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新婚さんは前途多難2



引き続き、性的表現があります。

ヤンデルさんがフルスロットルな気がしなくもないです。

あれ、みっちゃんどったの?な描写もあります。


それでも宜しかったらどうぞ。




不運にもその場に居て、クルーレさんの言葉を聞いてしまったお医者様とおかん達も、顔色が蒼褪めてからのドン引き状態で固まったままでした。



……そうまでして、私を手放したくないクルーレさんに、ちょっと嬉しいなぁと思った私の方が……歪んでいて、ドン引きされるべき人間の様な気がする。


くっついたままなので、私の考えが少し変わった事にも気付いたクルーレさんは、腕から力を抜いて、私のお腹に擦り寄って甘えてきた。



「……ずっと、いっしょにいてくださぃ。……さわるのも、かむのも、……ちょっとに、しますから……がまん、いやじゃないから、だから、……おねがい、……ひとりに、しないで?」


ぐりぐりと私のお腹に頭を擦り付けてから、潤んだ瞳での上目遣い。


…………ズルイ。卑怯や。

甘えっ子状態の泣き顔、めっちゃ可愛いねんけど。

さっきの獣じみた雰囲気とのギャップが凄まじいんやけど。


……私が、クルーレさんの甘えてる顔に弱いって、……そりゃ覗き放題やから知ってるよなー。


「……でも、クルーレさん、子供いっぱいって……。」


それでも私が素直にうん、と言えないのは、お姫様が帰って来て、クルーレさんが色々教えてくれた日に……そういう話、してたからであって。


私、もうお腹の子に、きょうだい作ってあげられへんもん。……お母ちゃん、失格なんやもん。



「ぐすっ…………みつが、いなくなるなら……こども、いらないです。みつがいるから、こども、ほしいっておもって……だから……だから……。」



そう言ってクルーレさんは、小さい子の様に嫌々と首を振り続け。


結局その場は、私が折れる形で話は終わった。




こうして、赤ちゃんが産まれた後の夫婦の触れ合いを、私達は制限する事に決まりました。




「……はあ。」



ため息しか出てこない。

……避妊さえすれば、問題ないってお医者様は言ってくれたけど。

とっても怖がりなこの旦那様が、私の命がちょっとでも脅かされる事をするわけが無い。


子供が産まれたら……いや、もっと早く、臨月になったら流石に出来ないだろうから。

あと何ヶ月がしたら、私にはそういう意味で触らなくなる。

そうなったら……………………。



「…………。」



私のモヤモヤした気持ちに、勿論気付いている旦那様。

おかんやお姉様が側に居る時は、なんとか平静を保っていたけど。


でも、その夜。

寝る時間になると、私をベットに引きずり込み、抱き締めて離さなくなった。


……別にえっちい事は、してないです。


多分やけど、眠っている間に私が逃げ出さない様に見張るつもり……なんかな?

見つめ合う様に向き合った状態で抱き締めたまま、視線も腕も絶対に離さないから。


腕と背中をがっちり捕まえられてるので、寝返りも許されない私の身体は、このままでは朝までにカチカチ確定でしょう。


「…………もう、逃げないよ?」

「信じない。」


おい即答かい!


「……だって今も、別れた方が良いって、思ってる。」


子供の様な話し方で、クルーレさんは、私の心の声を口にする。


ベットで甘えてくる時だけ現れる、敬語じゃないクルーレさんを私は気に入っているけど。

甘えてくるクルーレさんが可愛くて、出来るだけ我儘を聞いてあげてるけど。



……今日だけは、クルーレさんの我儘を聞きたくない。



「……その方が、クルーレさんの心も身体も健康的かなって。」


私が視線を逸らしながら返事をすれば。


「…………嘘。そんな事、思ってない。」


クルーレさんは、笑っていた。

嬉しそうに、楽しそうに。……私の顔を、心を覗いて、笑ってる。


「…………私に、捨てられるのが、そんなに怖い?」

「…………っ。」


身体の動かせない今の私は、唇を噛みしめるくらいしか悔しさを表現出来ない。


全部、バレてる。

私の恥ずかしくて堪らない、嫉妬まみれな、今の心。


他の女の人の所に行くかもしれないって、そんな所見るくらいなら、……捨てられるくらいなら、先に逃げようって。


心の中で泣いて怯えてた私を見て、クルーレさんは、笑ってる。



「…………大丈夫。逃げても、何処までだって追いかけて、捕まえてあげる。……今から、私がどんなに美津を愛してるか分かるまで、……いや、違うな。くだらない事考えなくて済む様に、私の事だけで頭の中いっぱいになる様に……大事に、大事に可愛がってあげる。……嬉しい?」

「…………ぐす。ん。」

(こくん)



本当は。

恐ろしい事を簡単に口にして、確実に実行出来るこの人から。


逃げた方が良いのかもしれないけど。



「…………ふふ、可愛いね?逃げないの?」

「あぅ…、」

「…………ほら、口開けて。キス出来ないでしょう?」

「……んっん!」



……うん、逃げない。


クルーレさんが、()()私を好きって言ってくれるなら。ここに居る。くっ付いてる。


……ごめんな?私はビビリで怖がりやから、どうしても疑ってまうの。本当なんかなって。……勘違いやったって、言われるんちゃうかなって。


だって本当なら、女神様の魔法が解かれて、心が自由になったクルーレさんは()()を取り戻すはずやったのに。



なのに、クルーレさんは、私を可愛いって、今もキスしてくれる。

……恥ずかしくて、嬉しくて、涙が止まらない。



……私の事を好きで好きで堪らないと口にする、とても綺麗でかっこいいのに、可愛い所もあって、……ちょっと(いびつ)なこの人の、側に居たい。



どんな形でも良い。

夫婦じゃなくてもええから。


時々でいい。

私を無視しないで、その綺麗な瞳で見てくれるなら。



きっと私は、それだけでしあわせ。



クルーレさんの綺麗な顔を見ながらそんな事ばかり考えている私を、クルーレさんは口付けながら笑ってる。


…………人の、一世一代の告白笑うやなんて。鬼ー悪魔ーいや死神めー。なんやねん調子乗りやがって笑うなこんちくしょーめ。けっ!



「…っ…………ふふっ、ふ!ごめん。そんなに美津が怖がるなんて思わなかったから。……大丈夫。私は、美津以外に興味も興奮もしない…………でも、うん。美津にも分かりやすい様に、子供が産まれてひと段落ついたら、私が去勢しましょうか。」

「……………………へ?きょ?」


きょせいって……虚勢?巨星?……いや、まさか、……去勢?


「うん、その去勢。…………そうしたら、初めに気にしてた、他の女の所に行くなんて事考えなくて良いでしょ?だって、無いんだから。」


それなら、美津も安心でしょ?

私から離れなくて、良いでしょ?


にっこり笑いながら、男性にとって一番大事な所を取っちまおうとしているクルーレさん。



…………あれ?去勢って確か、ペットや家畜に施したりするやつやんな?え?……いやいや普通、人にせえへんよっ!?あかんやつやからそれ!!!



「ふふふ……年に何件か、獣人が人間相手に、傷害事件を起こすんですが、どうしてだと思います?」


甘えモードから普通に戻ったクルーレさんが、私を抱き起こして膝の上に乗せ、突然そんな事を聞いてきた。

去勢話から、すごい飛んだ。


「…………ど、どうして?」


とりあえず聞いてみると、クルーレさんは私と目を合わせ、にっこりと微笑んでくる。


何だろう。笑顔が怖い。


「獣人の事をあまり知らない人間が、獣人の妻や夫…………番いに、許可なく安易に触れて、殺されかけるんです。大人も、子供も、老人も、関係なく。……勿論私は、そんな事しないですよ?」

「……しない、の?」


……勿論私も、血みどろスプラッタを望んでないし。でもそんなはっきり、興味無いしーみたいな事、言わんでも……ぐすっ。

涙に濡れたほっぺをべろりと舐めやがったクルーレさんは、にっこり笑顔のまま。

……何やねん。馬鹿にして。スリスリしたって、騙されへんもん!けっ!



「ふふっ!やっぱり勘違いするんですね。……泣かなくていいんですよ?私が()()()のは、美津の気持ちが、やっと判ったからなのに。」

「???」

「…………ふふふ、知らなかったなぁ。美津の好みのタイプが、私だなんて。知らなかった……本当に、……すごく、嬉しい。」

「は、はあっ!?ちょ、なんでそんな話に!?ま、待たんかっ!?」

「待たない。…………番いに狂ってる獣人程、手に負えないの。覚えようね、美津!」


膝に乗せられていた私はベットに押し付けられ。

私はうつ伏せ、背中にはクルーレさんが乗った状態。

腕も掴まれて、背中に体重も乗せられて、身動ぐ事も出来ない。

ただの獲物に成り下がった私の耳を甘噛みしながら、クルーレさんは笑い続けていた。



「ふふ……愛してるよ。他の女なんか、要らない。美津が側に居てくれるなら、私を望んでくれるなら、去勢だって私は何の問題もない。……それに、私が怖くなって逃げても、必ず捕まえて、痛くないお仕置きだけして、……私の()()()らしく、私の事しか認識出来ない様に頭も身体もぐちゃぐちゃにしてあげる……ね、嬉しい?」

「……ゔう…………………ぐすっ、……ぅん、うれしぃ。」


……クルーレさんは、絶対に私の事、嫌いにならんの?

だから、私の心の隅っこにあったお願い、聞いてくれんの?



「……うん。何でもしてあげる。どんな願いでも、私が叶えてあげる。だから、私と二人死んでしまうまで、……ずっと一緒に生きて、美津。もう、淋しくないよ?」



クルーレさんのその言葉で、幼い頃から感じていた、頭の中にあった小さな違和感が、無くなった様な気がした。





そしてこの日。

私は色々……本当に色々されて、させられての一夜を過ごしました。



夜が明けてからは、いつも通りの日常と呼べるでしょう。


皆でご飯を、おやつを食べて、

お姫様にもおせっかい焼いて。

とても楽しい、賑やかな日常。


日が昇っていて、皆でわちゃわちゃしている時だけは。




昼は、何かあると私に泣いて縋ってくる様な旦那様。

夜は、何かあると私を泣かせて縋らせる様な旦那様。




旦那様は、如何あっても私を捨てるつもりは無いらしい。


……それでもビビリな私は、どうしても、ふとした瞬間不安になってしまう時があって。


そんな時は決まって、夜、クルーレさんにお仕置きされて、色々と再確認させられての繰り返し。


……最近は開き直って「こんだけ無体働かれても許す私って、結構良妻じゃね?」と軽口言えるくらいのメンタルを手に入れました。


……皆は私がクルーレさんを躾てるって思ってるみたいやけど。躾けられてるの、私じゃね?



……まあ、どうにかクルーレさんの去勢だけは、止めてあげたい。本人はする気満々で、暇な時お休みの時に医学書読んでる姿が目撃される様になりましたが。

赤ちゃんを自分の手で取り上げる気なのでは、とそんな憶測まで流れているらしい。



……ああ。誰か教えて下さい。


私は一体、誰に相談すれば良いのでしょう?


だって私。

撲殺死体(お姉様作)も全焼死体(お母ちゃん作)も、見たくありません(泣)



答えが出ないまま、今日も旦那様の狂った様な重苦しい愛情に、溺れて泣いてる私です。




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