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悲しみを、お腹の一番奥に押し込んだ状態ではありますが。

いつもの二人が帰って来ました。聖女様視点で進みます。


それでも宜しかったらどうぞ。



私の決意を知らない王子様は、寝そべったまま笑っていた。



「あっはは!……何とか?俺の纏った、瘴気を?…………知らないだろうから、教えてやる。俺の()()()()()()()()()()。……確かに、もう殆ど瘴気化してるがな。」

「しょ、瘴気化?」


…………な、何やろ。すっごい嫌な予感する。


「……人は死ぬと、思い出のある場所や人物、遺体の埋められた墓地などで暫く過ごした後に、消える。……あるべき場所で魂を洗われ、また産まれ直す為に。」



……輪廻転生と、同じ理屈やな。

ティアラちゃんをチラ見したら、彼女は私を見て小さく頷いた。ふむ……王子様の話は、本当らしい。



「だが、……愛する者に裏切られ、恨み辛みに塗れた魂は周囲の瘴気に取り込まれて、……普通の瘴気の様に、浄化もされずにこの世に在り続ける!もう、……二度と戻らない!…………ここに居る、俺の母様の様に。」


何とか動いた右腕で、黒いモヤ……瘴気を撫でる様に王子様は動かした。

そこにはきっと、彼の母様が居るのだろう。



……私の知ってる知識やと、それって地縛霊や悪霊に分類される感じやねんけど……ガチのオカルトやったか。



幽霊見える云々、私、全否定してたけど。

謝ります。信じなくて、ごめんなさい!



「……あんたの母様と今、会話出来んの?」

「……親父があの女を迎え入れてから……まともな受け答えが、出来なくなった。…………っ俺は、親父とは違う!俺はティアラだけ愛してる!他の女なんか要らない!ずっとずっと、ティアラだけ想って生きてきた!ティアラの為だけに!……裏切り者な親父と、俺は違う!!!」

「……レオナルド、貴方もしかして……レオン様に対抗意識があるだけで、女神の事は利用してるだけなんじゃありませんか?」

「!?」



クルーレさんの言葉に怒りなのか驚きなのか、王子様は地面に転がったままぶるぶる震えだした。



……芋虫感が出るから、やめた方が良いと思う。



思考が明後日に行きそうになった時、ティアラちゃんが私の隣にふよふよ浮かびながら近付いて来て……私の肩に触れた。少し、震えてる。



「……多分、クルーレの言う通りよ。私はレオに、……愛されてないわ。」

「……っティアラ、お前まで俺を信じないのか!?」

「……なら、レオは私のどこを気に入って、愛してくれたの?」

「そんなのっ……お前の全てだ!」

「あー、それは嘘やな。シャルーラさんの嘘吐き発言、正しいわ。」

「……ね。嘘吐き駄目です。」

「お前らは黙ってろ!てか俺の何を知ってるんだ!?」



……いや、だってなぁ?



「なぁクルーレさん。私の嫌な所、結構あるよな?」

「私以外に優しくする所とか私をほっといて小動物的な生き物に優しくする所とか女神に優しくすると」

「うん分かった。もういい良く分かった。だからティアラちゃんを睨むのはやめたって。怯えてるから。」


ティアラちゃん、女神様やのに……そんな八つ当たり理不尽過ぎる。せっかく泣き止んでたのにもう半泣きなってるやん。


「だってこの前、美津が私の事嫌がって、女神と……ぐす。」

「ん?……それ、私が夜ねちっこいから疲れたー言うて、スティーアさん家でお母ちゃんとティアラちゃんと一回一緒に寝たやつ?……何、それまだ根に持ってんの?……心狭い男やなー。うざっ!」

「…………美津、クルーレが地面に這いつくばってる。」

「ええよ。結界(しごと)しながらやし、反省させとき!……あれなんの話やったっけ?」

「……全部が好きって言うのは、嘘かどうかの話。」

「……ああ!そりゃ嘘やって。クルーレさんでも、こんだけ私に対してムカつく所あるって言うてんのに。全部好きはナイナイ。それ幻想!」



恋愛初心者やった私も、びっくりした。

好きな人の全てが愛しいって言うのは、流石に無かった。

どうしたって他人やからな。出てくるから、違い。



「……なっ……なっ……!?」

「……例え嫌な所あっても、それでも好きやーって思うから、皆、我慢したりすんの。まあ、あんまり我慢したらしんどくなるからなー。出来る所と無理な所の境目二人で話し合って、……適度に妥協して一緒に生活すんのが、普通やと思うよ?」



大体こんなもんやろーで終わらす大雑把なお母ちゃんと、しっかり最後まで確認する生真面目なお父ちゃん。

妥協していかないと、夫婦生活円満にはならんのです。うん。



「…………そ、そんなの、本当の愛じゃない!!!」



納得出来ない王子様は、耳と尻尾をぴんと立たせて私を睨みつけてくる。

……何となく、分かった。王子様がティアラちゃんにこだわった理由。



「……王子様は、夢見過ぎたんやなぁ。……絶対に裏切らない、無償の愛情を与える女神のティアラちゃんやったから……安心して愛せたんか?」

「!……ち、違う……お、俺は本当に!」

「……もう良いのよ、美津。……初めから、何となくそんな気がしていたの。……だから、証が欲しくて……愛されてる、証が欲しくて……子供を望んだの。レオが理想にしてる、望んだ姿をした、子供が欲しいって。」

「…………私が、レオナルドの理想?」



何とか復活したクルーレさんは、またおんぶおばけの様に私にへばり付きながらティアラちゃんに聞いていた。ぅう……さっきより、重い。


王子様にちょっかいかけられない様に、壁みたいに結界施してくれてるのは嬉しいねんけど。でも重い。



「……私はそう願いながら、眠っていたの。レオが望む、理想の子になる様にって。……そして産まれたのが、クルーレ。貴方だった。」

「……俺の、理想……?」



王子様自身、信じられないみたいやけど。

でも……そう言われてみれば、確かにそうかも知れんな。



「自分の惚れた女に似てる顔で、もやしな男の子の理想みたいな高身長で、力が強く逞しくて……でもレオン様みたいなむきむきゴリラじゃないスマートスタイルで……愛する人へは、浮気なんて考えられないくらい病的な一途で……自分の身を守れる様に、悪者がすぐ見付けられる様に……心が見えたりしてる辺り、その通りじゃね?」



自分を偽り続けた王子様にとって、周りは敵だらけみたいなもんやった筈。

相手の性格が……心が、分かったら。敵も味方もすぐに分かるって、どっかで思ってたんちゃう?



私の言葉に、王子様はクルーレさんを見つめていた。

真っ直ぐ、さっきまでの殺意に塗れた視線でもなくて……毒気のない、ぼんやりした顔で。


でもそれも一瞬で、びくりと何かに怯える様に身体を震わせた王子様は、急に頭を抱え苦しみだした。



「うっ…………うぅ……ごめ、……母様……、」

「ん?」



……母様?でもさっき、会話は出来ないって……?



「……なあ。ティアラちゃんには、あの黒いモヤが王子様の母様に見えてんの?」

「……ううん。死者の魂……命の巡りを管理する神は、別に居るの。管轄が違うから、私にも見えないわ。……美智子の事が分かったのも、魔力を与えた後の妖精姿だったから。」

「……その神様に、聞いてみるってのは?」

「う、うーん。この世界を造った時以来、会ってないし……直接会いに行くのも、難しいわ。だって死なないと会えないもの。」

「うんそりゃ無理やな!」


私、まだ死にたくありません。

だからクルーレさん。私死ぬ気全くもって無いので。

羽交締めはやめて。首苦しい。



王子様の瘴気をどうするべきか、お姉様達も交えて相談し始めた時に、頭上でぱたぱたと鳥の羽ばたく音が聞こえて……私の頭に、軽い衝撃が。



「え?」



なんか、若干懐かしい感覚。妖精姿のお母ちゃんとかティアラちゃん……乗っけてるのと同じ感覚やねんけど?



「こらっ、美津の頭から離れろ!」

「く、くわっ、くわ!」

「黒い……鳥?随分丸っこいけど、上手に飛べる雛なのかな?」

「…………このタイミングで、ただの鳥がやって来る訳がありませんわ。……どうなんですか、女神様?」

「え?えっと…………あら?見た事ない鳥ね?」

「え?」




この世界創ったの、ティアラちゃんやんな?

…………なのに、知らん鳥って居んの?









「くわ!く、くわっ、…………んんっ!……知らんのは、当たり前じゃ!我らは()()()()()()()()()()()()()()こちらに来たのだからな!」

「「「「「…………え!?」」」」」




何と私の頭の上の鳥、喋りました。






なんという事でしょう。お母ちゃん。


私が知らないだけで……異世界でなくても、日本にも摩訶不思議あったらしいよ!!?








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