第三話
ガポンと開いていたロボットの蓋が閉じる。
「意味がわからん!?」
太郎は驚愕していた。
「お前が理由を知る必要はない!!」
天馬の声はロボットの胴体にあるぶつぶつとした黒い点々から声は発せられているようだった。掃除機のホースような細く長い腕の先についている三本の指が動いた。その指が立体の三角形ように重なり高速で回転する。まるでドリルがまわっているようにも見える。
「わわっ」
何が何だかわからず、困惑する太郎。
「ふふ、終わりだ久坂太郎」
「天馬君、冗談だろ。や、やめてくれよ!」
「うるさい。死ね!」
ポコンポコンと妙な音が聞こえ、ロボットはこれまた細い足を器用に動かして太郎に迫って来た。ガチコンガチコンと不気味に走るロボットに対して太郎は身動きすらできずにその場にぺたんと座り込んでしまった。
「観念したか。ふはっはっは!」
無情にもロボットの鋭い一撃が太郎を襲う。これでこの物語も終演かと思われたが太郎の前で激しい金属音がした。次に天馬の声が聞こえてきた。
「貴様はっ!?」
太郎が恐る恐る目を開けると、太郎の目の前に人が立っていた。
「えっ!? 女の子…??」
そう、太郎と同じ学校の制服を着ている女子生徒が刀でロボットの攻撃を防いでいた。それは見事なまでに。そして太郎に一瞥する。
「何してんの! 早く逃げなさい。このアホンダラ!!」
「はいいっ!?」
横顔しか見えないが限りなく整った顔立ちでロングヘアーの女の子。身長は太郎と同じぐらいだろうか。
「聞こえないの! 逃げろってんでしょ! 耳付いてないわけ!?」
ゆらりと鬼の形相でギラリと睨まれた太郎は恐怖で震えてしまったがとりあえずこの場から脱兎の如く逃げ出した。
天馬俊作はロボットの中で舌打ちする。
『くそ、なんて展開だ。これは予想外だ。許さん』
ロボットがもう片方の腕を振り上げる。またもや三本の指を回転させながら女を攻撃するが女もすぐに反応した。
つばぜり合いを演じていた腕を弾くと、攻撃してきた腕もひらっと避けてロボットの胴体を刀で斬りつけた。音的にちゅぎゃいんって感じで。女は斬りつけてからくるくる前転してロボットから離れる。
次の瞬間、バチバチと火花を散らしてからロボットは爆発した。凄まじい轟音が校舎の裏で反響する。辺り一面に煙がもうもうと立ち込め、からんからんとロボットの金属片が舞い落ちる。
「終わったわ」
そう言うと、刀を鞘に収め、一躍して姿を消した。なんという身体能力だろうか。これが女サムライこと佐藤雪菜と最初の出会いであった。
一方、太郎は逃げろと言われたものの、何処に逃げて良いか分からず物陰からこっそり一部始終見ていたのであった。
「そうだ、天馬君は…」
太郎は視界がよくなってきたので近づいてみることにした。ついさっきまで命を狙ってきた相手とはいえ天馬の安否が気になっていた。