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番外編[聖女と黒騎士のお散歩デート]



こちらの番外編は、本編[嵐の前]でちらっとでた、腕組みお散歩デート話になります。


なので黒騎士様は、感想下さったしろ様命名のヤンデレをこえたヤンデルさんであり、聖女様は新婚さんの一番楽しい時期のお話です。


私にしたらゲロ甘な仕上がりになってます。

砂吐きそうなお方はどうか、近所の公園にまき散らしてやってください。多分怒られます( ̄∇ ̄)



……冗談はさておき。

死を覚悟しちゃってる男と、未来を夢見る女という斬新なカップルをどうか、見守ってやってください。








「美津、私とデートしましょう?」

「ぶっふぉ」

「あ」



新婚生活五日目の朝食の中。

私を膝に乗せたクルーレさんが味噌汁茶碗片手にキラキラ笑顔でそんな事言うので、ちょっと吹き出した。……服汚してごめんなさい、シャリティアさん。



そして、甲斐甲斐しくハンカチで口元を拭われ中の私。

自分で口元拭く事さえ許されない私は大人しくクルーレさんに身を任せる。

抵抗したら、羞恥心が何倍にも膨れて返ってくるので動けない。…………人前で顔舐められるの、私もう嫌っす。


「ふふ、ごめんなさい。どうも美津相手だとそうしたくなって……本能が疼くというか。」

「……ああ。マーキングな。」


色々と察してしまったお母ちゃんのツッコミが、ぐっさりぶっさり刺さったらしい旦那様。

……お母ちゃんや。そんな可哀想な目で私を……いやクルーレさん見るのやめたって。躾のなってない犬やなぁみたいな目、やめたって。


クルーレさん、しょんぼりしちまったので。

犬扱いは、お願いだからやめたって。

(美津は気付かない。そう考えてしまった美津に対してのしょんぼりなのだと)


八つ当たりの様に頭に頬を擦り付けてくるクルーレさんに、私は溜息しか出ない。だってさ。



「……いや、まあ私もう奥さんやからそんな主張せんでも……うん。この暑い中、薄い生地とはいえ長そでハイネックの服は辛いんで主張を加減して頂いたら嬉しいです!お出掛けするなら特に!」



本日も、私の首や腕や足は皆様には見せられない仕様になっとります。かみかみとちゅっちゅの痕、消すの禁止なんです。マジで恥ずい。



日本では初夏だった季節は、ミスティリア(こちら)に訪れた時は晩春くらいだったそうです。まあ私は殆ど寝てたけど。

四季も夏は暑く冬は寒い日本とほぼ同じで、今は日本にいた頃と同じ夏。湿気特有の蒸し蒸し感は無いけど、とにかく暑い。

てか日差しが強い!超ギンギラギンで、日本の異常気象並みの日差し!!!


お出掛け嬉しいけど、デートって誘われた事も行った事も無いからすっげえ行きたいけど!外暑い!

休日はお家の布団にゴロゴロしたい派の私にはツライ暑さです!!!



「………いつも暑い暑いと言う割にはクルーレの膝からは降りようとなさいませんよね、美津様。」

「うん。………クルちゃんも分かってんやろなぁすっごいにやにやしてる。ラブラブやな。」

「ああ本当に、お嫁に来てくれたのが美津様で良かったですわ!」



そんな会話をおかんとしながら、お出掛け用の服に暑さ対策魔法を施すシャリティアさんが居たそうな。万能メイド長様、素敵!



――――――――――――――――――――――




「おお〜!全然ちゃうし!シャリティアさんありがとう!」

「楽しんで来てくださいね?」

「お土産は気にせんでも良いよ〜。」

「……それは遠回しの要求やね。まあ買ってくる予定やったから楽しみしとき〜!」




デートのお誘いを受けた朝食の後、クルーレさんから回収された私はお母ちゃんに連れられお着替えに。

風と水の魔法を掛け合わせて適度にひんやり涼しい、シャリティアさんお手製の長そでハイネックのワンピースでのお出掛けとなりました。


城下町でぶらぶらお散歩して、そのまま外でお昼ご飯食べようやって!

マジか。家族と友達、それに仕事場での飲み会以外って初めてやねんけど!!!



……服を着替えながら、しみじみと思う。

クルーレさんが化粧品の匂い苦手で、本当に良かった。普段からノーメイクで生活の私には助かります。



……元々、私は化粧品独特のあの匂いが苦手で。お母ちゃんも苦手やから、これも遺伝なんかな?


人から香るのも昔は駄目でしたが、今は慣れて平気になってます。多分電車通勤のおかげ。

……鼻が慣れなかったら、私はきっと今ここに居ない(泣)


まあ最近のは大分淡い香りの商品も出ていましたが、あまり手が伸びませんでした。結構な値段するし。アラサーまでほぼノーメイクやったから、もういいかなって。

むしろ化粧しなくていい職場を探し、行き着いたのが工場とかスーパーの加工する部門。上から下まで白いツナギと帽子とマスク。

ほぼ顔隠れるから化粧関係ないし。マスクだとファンデハゲるから、バッチリメイクしてる女性陣も少なかったし。


みんな一緒で怖くない!


まあ、流石に自分の結婚式ではしてもらったけど!


獣人との混血の為匂いに敏感だったらしいクルーレさんは、どんな化粧品も鼻に付くらしいです。……本当に良かった。一安心。

(美津は知らない。実は顔を舐めた時に変な味がするから黒騎士様は結婚式から化粧品が嫌いなんだと。お姉様とお母ちゃんは知っている)



そんな事を考えながら歩いていれば、もう外に繋がる城門が見えてきた。リアーズのお城はミスティーに比べて少し小さいらしく、中庭は存在せず城門と城の間に庭園があるだけ。


ミスティーは中庭と城門前の広場両方あったし、ここよりもずっと広い。ただ細やかな手入れは、リアーズの方がまめっぽい。王様の性格の違いだな、これは。


私は城門前で待つ人影に気付き、こけない様にと用意されたヒールの低い赤のストラップ付きの黒いパンプスで小走りする。


「クルーレさーん!ごめんね待った!?」

「ふふっ、走らなくても大丈夫ですよ?」


本日私に用意されたのは、ハイネック部分は白いブラウス風。それ以外はパステルカラー特有の薄い色合いの水色膝下丈のワンピースで、襟元や袖口には大人しめの小花柄を白と黄色味の強いパステルオレンジで刺繍されている。


日差しが強いからとツバの広い麦わら帽子も忘れずに被らされ、頭が暑苦しくない様に、と私の右肩に垂れる様にお母ちゃんが赤いリボンで三つ編みまで、その小さい身体でせっせと編んでくれました。



赤とかピンクの女の子らしい色が苦手な私は、帽子や髪ゴムなどの小物以外の服は日本にいた頃から白・黒・紺色の三択でした。

まさに、女子力皆無。



……きっとおかん情報やな。

私が嫌がらんギリギリの服選ぶ辺り、流石ですお姉様。



待っていたクルーレさんも普段着扱いしてる軍服っぽい騎士服ではなく、お着替えされてました。


七分袖の白いポロシャツに緑がかった濃いカーキ色のカーゴパンツ。靴はごつい黒のショートブーツ。

服とか靴とか私詳しくないけど、あの靴絶対いいヤツ。絶対高い。おまけに攻撃力も高そう。ゴツゴツ具合がカッコいいブーツです。


こちらも魔法を施してもらったらしく、涼しく快適だそうです。うん夏場のブーツは絶対ヤバいもんね!



そして、実はクルーレさん。


なんとこちらも、私と一緒で選ぶ服の色が同じ三択しか無かったと驚きの共通点が発覚。私だけでなくシャリティアさんも知らなかったそうで、急いで使えそうな服をパパッと選びにお部屋に走っていきました。


クルーレさんとは同じ部屋で寝泊まりしてますが、仕事部屋みたいな小部屋(広いけど小部屋扱い)が隣接していてそちらに男物の服が大量に詰め込まれています。お姉様はそれを発掘に行きました。


仕事着しか持ってこなかった筈のクルーレさん。なんでリアーズに、そんな選べる程の普段着が大量にあるのかというと。

靴とか服とか、実は全部王太子殿下の結婚祝いの贈り物なんです。


実家から預けられた時からの付き合いなので、クルーレさんの服の趣味を勿論知っていた殿下。

こちらも嫌がらないだろうギリギリを見極めた服を渡し、「これで聖女と遊びにでも行け。女性は繊細でな、部屋に籠るだけじゃ身体目当てかと思われるぞ?」とか言ってたそうです。



いやいや。王太子殿下。

身体目当てにしてもらえるほど、私はナイスバディでは無いっす。ただのボン・ボン・ボンです。


そこまでの自惚れ、無理!(真偽の程は本編にて/笑)



ミスティーは民族衣装的な雰囲気の洋服が多く、リアーズは若者受けのさらりとしたデザインの洋服が多いそうです。

デートで使って欲しかったので、リアーズに来てから調達した、とミスティーに帰る前にこっそり教えてもらいました。


それが、昨日の話。

いやー殿下の言う事はちゃんと聞くんですよね、クルーレさん。去り際の殿下にめっちゃ睨み効かせてたけど。

レオン様までぶるぶる震えてたけど。


それでも殿下に最後、お礼言ってた。殿下感激して半泣きやったもん。クルーレさんめっちゃ素直。

レオン様相手する時とえらい違いやなぁ。



ああ、私からもお礼を言わせて、殿下!本当に感謝します。だって普通に雑誌で表紙飾るレベルのモデルさんが目の前に居るんですよ!神々しいです!眼福です!



お姉様と王太子殿下、グッジョブです!!!



にやにやしてしまう私の横に、いつのまにか色白ほっぺを桃色にしたクルーレさんが寄って来て、少し屈みながら左手をそっと握ってくれました。


あ、欲望まみれの本音がダダ漏れなんですが。引かない?引かれたらショックでしばらく立ち直れないけど!?



「そんな事、思いもしませんよ。……その。えっと、美津にお願いがあって……。」

「へっ?……何?」


どうしたの?改まって?


「あ、の………………………………私と腕、組んでくれます?」


夢だったんです、仲良く隣り合って街中歩くの、と。

かすれ気味の小さな声で言うクルーレさん。

おまけに私の手を、ちょいちょいとか弱い力で引く。




良い子を目指してる小さな子供が「ぼく、あれほしいなぁ」って言いたいけど、お母ちゃんを困らせたくなくて、でも欲しいからって悩んで悩んで掴んでた服を弱い力でちょっとだけ引っ張ってる、あれの感じ。




……何それマジあざとい。


……何この人天使だったのか。


……いやいや何マジかあんた可愛すぎか!!?



「こ、こ、こおでよろしいでしゅか!?」


あまりの破壊力に若干滑舌悪くしながらも、私は繋いでいた手をほどいてクルーレさんの腕に飛びついた。


身長差が40センチ程あるので、私が縋り付いてる格好ですが。

縋り付いた途端、顔をくしゃりと崩して笑うクルーレさん。


……あれ、おかしいな。クルーレさんに触られると、最近では慣れて安心する様になってしまったのに。


あ、勿論夜寝る部屋では別ですが!(察して下さい)


なんか、なんか、変に緊張する。心臓痛い。


しかもクルーレさん、屈んだ状態でずっと私と目を合わせてくる。さっきまですごい笑顔だったのに、なんでか今はぼんやりしてるみたいな表情で……なんか、その顔見てると心臓おかしい。壊れそうなくらい動悸が激しい。


騎士服と違う服のせいなのか、クルーレさんの雰囲気もいつもと違う。


別にいつも、女性みたいとは思った事無いけど。

それでもお城に居る時は、上品や気品って言葉が似合う姿と空気感が確かにあった。



軍服とかメイドとか制服のある仕事って、その服着てるとどうしても仕事モード抜けきらないって人も居るらしいし。そのせいかな?



なんか、うん。……普通の、男の人みたい。




「……普通の男ですよ。」



クルーレさんが顔を寄せながら小さく、低く掠れた声で私の耳たぶに唇触れさせながらそんな事言うから。

少し赤いだろうくらいだった私の顔が、茹でたタコにまで進化してしまった。



「貴女の前では、騎士である事など、関係ない。私はただの男で、……貴女の夫です。」



私の顔がタコなら、クルーレさんのほっぺの色も桃から林檎に進化していた。



「だから美津も、今は聖女などと、役割を忘れて下さい。……貴女は、ただの女で、私だけの妻だ。」

「…………………………………………………はぃ。」



私はもう顔を上げられなくて、クルーレさんの腕に頬を寄せて大人しくするしか術が思い付きません。


クルーレさんがいつも私の頭に頬擦りするみたいに頬を腕に擦り付けると、帽子の下に手を差し込まれて、優しく、耳から後頭部にかけて撫でられる。


とても擽ったくて、でもなんだか嬉しくて、勝手に目も潤んでしまって。思わず顔を上げてしまう。


「……………その表情(かお)、可愛い。」

「……ぁ、ぁりがと。」


いつもは聞き流すか照れて騒いでしまう旦那様のこの言葉に、私は多分、初めて、素直にお礼を言えた。


















「ねぇ、知ってる?あの子らまだ城から一歩も外に出てないんやで?」

「………城門、一歩も出てないですわね。」

「門番の子ら、顔色やばいねんけど。照れすぎて赤いんかバカップル見て怒ってんのか分からんねんけど。めっちゃブルブル振動してんねんけど。助けるべき?」

「……城を守るのが彼らの仕事なのでそこは放置で構いませんわ。ただ、城に出入りして下さる卸売りの者が不憫です。あんなすぐ横を通っても気付かないなんて……ドラゴンごと通ってますのに。」



借りている客室が二階にあり、城門に面している窓から見送ろうと様子を見ていたお母ちゃんとお姉様。

動かない二人を不審に思い城門前の庭園へ。


そこで一部始終鑑賞されていたなんて。



知らない私達でした。



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