第四話
「うう…ここは」
天馬のすぐそばから声がした。
「気がついたみたいだね。天馬君」
「おまえっ!」
「ここは保健室だ。全然ケガもないって先生が言ってた」
天馬は自分を覆っている薄い上掛け布団に目をやり、再び横に立っている太郎に視線を戻す。
「天馬君はさっきの爆発で気絶していたんだ。それで僕が君をここまで運んだんだ」
「っ!」
さっきの爆発と聞いて天馬は困惑した顔している。だがそれは太郎も同じだ。この一件の事は意味不明のまま進行している。ただ、太郎はロボットが爆発したの後、現場に戻ると盛大にはじけ飛んだ割に胴体の上の部分がほとんど無傷で残っていて、ぐったり気を失っていた天馬を発見したのだ。そして人道的に天馬を背負い保健室まで来た。
このことを天馬に説明すると、
「バッカヤロー。俺はお前の命を狙ってるんだぞ!」
「けど、あのままほっとくのも」
ふん、と鼻を鳴らして天馬は中空を見る。
「まったく考えられん。俺なら速攻で相手を殺しているだろうな」
今日一日見ていた天馬とはかけ離れる言動にたじろぎつつも太郎は今もっとも疑問にしていることを聞いてみた。
「なんで、僕を殺そうとしているんだ?」
動揺したのか天馬の眉がピクリと動いた。
「………」
ちなみに保険の先生は今はいない、いたら絶対にしない質問だ。太郎は続けた。
「君と会ったのは今日が初めてだ。恨みを売ったり買ったりなんて行為はしていないし、それとも遠い知り合いとかで僕に関係する何かがあったのかい?」
「………」
天馬は喋らない。視線は天井を見上げたままで、その目は冷淡そのものだった。
ふぅ、と太郎はため息をつき俯いた。
沈黙した時間が流れる。静かすぎてキーンと耳鳴りしてる気さえした。横目で夕暮れのオレンジ色に染まった保健室を眺めた。野球部の練習のかけ声や音、吹奏楽部の演奏も聞こえない。 もろもろが部活動している場所とここは距離がかけ離れているのだ。
俯きながら太郎はふと気になった。
そういや、あの校舎の裏の爆発音は誰にも聞かれなかったのだろうか、もしかするとさっき保険の先生が慌てて部屋を出たのはそれが原因だったのでは? と思考していたが、いやいやと首を振り腕時計を見た。二人が黙って約十分ぐらい経っただろうか。太郎は一向に口を開かない天馬を一瞥して帰る決心をした。天馬は無事だったし、何よりこの時間が無駄に思えてきたからだ。
「じゃあ、僕は帰るよ。明日は、」と言いかけると天馬が太郎の声を遮るようにして口を開いた。
「久坂太郎。俺はお前の子供なんだよ」
いきなりの爆弾発言。太郎は一瞬耳を疑った。そして大気が凍り付いたようにも感じた。
「えっ?」
「だから俺はお前の子供なんだって、正確にはずっとずっと先の子孫だけどな」
二回言葉を聞いても口から出て来るのは同じセリフだった。
「えっ?」