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人生初の美人の不機嫌2

本日二度目の投稿です。

砂吐きそうに甘いかもですが笑ってくれたら幸いです。


では。




久し振りに見た後ろ姿に、顔が赤くなる。

低く甘い声に甘やかされ、その輝く笑顔にクラクラしたのはいつだったか。


三十路になっても結婚に興味を持てなかった恋愛音痴だった私。


そんな私ですが、天国のお母様。今回は頑張りたいと思います。


とっても優しいあの人を、誰にも取られたくないって自分勝手に思ってしまったから。



ホンマ、女神様のゆうとおり。


私はいつのまにか、あの人が大好きになってた。





――――――――――――――――――――――




中庭は騎士に解放されてるようで、何人かで模擬戦をする者、一人黙々と素振りを続ける者と人それぞれで、クルーレさんは後者だった。


レオン様の仕事が長引いてしまったらしく、昼食まで時間の空いた私は中庭の木陰にあるベンチで休憩する事になった。

シャリティアさんもさっきまで一緒だったけど、レオン様付きのメイドに手伝いを頼まれ、動かない事を約束して私は一人お留守番。


お陰で久し振りにクルーレさん見れるし。レオン様に感謝やな。ご飯のお肉一切れあげよう。


そんなくだらない事考えながらクルーレさんの背中を眺めていたら、知り合いらしい騎士が近寄って来た。


赤土みたいな濃いめの赤髪、瞳の色は流石に分からんけど表情が嫌味ったらしいキザ男って所まで観察し(視力は両方2.0)そう言えば以前シャリティアさんが言ってた魔剣騎士団の団長の話を思い出した。


……もしかしなくてもあいつじゃね嫌味な団長さん。



――――――――――――――――――――――





ああ。今日は厄日だ。


「そう言うな。これでも俺はお前の心配をしているのさ。聖女付きの護衛から外された死神くんをな?」


魔剣騎士団、元団長オックス。

挑まれた模擬戦でいつも通りに戦い、いつも通りに勝っただけなのに根を持たれてしまった厄介な男。

突然実家に戻り病だと騒いでいたので団長職を降りてもらったらしい。王がニヤニヤしていたのも記憶に新しい。


……それにしてもやかましい。


聖女様の声でなら、いくらでも姦しく騒いでもらって構わないのだが。

表情と相まって、とても微笑ましいのに。


「お喋りの時間ならどうか他所で。ここは騎士達が己を磨く鍛錬の場。言葉など不要です。」

「はっ!ご立派な事だ。……人間の振りなどして、戦争でもなけりゃ死神も暇なんだな。」

「…………相手になって欲しいなら吝かではありません。どうぞ剣を抜いて下さい。」


私は今、どうやって姉をなだめて聖女様の側に戻ろうか考えるのに忙しいというのに。


「おいおい、護衛外されたのはお前が化け物だからであって、俺のせいじゃない。八つ当たりは良くないぞ!」

「………だまれ」


ああ聴きたくない。コレの言葉は不快なことこの上ない。

王の許可なく斬り捨てるのが駄目とは…騎士になった意味がないな。

腹立たしく、邪魔くさいモノを正当に処分できる権利を得る為に騎士になったというのに。


まぁ私の悪意を無視して話し続けるその根性は評価するべきか…。


「そりゃあ誰だって嫌だろうよ。自分の頭の中を覗かれ続けるんだ。剣を交えるたび。拳をぶつけ合うたび。恋人と唇を合わせ愛を囁くたび。ああ手を繋ぐことさえお前がするならば罪でしかない!」

「…………」



彼女は私を嫌うだろうか。

女神に選ばれた、伴侶である私であっても。


彼女に触れている間に考えていた気持ちも、記憶も、夢でさえ。

物心着く頃には身体の何処かが触れ合っていれば私にはその時相手の考えが全て見え、聞こえていた。


「まさかバレないと本気で思っていたのか?そうでもなけりゃ護衛を外されるわけ無いじゃないか。」

「……聖女様は、その様な方ではない。」

「お前が知ってるのは覗き見た聖女サマだ。自分の心を許可なく見られていたなどと知れば、そりゃあ慈悲深い聖女でも耐えられないってもんだろう!」


私は癇癪の絶えない子供時代を過ごし、物心つく頃には父に連れられ王と謁見。

そのまま城で暮らすことになった私は、父に捨てられたのだと思っていた。

十年前に嫁ぎ先から出戻りした姉が城にやって来るまで、ずっと。


「………解っている」


近寄るだけで真っ赤になる可愛らしい反応も、心の声と共に見ていると愛らしくて堪らない。


彼女はふくよかな身体をとても気にしていたが、腕の中に囲った時、暖かくふかふかとしていて私はとても気に入っている。


騎士として鍛錬も欠かさない為か、彼女が気にするほど重みを感じた事はない。


彼女はとても朗らかで、賑やかで、家族想いで……私が出会った中で一番正直で優しい人だ。


彼女の身体と心に触れていると、人間(ひと)とはそこまで悪いモノでは無いと思える。

憎まなくてもよいと、嫌味を気にするくらいなら笑おう、笑わせてあげる。そう言うように。

そう育てられている。


ほんの少し側を離れるだけで、私の心はまた黒く塗りつぶされるけれど。




女神が伴侶に私を選んだのだと、また彼女がそう思い至ってくれた事にどれ程歓喜した事か。


彼女と触れられる距離に居る存在は、私以外許さない。




「これから聖女は王に誘われ共に食事だ。俺は今日、これから王の護衛と交代だからもう行くが……これ以上聖女に嫌われたくなければお前はここでずっと剣を振り続け、」


「クルーレさーん!」

「「!!!」」


不快な男が全て言い終わる前に。

ゆっくりとこちらに向かう愛しく、もう既に懐かしくなった小柄な女性の姿があった。



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