ハッピーエンド
最終話となります。
「…………うん!これだけあれば分身体が作れるわ!」
ティアラちゃんの言葉に、一度レオン様の所に戻った私達。
王子様の溜め込んだ鉱石の半分……約百二十キロ分の石を砕いてしまい、掃除しながらでも庭が石だらけになってしまった。
……時刻も、もう夕方。結構疲れたなー。
仕事から戻ったクライスさんも、お庭で合流。
殿下も少し前から私達に混ざって砕く作業手伝ってもらって、何とか日が落ちる前に終わって良かった。
「ありがとうレオ!これで分身体を一つ作れるわ!」
「……鉱石半分で、一体分か。……それなら足りるな。」
「え?」
「おい、美津。」
「えっ!?……あ、は、はい。何?」
は、初めて王子様に名前呼ばれたからびっくりした。何やろ?
「お前は、母親を愛しているか?」
……真面目な顔で、急にどうしたん?
「………………そんなん、当たり前やん。ずっと好きや。」
「そうか。」
「???」
え、何?何の確認?
「……お前の母親、妖精の姿でまだ頭にくっ付いてるぞ。」
「は?」
王子様は、私の頭を指差し、言った。
…………くっ付く?頭に?何が…………え?
「「「「「「「「えええぇ!!?」」」」」」」」
その場に居た、ほぼ全員の叫びが一つになった。
王子様は平然と。クライスさんは、瞬きが異常に多かった。……いやそうちゃうよ!!?
私は自分の頭をわしゃわしゃしたが、妖精姿のお母ちゃんの感触も重みも無い。
自分の頭を指差しながら半泣きで皆を見ても、首を横に振られる。ですよね!?居ないよね!?
「どっ……なっ……い……っ!?」
(どうなってんの何言ってんの意味わからん)
「美津!落ち着いて!取り敢えず深呼吸してっ、ね!?」
「レオっどういう事!?美智子何処!?居ないわよ!?」
「……言っただろ?俺は死んだ魂が……幽霊ってのが見えるんだ。……姿が小さいのと、ティアラばっか見てて今まで気付かなかった。……美津の頭の上には、確かに妖精がくっ付いてる。どうして本来の姿である人間じゃなく、妖精型で魂が固定されてるか判らないが…………でもこれなら、ティアラの魔力で復活出来るかもな?」
「あ…………っ。」
「鉱石は、後半分ある。……だったら分身体、二つ作れるだろう、ティアラ。」
「…………ぅ、ゔん!ゔんっ!づぐれる!」
「何処に魔力を送るかは、俺が指示する。……お前、どうする?」
王子様は、表情変えずに、そんな事を私に聞いてくる。
皆、私の顔見てる。顔真っ赤にして号泣してる王様や、普段はクールなお姉様まで半泣きで。
まあ私なんか、既にボロ泣きやねんけど!
……どうする?どうするって、私に聞くんか?
背中を撫でる、旦那様の優しい手の感触。
こんな時やと、顔見なくても、心が読めなくても……気持ちって伝わる。
どうするかなんて……っそんな答え、一択やから!!!
――――――――――――――――――――――
二年後。
スティーア家敷地内、妖精の森にて。
現在一歳半の男の子と、黄色い妖精さん。
迷子です。
「うーん。……しゃーないな!」
「いやいや!しゃーないちゃうから!だからお母ちゃんとお父ちゃん待っとき言うたやろー?」
「……うー。ばっちゃいたら、へいきかなって?」
「あんな?……頼ってくれるんは、嬉しいねん。でもばっちゃはビリビリ得意でも、……迷子には、なるんやで?」
「あー。うー……だいじょぶよー。おむかえすぐ、すぐ!」
「…………うんうん来たらえーなー。……クルちゃんの顔で性格みっちゃんやと、何でこないに不安になるんやろ。……売り飛ばされへん様、やっぱ襲ってくる奴は初めっから容赦無しに黒いビリビリやな!」
「う?ビリビリ?……あ、とうちゃん!」
「クミル!こんな所まで……お母様、またですか?」
「……そう。道真っ直ぐやでーって言うてるのに、わざわざ草かき分けて道無き道を進もうとするわ。……これはもう、習性としか。」
「孫を野生動物扱いですか……クミル?どうして私やお母さんを待たないんですか?……怒られますよ?」
「うっ!……とうちゃ、クミル、おこる?……おこる?」
「…………どうしましょう、お母様。こんなに可愛いクミル、私怒れません!」
「鬼気迫る顔でアホな事言うな!!?」
「だって可愛いです!」
「それは認める!でも悪い事は叱ったって!」
「でも可愛いです!」
「あんたそれしか言えんのか!?」
「………………楽しそうやなー、皆。」
「あ!かあちゃん!」
「美津!大変です!クミルが可愛いです!」
「みっちゃん!元々アホなクルちゃんもっとアホなった!!!」
「……………………あー、うん。……私も、どっちも可愛いく見えるから許されると思いますお母ちゃん。」
「うひゃーゆるしゃれるー!」
「……私は美津に、可愛いじゃなくてカッコイイと呼ばれたいです。」
「……私の好みのタイプ、可愛くてカッコイイ人やから、……カッコイイだけじゃ物足りひんなー?」
「っ!ならこのままで!」
「うふふーとうちゃんかあいいねー!」
「っクミルの方が可愛いですよー!」
「……あーもう!しゃーない子らやな!好きにしぃ!」
「「「えへ!」」」
「親子三人で似た顔で笑うの禁止!……可愛いから禁止!」
美しい妖精の森を進むのは、仲睦まじく珍しい、黒髪の親子三人。その周りを飛び回る、黄色い服の小さな妖精。
妖精は時折色違いが増えて、楽しい茶会や食事会で、笑い声を森や城や家で響かせる。
いつか必ず、終わりも別れも訪れる。
でも、この笑い声は、笑顔はきっと、永遠に続く。
何処かで出逢う、誰かと誰かの絆のおかげで。
次の誰かの笑顔へと、繋がっていく筈だから。
「美津、もう皆待ってますかね?」
「……迷子さんがおったからな〜。どうかな〜?」
「「うっ。」」
「あははっ!一緒に謝ろうねぇ?」
「「はーい。」」
「ふふっ、行きましょう。美津!」
「うんっ!」
さあ、早く帰ろう。
皆の待ってる、笑顔溢れる私の居場所へ。
これにて続編の方も完結となりました。
番外編も予定してますが、年末に向けて忙しくなり始めるのでのんびり書き進めたいと思います。まあそれでも年内には投稿出来るとは思うのですが……予定は未定と言いますし。
気長に待って下さると嬉しいです。
こんなグダグダなお話にお付き合い下さり、本当にありがとうございました!
それでは!




