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続編の番外編[王子様と女神様の珍道中]


女神様夫婦、こんな事してましたなお話。








ミスティー国の王子、レオナルド。




大人になってからの彼は、多過ぎる魔力のおかげで最低限の食事しか必要とせず、また睡眠も殆ど必要としない身体でした。



しかし幼少期、成長期には大人の倍ほどの食事を取っていましたが……成長に必要だった栄養は、姿を変える魔法を常時施していた為、強制的に魔力に変換されてしまいました。


肉体派の獣人らしくない、(この世界では)背の低い、細い身体はその為です。


そして城から逃げ出す為、空を飛ぶ事に決めた彼は魔法の訓練ばかりしていたので、剣術は児戯に等しく、体力も多くありません。


城を出た後も、手持ちの魔力を込めた宝石を売りながらでお金には困りませんでした。



魔法の扱いだけ、特級だった王子様。そんな彼でも……。









がりごりがりごりがりごりがりごり……。








「め、女神様〜!」

「こ、これでお参りに行けますぅ〜ありがたや〜ありがたや〜!」

「おう、お若いの。しっかり働けよ〜!」

「……………………………………分かっている。」

「……れ、レオ。私もて」

「ティアラはそいつらと居たらいい。」

「そ、そ、そんな真っ白な顔で言われても〜!!!」




がりごりがりごりがりごりがりごり……。




ここはリアーズ国、国境の岩山付近にある小さな村。


住んでいるのは、ほぼ老人。

女神信仰に厚い者が多く住んでいます。



「女神様本人に会えたからのぅ。ワシらに謝罪は不要じゃ!…………あんた、あのミスティー国の天才王子なんじゃろ?許す代わりに、この村の頼まれごとを聞いてくれ。」



そう言われ、望まれたのが……村から女神の山へと続く、整備された道。



若い頃ならいざ知らず、女神の山頂上に続く道は急な階段が多く、老人にはとても辛いらしい。



大きな街に行けば、直接火口へと向かうドラゴンタクシーもあるけれど。

なかなかの値段であり、わざわざ国境近くに住んでるのにドラゴンの為に街まで遠出するのも大変。


そもそも、歳を取るほど魔力量も減っていくので、身体強化の魔法もままならない。

ドラゴンの風圧に耐えられるかも怪しい。


だから年寄りでも登れるような、なだらかで歩きやすい直通の道を注文されたのです。



完成すれば、きっと若い信者も集まって村も大きく賑やかになるはずだから、と。



なので王子様は謝罪の旅しょっぱなから、朝も昼も夜も、とっても硬い女神様自慢(笑)の岩山を魔法で削って削って削りまくっていました。





国境付近にある町村は、ミスティー国・リアーズ国合わせて、あと六つ。




国から許可は取るから岩山に大きなトンネル開けて、とか。


ウチの町も、ここから近いあの岩山から女神の山頂上に行ける道が欲しい、とか。




暫く寝る間も惜しんで岩山を削る作業が続くのを、王子様は知らない。




――――――――――――――――――――――





[モテモテ]



「これも食え。」

「お、俺は別に食わなくてもうご」

「そんなんだからひょろっこいんじゃ!」

「そうじゃそうじゃ!」

「……女神様、お味はどうですかのう?」

「……うん!甘くて美味しい!皆の気持ちがこもってて嬉しいわ!…………ね、レオも食べよう?」

「……ティアラが、そう言うなら……。」

「ぅうゔ。ありがたや〜!」

「ぐすっ、ぁありがたやあぁ〜!」(涙)

「……ええいやめろっ!泣くなっ拝むな!跪くな!!!」

「もぐもぐもぐ……うふふっ。皆も、レオの事が好きになったのね。」

「ほっほっほっ。……ビラや城からの知らせがあった時は、女神様や人様に迷惑かける愚か者と思っとったが……あれはただ、口が悪いのがたまに傷な、真面目なひょろ男じゃ。」

「うむうむ。」

「これも食え。そして太るんじゃ。」

「山盛りの丼三つも食えねぇよ!!?」

「ほっほっほっ。王子と言うより天邪鬼と呼んだ方が良さそうじゃのぅ。」

「…………うん。レオ嬉しそう。」




じっちゃん・ばっちゃん連中にモテモテな旦那様を見つめる女神様は……慈愛に満ち溢れた優しい眼差しで、村長さん夫婦とまったりお昼休憩(と言う名のホットケーキの山攻略)してました。




誰にも不可能だと思われていた、国境の岩山をせっせと魔法で削っていく王子様と寄り添う女神様、二人の姿は信者達の目の保養になってもいました。



女神様に誘いを掛けようとする若者も居ましたが、じっちゃん・ばっちゃん達に追い払われました。


小柄なひょろ男だけど一途で男前、おまけに金持ち(石に魔力込めて売ったらまた小金持ちになった)な王子様を見つめる娘も居ました。

こちらは、女神様が「くすん。…………私から、レオ、取らにゃいで?」と半泣きで言われて自然に解散しました。



女の子も、美人の泣き顔には弱いらしいです(笑)



道の開通のお礼として、お漬物や焼き菓子、お酒なんかを貰ったりする未来まで、あと少し。






こうして、女神様夫婦はお土産持参でスティーア家に遊びに来てました。


悪霊瘴気無くなってから、本来の生真面目で凝り性な部分が出てきて……それはそれは歩きやすい、女神の山巡礼ロードが出来上がりました。



自主的に睡眠削って作業してるので、自分で自分の身体に鞭打つドM野郎って息子に言われてましたよ(笑)


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