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僕って  作者: ぺったん
2/6

第一話

 次の日。

目覚まし時計が鳴り響く…チャンスを許さず久方太郎は時計のスイッチを押していた。 時刻は六時半。

 太郎の目覚めは早い。とくに早起きする理由はないが幼少の頃から習慣でこの時間にはぱっと目が覚めてしまう。土、日もしかり。

 ベッドの上であくびを一つ。

「う〜ん…なんかいつもより今日はすこぶる体調が良い気がする」

 久坂太郎の体調がどうであれ、一日の始まりである。

 まず一階に下りて顔を洗いトイレを済まし、二階に上がって制服に着替えてからまた一階に下りる。せわしいように感じるが動き自体は緩慢で緊張感はない。早起きのおかげで あろう。太郎が向かった先はリビングだった。

「あら、おはよう」

 部屋に入るなり久方太郎の母、喜美江きみえが笑顔であいさつしてきた。

「うん、おはよう母さん」

 おっとりした性格の久方喜美江はこの家の大黒柱である。なぜなら父親の哲男は海外へ出張中だ。もう四年も帰っていない。だが毎月哲男から仕送があり、それでなんとか家計を支えているのも事実で、この仕送りが少しでも滞ると速攻離婚しようかと考えているらしい。

「そうだ。お姉ちゃん起こしてきてくれない?」

 太郎は後ずさる。

「げっ! また?」

「今、母さん手が離せないの。お願いね」

「ええ〜…」

 

 太郎が嫌がるのにも理由がもちろんあり、太郎は口を三角にしてみたび二階に上がった。

コンコンコン。

太郎の部屋の反対側にある扉をノックする。

「姉ちゃん、朝だよ。起きてよ」

 返事はない。

「もう、姉ちゃんってば!」

 ここで起きてくれたら困ることはなし、なので起きたこともなし。

 太郎は唾を飲む。

「は、入るよ」

 おそるおそる扉を開けた。間取りは太郎の部屋と変わらない六畳一間。

 ベッドの位置も一緒である。

 姉は布団を全身に被っていてさながら繭状態であった。

「姉ちゃん、朝だけど…」

 なぜか声は小声である。大きい声が出せない、普通は逆なのだが太郎は小声なのに喉がカラカラで渇いた気分になっていた。

「う〜ん…」

 繭がもぞもぞと動く、そのおかげか姉の顔が出てきた。

 太郎は耳元でささやくように言った。

「朝だよ、姉ちゃん起きた方がいいと思うよ」

 次の瞬間、ズドム!!

 鉄拳が太郎の顔面をとらえた。腰から崩れ落ちる。そして咆哮が轟く。


「おらぁ! 田辺こんなんで終わりかよ! コラァッ!!」


 解説しよう。太郎の姉、久坂蘭らんは太郎と高校は違うがその学校のスケ番なのである。日々、縄張り争いに参加してはタイマンとかなんとか…今時珍しい珍獣であった。

「い、イタイよ。姉ちゃん」

 鼻から血を流しながらもなんとか立ち上がった。

「あん。太郎か。なんだもう朝か。ていうかなんで鼻血出してんだ?」

「いや、もういいよ…」

「なんだと、コラ!! 人がせっかく心配してやってるのに。あっコラ」

 太郎は足を漫画のようにピューっと回転させながら部屋から消えていった。



「あ〜もう。まだ鼻が痛むよ」

 ここは太郎がいつも通っている通学路。太郎は今年高校生になったばかりであった。

「おっす!」

 太郎に声をかけてきたのは同じクラスの木村である。

「よう…」

「なんだよ。元気ね〜な〜。うわっ、つーかなんだその鼻は!?」

「…ああ、姉ちゃんにやられた」

 木村は後ずさる。

「やっぱ、この町の四天王だけあるな。お前の姉は…」

 太郎の鼻は鼻血はすぐに止まったが二倍ぐらいにふくれあがっていた。

「ははは。しかし、よかったぜ。俺んちは凶暴な姉がいなくてよ」

「笑い事じゃねーっつの!」


 まぁ、そんなこんなで学校に到着。ややってホームルームが始まった。

 教壇に上がるは佐々木紀子ささきのりこ、23歳。整った顔立ちで男子生徒からも人気のある教師である。

「はーい。みなさん、いいですか。今日はなんと、この教室に転校生がきてまーす」

『えーウソ、マジマジ!?』などと声が飛び交い教室が騒がしくなる。

「静かにしてくださーい。では、天馬君入ってー」

 ガラッと扉をスライドさせて教室に入ってきた転校生に太郎含めた全員が驚く。端麗な顔立ちで美少年を集める事務所にいてもおかしくはないぐらいの美男子だった。ただ転校生の髪はサラッとしていて実に青かった。誰かが呟く。

『不良だ』

『不良なの?』

 今度はボソボソと囁く声が教室に充満する。担任の紀子は不穏な空気を察知してかフォローを入れる。

「天馬君はなぜか突然変異で髪が青いの。決して不良じゃないわよ。ささ、天馬君自己紹介してね」

天馬俊作てんましゅんさくです。よろしくお願いします」

 

 これが久坂太郎と天馬俊作の出会いであった。

 

 


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