよいではないか。」
魔宗はあからさまに嫌な顔をすると机に座った。
「で?話したまえよ。」