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手加減だけはうまくできない  作者: ニャンコ先生
第03章 王都マグロンタターク
24/39

第24話 鎖

あまり時間がとれなかったので、短めです。

その代わりに、次回は二話分を予定しています。


今回の内容は前回に引き続き、アズキと二度目のお出かけシリーズまとめ編という感じです。



 アズキは遠くをながめている。

 疲れてボーッとしているのか、聞こえないフリをしているのか、どちらか分からない。


 だがしばらくすると、わざとらしく頭をポリポリとかきながら話してくれた。



「えーとね、教えていなかったけれど、スキルの枠数って生まれにより個人差があるの。

 ある学者さんの説によるとね、シン能力者百人のうち、九十九人は三枠。

 そしておよそ百人に一人、最初から四枠で生まれてくる人がいるそうなの」


「へー。となると、四枠の子はスキルスター二十五粒で五枠になれるのかい?」


「ううん。そうじゃないわ。

 四枠の子がスキル枠を増やそうとしたら、百二十五粒のスキルスターが必要になるの。

 だから四枠の子が得したのは、三枠から四枠に増やすためのスキルスター二十五粒分だけってことになるわね」


「そっか。そこは変わらないのか。

 でも金額にすると二十五万マール相当。

 若いうちの一ヶ月以上の労働分と考えれば、地味に嬉しい幸運だろうな」


「うん。それでね、話はもう少し続くの。

 実は千人に一人の確率で、五枠の子がうまれてくるそうなのよ。

 こちらは合計百五十粒分だから、かなりお得感が増すわね」


「おー、そうだな」


「さて、ここでクイズです。

 百人に一人が四枠、千人に一人が五枠ときたら、次はどうなりますか?」


「もしかしたら、一万人に一人は六枠なのか」


「正解!

 六枠は一万人に一人、七枠は十万人に一人の割合だそうよ。

 そしてわたしは、とても幸運だったの」



 含みのある言い方だ。

 アズキが何枠で生まれてきたのか、言及していない。


 八枠なら百万人に一人だが、それ以上の可能性もあるということだろう。


 いや待て。百万人といっても、シン能力者百万人の中の一人ってことだよな。

 人間という枠でくくったら、いったいどれくらいになるのか……。


 まあ、追求はやめておこう。



「そうだったのか。アズキがうらやましいな。俺は凡人の三枠だ。

 アズキは剣技スキルの習得もオーラの扱いも、人並み以上だったよな。

 本当に天才なんだな」


「その二つに関しては、クロルの方が上だけどね」



 アズキは口を尖らせて、不満げな表情をみせる。


 そして眉間にしわを寄せ、俺に近づいてくると、腕にしがみついてきた。

 まだ疲れが抜けないのか、そのまま体重をあずけてくる。


 俺に対する抗議なのか、それとも甘えたいのか、あるいはその両方か。


 俺の肩にちょこんと乗せてきた小さな頭をなでてやりたいものだ。



「さて」とアルタイルが渋い声を出す。



 なんだよ、いたのかアルタイル。

 せっかくちょっといいムードになりかけていたのに。


 妹とか弟とか欲しくないのか?


 ……いや、神兵っていっぱいいるんだっけか。

 今さら弟妹が一人二人増えても、感激は薄いだろうな。



「では、レベル上げはしばらくお休みですな」


「そうだな。『奇跡』と『スキル缶』と『スキルスター』、この三つを集めよう。

 最優先は『レベルダウンの奇跡』だな。

 あっと、それだと俺ばっかり強化することになっちゃうか」


「わたしのことは、気にしないでいいわよ。

 今回のレベルアップで、以前からどうしても欲しかった能力を得られたもの。

 この能力があれば、あの剣帝ともやりあえるようになっていたはずよ。

 だからしばらくの間、使い勝手を試しつつ、レベルアップの方向性を検討したいの。

 もしかしたら、スキル構成を調整することになるかもしれないわね」


「そうか。ちなみにどんな能力を手に入れたんだ? さしつかえなければ聞かせてよ」


「いいわよ。

 今回レベルアップさせたのは拘束スキル。

 そして得た能力は、『ブラッドチェーン』よ」


「ブラッドってことは血に関係した能力だな。

 さらに拘束スキルで得た能力。

 ……だとすれば、自分の血を付着させることで、相手の動きをとめられるようになったとかかな?」


「おー。さすがクロルね。ご明察。だいたいその通りよ。

 一ミリリットルにつき一秒間、相手の動きを止められるわ。

 血を媒介として使うから無茶なことは出来ないけれど、これで相手に直接触れなくてもよくなったのよ。

 これはわたしにとって、すごく大きな進歩なの」


「そうなのか」


「うん。相手に触れるってのは、リスクも大きいのよ。

 相手もわたしと同様に接触系スキルを持っていたりするからね。

 その対策に虎穴スキルを取ったんだけど、全てを防げるほど万能ってわけでもないみたいなの。

 時間差で効いてくる接触毒なんてのがあるらしいのよ」


「それは嫌だな。俺もくらいたくない」


「普段から血を小瓶にとりわけておいて、アイテムボックスに入れておいてもいいわね。

 いざってときに投げつけられるもの。

 まあ普通に投げるだけでは毒か何かだろうと警戒されるから、工夫がいるでしょうけどね」


「うん、ありかもしれない」


「そして何より一番嬉しいのは、ショートテレポート持ちの相手にある程度対応できるようになったってことよね」



 アズキはアルタイルを指差しながら、そう言った。



「確かにそうでござるな。

 血を付けられたら、テレポートで逃げた先でも動けない状況は変わらないでござる」


「そこを狙い撃ちってわけか。なるほど」






 というわけで、『スキルレベル上げはしばらくお休み』である。



 剣技スキルのレベルアップも、『ナデール鋼』とやらを斬れる剣がないのでこのまま放置だ。


 次の無敵スキルレベルアップの準備を、少しずつ進めていこう。

 アルタイルに頼めば、必要な物資をかき集めてきてくれそうだが、その手は使わない。


 俺自身この世界のことを何も知らなすぎるので、見聞を広めたい欲求が高まっている、ということもあるからね。






 俺たちは王都に戻った。

 アズキのブラッドチェーン用の小瓶を探したり、色水を入れて投げつけたりして試したのだが、その話は割愛しよう。



 そして話は、次の日の朝に飛ぶ。




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