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続編の番外編[嗜む程度が理想です2]



黒騎士様視点で進みます。








「ぁあーーーーん!ゔあーん!!!」



バチバチバリバリと放電を続ける美津。


これ以上破壊されたら困るので、料理ごと、テーブルを皆で美津の周囲から遠ざけて。



……ど、どうすれば?



「あそこまで興奮状態だと、魔法で眠りを促すのも困難だな。…………お前が殴って気絶させれば一発だぞ?」

「嫌ですよ!どこに愛する妻を殴り飛ばす旦那が居るんですか!!!」

「そうか。…………チビ(クミル)は眠らせたから、教育上の問題はないぞ?」

「「「「「お前はちょっと黙れ!!!」」」」」

「レオっ!少し大人しくしてて!ね!?ね!!?」



最善の方法であろうが何だろうが、あんなに柔くて可愛い美津を殴るのは嫌です!


でもこのまま放置だと家が……っ。

な、何とか落ち着いてもらわないと!



私は頭に乗っていたお母様を姉上に託し、ゆっくり、慎重に美津に近寄る。

……勿論加減はされていたが、お母様のビリビリに耐えていた私なら、美津に雷落とされても少しくらい大丈夫だ。




「み」

「ぎらぃいーっ!!!」




泣き叫ぶ美津が私の目を見ながら言った言葉に……ざくん、と。私の心臓と頭が剣や槍で貫かれる幻覚が見えた。

め、目の前が……霞む。



雷よりも、鋭い剣よりも。その言葉が、辛い(涙)



「あ、あれは酔っ払いの戯言やから!負けんなクルちゃん!!!」

「ぅうっ…………。」



お母様は、一言で床に撃沈した私を鼓舞しようと必死に声を掛けてくれる。でもね、お母様。嫌い……嫌いはっ!私には刺激が強すぎるんです!




「美津様!クルーレの罪は、姉である私の罪も同じ!どうか、何にお怒りなのかお教え下さい!!!」

「そ、そうや!悪い子には私がビリビリしたるよ!……だからみっちゃん、お母ちゃんに教えて?な?な???」

「うっ、うぅ、…………ぐしゅっ、えっく。」



まだ立ち上がれない私を見兼ねて、美津の視線の先、丁度私の右隣に仁王立ちした姉上とその両手の中のお母様が説得を試みてくれた。




……その姿は、神の怒りを鎮める為に語りかける神官の様。


ぶふっ、と吹き出したそこの赤毛。聞こえてるからな。

後で、覚えていろ(怒)




美津の呼吸も少し落ち着き、また叫ぶ事をやめた事で魔力の暴走……放電も、今は落ち着いている。

私も二人に任せて、出来るだけ存在感を無くそうと縮こまって静かにしていれば…………。



「だって、ぐすっ。……やくそく、ひっく。やぶったぁ……っ。」

「…………ど、どの様な、約束ですか?」

「ぐすん。…………ずっと……ずっと、いっしょって……ゆうたのに………………うそ、ついて……ひっく。……わたしには、うそゆえへんって……………り…の。」

「み、みっちゃん?……最後、なんて?」



泣いて掠れた声だったので、確かに少し聞き取りずらかった。

美津本人も喉の痛みに襲われたのだろう。周囲を見回し、視線の先に割れていないボトルを見つけると……魔法で引き寄せ、いきなりラッパ飲みし始めた。



ごっきゅごっきゅ、と。勢いよく。

すごく、音が響いてます。


というか、美津が魔法を完璧にコントロールしてる。

……酔った状態、しかも始めてなのに……美津凄い!

でもそれ一気飲み駄目だと思う!!!



「…………あれ、は?」

「……うちで作った、ワインだな。」

「……お祝いだからって、クルーレの産まれた年のヤツ、見つけて持って来てたんだよ。」

「ぁああ、美津様が、私の妹がお下品な事をぉぉぉ。」



私の問いかけに、父上と兄上が答えてくれました。

そして、姉上が私の様に床に撃沈したのと、美津がワイン一本を飲み干したのは同時でした。



美津は、私に顔を向けながら。





「うらぎりもの」





先程の泣き顔とは程遠い、感情の薄れた無表情。

でも頬は、林檎みたいに真っ赤。




ぁあ完全なる酔っ払いに!!?




「わ、私はそんな!美津を裏切るなんて!?」

「ひっく。……みとってからしぬっていった。」

「…………え?」

「わたしを、みとってしんでくれるゆうたのに……おいてくつもりやったんや……じさつ……なんか…………この、裏切り者めぇ!!!」

「ひぃっ!」



裏切り者、の言葉を発言した瞬間。

美津の両手のひらに、魔力が集まり小規模の放電がまた始まった。




……真っ赤な頬は、酔っているから、ですよね?

め、目が血走ってる様、な?




確かに、……確かに瘴気浄化の時、私は美津を傷付ける事を沢山しました。


でも美津、目覚めてからの説明で許してくれたのに……。

ずっと、心の片隅にもやもやが残ってるのは知ってましたが、ゆっくりこれから、時間で解決してくれる物だと……。



……もしかしなくても。

飲酒によって、理性が働かなくなってる?




何という事でしょう。

お酒って、怖い!!!(涙)




「何黙っとんのやこのあほぼけがああぁ!!!」


ずしゃっ!ずしゃっ!がしゃん!!!




美津の叫びと共に私はその場から走り出した。

彼女の手の平から黒い雷が迸り……私の背後、周囲の壁や床を破壊していくのが分かってしまった。




わ、私が立っていた場所!黒焦げです!

走り出さなかったら私も黒焦げですよ美津分かってます!?

今の雷っ、威力マックスの闇色バージョンなんですよねえ分かってます!!?




「逃げんなクソ野郎がああああっ!!!」

「は、話っ、美津!少し話を」

「裏切り者めぇぇぇ!そこになおれやあ!!!」

「うわわっ私でも死にますってそれ!!?」




この会話の間に姉上と女神が食堂を結界で包んでくれたおかげで、……実家の崩壊と焼失は防がれた。

流石姉上冷静です!

でももう少し、私の心配してください!



私が食堂内を逃げ回る横で、女神を手伝う為レオナルドも壁の修復作業を始めているが……あの、顔の青褪め方。美津の雷の威力に気付いたのか。


簡単に逃げてる様に見えてるだろうが、一撃必殺の殺傷力なんだからな!!?

どんどん狙いが正確になってるからな!!?(涙)



「あ、あの魔法……私の雷って言うより、クルちゃんに嘘つかれたって追いかけてた時に使ってたのに似てる……やばいめっちゃ怖いねんけど!?」

「…………美津は美智子(おまえ)の魔力を取り込んでるから……魔法を使えるのはおかしくないが……いや。もしかしたら、一部の記憶を共有してる状態なのかもしれない。消したっていう記憶も、」


ずしゃんっ!


レオナルドが修復していた壁が、闇色の雷によって縦にひび割れる。

お母様とレオナルド……否。

私を含むその場にいる全員の顔色が、白くなった。



というか…………け、結界越しにダメージを与えているだと!?

姉上だけじゃない、普段はうっかりでも魔法に精通している女神が施した防御結界なのに!!?



「…………いつの間にか、消してたんや。私の記憶。……ふぅーーーーん?」



……レオナルド、余計な事を。あとで、殺す。


絶対零度の微笑みの中、蔑みが込められた美津の瞳で見つめられると、私の心臓に更なるダメージが蓄積された。

足が震えて、上手く走れない。



そしてお母様達は、自分達に被害が及ばない様に私を美津の前に差し出して(素早く近寄って来た姉上に蹴り転がされた)食堂の隅っこに逃げた。



ぇ、酷い!!!(ガチ泣き)



そして、私の頭上に無表情に荒ぶった状態の美津の顔がある。手の平からは、今もバチバチと迸る雷。



……な、何とかしないと!美津に嫌われ……いや!このままだと私は半殺し。クミルを連れて家出されるかも!それだけは、それだけは阻止しないと!!!



「美津!それっ、それは訳があって!は話を、話を聞いてくれるなら私っ、何でもしま」

「何でも?」


ギラリと瞳を光らせる妻の顔が、……とてもとてもこわいですおかあさまわたしをたすけてください(ガチ泣き二回目)



「お姉様。」

「はい!」

「今夜一晩、お母ちゃんとクミルの事、お願いします。……あと、お父様。」

「……何だ。」

「私とクルーレさん、明日お仕事手伝えません。ごめんなさい。」

「構わん。……どうやら私の馬鹿息子が、お前に不誠実な振る舞いをしていた様だな。……()()はもう、お前の夫だ。好きに扱え。」

「ありがとうございます。……そのまま縮こまってるなら、真っ黒の雷落とす。」

「お伴します!!!」



そうして、私は。


城で、レオン様が殿下に引き摺られていく姿を見た時に……美津が必ず心の中で歌う『ドナドナ』のメロディーを思い出しながら、ついて行った。





だから、私は知らなかった。





「みつこわいみつこわいみつこわいみつこわいみつこわ」

「落ち着けティアラ!あいつはお前を怒ってたんじゃない!大丈夫だから正気に戻れ!」

「……成る程。話の流れは分かったが……シャリティア。お前が側に居ながら、あの馬鹿(クルーレ)はその様な愚かな考えに至ったのか?」

「……面目ありませんわ。」

「うーん。我らの弟君は拗らせ男子だからなー。」

「……シリウスの性根半分、いや三分の一でも混ざっていればもう少しマトモな男に育ったろうに。」

「父上酷い!」

「……………………わたくし、みつをおこらせたりしませんわ。よいこでがんばりますわ。よいこで」

「オリヴィエ様も!正気に返って下さい!ぁあ殿下になんて言えばっ!!?」

「……すぴー。すよー。むにゃむにゃ。」

「……………………なんか、ウチの娘がお騒がせして。ホンマすんません。」




私達が食堂から離れた五分後。


案内された食堂の、ひび割れた床や壁。

そして何らかの恐怖に怯えてる王族や妖精姿の女神を確認してしまった…………死んだ魚の様な目に変化した、リアーズ国の王女がこの様子を見ていたなんて。








それでも残ったご飯を美味しく頂く、リアーズの王女様ご一行。

唐揚げと天ぷら、気に入ってくれたようです。


ちなみにご一行は、お酒、飲みませんでしたよ( ̄▽ ̄)






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