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手加減だけはうまくできない  作者: ニャンコ先生
第03章 王都マグロンタターク
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第27話 神兵

猫の集会に参加要請がありました。

その準備のためにしばらくの間、執筆ペースが多少落ちます。



 アルタイルからのお願いは二つ。


 それをかなえる代わりに、俺たちのお願いを一つきいてもらう。


 お願いの数だけで単純に比べれば、正当でない取引だ。

 だが、都市一つ分もの財宝を得られるというのだから、うなずかない理由はない。


 たとえアルタイルからのお願い内容が、現時点で不明だとしてもだ。




 俺とアズキとアルタイルは大空を飛んだ。




 なんでもできるアルタイルが、俺たちにどんなお願いをするというのだろうか。

 パパとママという立場の俺たちに甘えたいとか、あるいは叱って欲しいとか、そういうことだろうか。


 不安と期待の入り混じった感情が、俺たちを無言にさせる。

 いつも騒がしいアルタイルも、黙りこくっている。






 そして俺たちは、どこかの山奥に到着した。


 切り立った崖の真下だ。

 それ以外には、何も見当たらない。


 アルタイルが無言で崖に触れる。

 すると大きな洞窟の入り口が姿を現した。


 洞窟の壁からは水晶のようなものが露出していて、薄ぼんやりと光っている。

 水の流れる音も聞こえてきた。



 その不思議な出来事に耐えかねたのか、アズキが沈黙を破った。



「……これは、なに?」


「誰にも知られていない秘密のダンジョンでござる」と、いつの間にか甲冑をみにまとったアルタイルが答えた。


「秘密のダンジョンですって?! すごいじゃない!」


「お二人はここでニ十五秒ほどお待ちくだされ。

 その間は他の神兵に守らせますゆえ、ご安心めされよ。では」


「他の神兵……?」



 途端に空から五体の神兵がおりてきて、俺たちの周囲を取り囲む。


 それぞれ色や材質が違うけれども、アルタイルと同じように鎧や甲冑で身をつつんでいる。

 みな無口で仁王立ちしたまま、俺たち二人をみつめている。


 威圧感がすごい。

 アズキはおびえたように縮こまっている。



 神兵たちに話しかけにくい雰囲気だったので、こちらから触れてみる。

 心の中で語りかけてみる。


 だが反応はない。


 なんだよお前達、パパである俺とのコミュニケーションを求めていないのか?


 ……って、良く考えたら、こいつら全員が接触通信能力を持っている保証はないか。



「神兵がこんなに居並ぶと壮観ね。

 それはさておき、アルタイルはどこへ行ったのかしら」


「ニ十五秒なんてあっという間だよ。すぐにもどってくるさ。

 ところでお前たち、名前はあるのか?」



 語りかけてみたが、神兵たちからの返事はない。

 それどころか微動だにしない


 俺たちを見守っているだけだ。


 これは、どういうことだろう。

 神兵全員が、俺との接触を求めているのではないということだろうか。


 ……俺たちが嫌われてるわけじゃないよね?



「思ったよりも、時間がかかりもうした」


「ほら帰ってきた。どこへ行ってたんだ?」


「ダンジョンを攻略してまいりました。

 これが戦利品でござる。うけとられよ」



 アルタイルは両手の中に、いくつもの財宝をかかえていた。

 どうやって運んできたのか、地面にもたくさんの財宝が転がっている。



 『スキル缶』、『奇跡』とおぼしきカード、そして『スキルスター』らしきパッケージ。

 金貨の山、宝珠、飾りのついた武器、古ぼけた書物、小さな宝箱、液体の入った小瓶。



「吟味は後回しにして、めぼしいものだけアイテムボックスにいれてくだされ。

 スケジュールが切羽つまっておりますゆえ。

 金貨類も持ってきてしまいましたが、捨て置いてよいでしょう。

 すぐに次の目的地に飛ぶでござる」


「あ、ああ、うん」



 財宝は二人で手分けしても、入りきらないほどの量だ。

 お互いにアイテムボックスを起動して、収納する。

 アルタイルにも手伝ってもらったが、やはり全てを持っていけそうにない。


 かなりの財宝がしまいきれずに残った。

 カードと金貨数枚をポケットに入れ、残りは置いていくことになった。


 ともかくこれで、一財産を築きたいという俺たちの願いは叶ったのだ。




「では、まいりましょう」


「次はどこへ行くの? もしかして、別のダンジョン!?」


「敵を……、敵を退治するでござる。

 それをおふたりに見届けて欲しいのでござる。

 これが拙者の一つ目のお願いにござる」


「敵?」


「ええ、お二人は拙者が守りますが、油断なさらぬよう」



 敵、とはなんのことだろう。

 今までの話から予想すると、山賊狩りだろうか。

 だが、山賊はこの前の一斉蜂起のとき、全滅したと聞いている。




 俺たちを守っていた五体の神兵たちも、アルタイルと一緒に編隊を組んで目的地へと飛んでいく。


 この神兵たちもつれていくのか。

 普通に考えると、こいつらが姿を現した理由は、一緒に戦うためだよな。


 ……神兵六体が必要になるほどの敵って、一体どんな敵なんだ?



 山を越え、谷を越え、気がつくと俺たちは砂漠の上。



「目標発見、包囲開始。

 戦闘準備が整い次第、攻撃を開始する」



 アルタイルの命令に従って、五体の神兵が離脱する。


 その先には敵影らしきものが見当たらない。


 何もない。


 いや、一人の旅人が歩いているな。

 ぼろぼろの黄色いマントをまとっている。


 もしかして、あの旅人のことだろうか。


 神兵たちの動きなどから察するに、どうやらそうらしい。


 それにしても、いきなり攻撃を開始するってひどいな。


 まあ、それだけの極悪人ということか。

 おそらく逃亡中の凶悪犯とか、山賊の親玉とかなのだろうな。



「よく見ていてくだされ」



 アルタイルの前にいくつものパネルが現れ、各神兵の姿が映っている。


 五体の神兵が旅人を包囲し終えた。

 どうやら今は、攻撃用のエネルギーを充填中らしい。

 戦闘準備が完了するまで、もう少し時間がかかるようだ。



「神兵の戦闘能力なら、あんなまどろっこしい戦い方をしなくていいんじゃないの?」



 と、もっともな意見をアズキが口に出す。


 しかしその口調の裏に、かすかだがとげとげしいものを感じた。


 それは何故か。



 ──おそらく剣士としてのプライドを刺激されたのだろう。


 アズキは先日、アルタイルとのタイマンで負けている。

 つまりアズキは、神兵一人にかなわぬ存在ということになる。

 『ブラッドチェーン』で強化されたとはいえ、その戦闘力は大きく変わっていないだろう。


 それなのに、あの旅人には神兵五人がかりだ。

 しかも念入りに準備までしているのだ。


 これはアズキにしてみれば、面白くない話だろう。

 下手をすれば、『五分の一の女』なんてレッテルを貼られかねないのだから──。



 以上は俺の想像だが、これはとても繊細な問題に思える。

 だとすれば、ここは黙っているのが得策だろうな。



「『まどろっこしい戦い方』、ですか。

 アレがただの旅人なら、確かにそのとおりですな」


「……ならアイツは、ただの旅人ではない、ということなのかしら?」


「そのとおりです。

 あのように慎重な戦いをしかけなければならない相手なのです。

 そうしなければならない一番の理由は、アレの能力が分からないということです。

 最悪の事態を避けるため、能力を使われる前に倒さねばなりません」


「能力って、シン能力のことでしょう?

 相手の所持スキルを見破れば、それですむ話じゃない。

 わたしの能力を見破ったようにね」とアズキが眉をひそめる。


「残念ながら、アレはシン能力者ではありません。

 ですから、その能力を見破ることはできないのです」


「えっ? じゃあ、何だというの?」


「……準備が整いました。戦闘、開始します」




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