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第十八話 ならず者

すると聖加は少し驚いたような目を向けた。

「まさか!そんなわけはあるまい・・・。」

その可能性を初めてはじき出したような顔をしていた。

ただ聖加にも二人の死については考えるべきところがいくつもあった。

「あの若者がそこまでのことをやるとは・・・。」

彼の頭の中には遜頌はただの弁士だという気があった。

それほど大きなことをやれる人間だとは思ってもみなかった。

関霞はその反応を見て手を上げた。

「いや、ただの俺の考えだ。」

「・・・そうか。」

けれど落ち着かないように聖加はグラスを持っていた。

「黎仙様ならば、王子と結婚してもうまくやれると思ったのだ。今の黎仙様ならば。」

「それほど黎仙様はしっかりしておいでなのですか?まだ十三歳だとお伺いしておりますが。」

麓珠はワインを一口、口に含んでから問いかけた。

「まだ、未熟かも知れぬ。ただ女性ならではの感性というのだろうか、母性というのか。今までの教皇とはまた違う何かを持っておられるように思うのだ。」

「あれは、賢い。いい教皇になる。」

関霞はワインを飲み干し、ボトルを自分のグラスに傾けた。

「その上、美しいからな。あれは男を惑わす。俺だっていちころだったからな。もうアイツにメロメロなんだ。」

「だったら、女遊びは慎め。」

麓珠は関霞に突っ込むと、ボトルを奪った。

「そうはいうが、俺がこのあふれ出る性欲を我慢きれずに黎仙に襲い掛かるわけにもいかんだろう?」

「馬鹿か?」

数馬は関霞の言葉を呆れたように吐き捨てると、麓珠からボトルを奪い自分のグラスと聖加のグラスに注いだ。

「あなたも、今まで培ったもの全て奪われ・・・これからどうなさるのです?」

「田舎で小さくてもいいから孤児たちを育てようと考えている。そこから教会だけではなく国王騎士になる子が出てくれればと。そうすれば民の心は騎士にもう一度向く。そう思うのだ。」

聖加の言葉に麓珠は頷いた。

「ええ、是非そうしてください。」

聖加は少し酔ったのか立ち上がり、三人を見た。

「祝ってくれたこと感謝する。・・・では、またどこかで。」

「ああ、お前の教え子を待ってるぞ。がんがん武闘大会に出して来い。そしたら数馬が見定めて採用してくれる。」

「関霞、俺のどこにそんな権限があるんだ?」

聖加は三人に一礼するとその場をあとにした。

足早に去る聖加を見て、数馬が呟いた。

「もったいない。あれほどの人間を追い出してしまうとは。さらに騎士離れに拍車がかかるのではないか?」

「ええ、私も同感です。しかし、これは教会の問題、我々は口出しできません。分かってますね。関霞、あなたの出る幕ではありません。例え、黎仙様が鼠男と結婚しようが君には関係ないことです。むしろ君が出れば余計なことです。」

「だがな。このまま放っておくわけにはいかんだろう?」

「放っておくしかないのです。ならず者、関霞に何ができるというのです?」

「・・・麓珠、なら知恵を貸してくれよ。」

「言ったはずです。これは教会の問題!ならず者、関霞ではどうしようもできないと。」

麓珠はそういうと支払いに立ち上がった。

「ならず者、ならず者って偉そうに・・・。」

関霞がワインを流し込むと隣で数馬がため息をついた。

「そうだな。お前のその姿どう見たってならず者。だれも見てくれるわけはないな。」

「お前まで。」

「なら、ならず者をやめればいいんだろ?」

数馬もそういうと立ち上がり店から出て行った。


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