[拷問姫の憂鬱/裏事情]
ほんとのネタバラシ。
女性陣が食後のティータイム(一部、争奪戦に発展)を楽しむ中。
一人、部屋を出た私は出入り口にへばり付く大男二人を回収して、ある程度進んだ廊下にどちらも転がした。
全く、この二人は。意味を分かっているのか。
「それで?何をしているのですか?」
「「うっ」」
「……二人が頼んだのでしょう?姫の再教育。今出てきたら意味がありませんよ?」
「「うぅぅっ」」
「血縁ある二人に冷遇され、傷付いたその心を、己が傷付けたと思った相手の純粋な、悪意のない優しさに触れさせ、癒しを感じさせる。美津とお母様は女、子供に優しいですからね。適任だと二人も仰いましたよね?」
「「…………はい。」」
「今現れたら、効果が半減しますよ?良いんですか?美津までとはいかなくても、『自分のされて嫌なことはしない』、優しい姫になる可能性が無くも、」
「も、もう邪魔しない!」
「近付かない様にする!だから、頼む!」
「……まあ。私にも責任がありますので、出来ることはしますよ。二人は引き続き、美津達との接触は控える様に。」
「わ、分かっている。」
「俺と父上は、オリヴィエを見限っている最中だからな。仕事以外では近寄らんさ。」
「ええ。……美津達は知らない状態が良いんです。どんなに罪深い相手でも、可哀想だからと、ただそれだけで優しくしようとする、……偽善にも見えてしまうあの心が、何よりも尊いのだから。」
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オリヴィエが自室に戻った後の、美津達の部屋。
「…………。」
ふよふよふよふよ………。
「あ、クルちゃんおったー?」
「……お仕事中だったから、声かけれなかったの。」
「そっかー。」
「………………マカロン、これも食べて良い?」
「あーそれ、クルーレさんのやから置いといたって!こっちどーぞ。」
「うん。……もぐもぐ。美味しい。」
(にぱー)
「…………なあ、美津。女神様なんか、おやつ食べるたんびに幼児帰りしてない?大丈夫なんか?」
「う、うん。私も気になってんねんけど……害は無いみたいやし。暫く経ったらケロッとしてるし大丈夫と思うねんけど。……お酒に酔ってる人に見えなくもないから、まぁ次からは量に気ぃ付けるわ。」
「……それが宜しいと思いますわ。」
「もぐもぐ……♪」
今まで、例外はあれど出来るだけ人とは関わらず、交わらずにこっそり存在してきた女神様。
それが、今。大好きな愛子と、優しい人に囲まれて幸せに浸ってる状態。
クルーレを傷付けたオリヴィエは、好きではないけれど。
今までだったら焼いたり、切り刻んだり、焦がしたりと色々していたかもしれないけど。
「…………おやつが貰えないのは嫌だから、我慢するわ。」
「んー?なんか言った?」
「もぐもぐもぐもぐ……♪」
「気のせい……?」
哀れなお姫様に少しくらい、幸せのおすそ分けしても良いかと思うくらいには。女神様も考えられるくらい、落ち着いた様です。
決して、食欲の為では、無い……はず。
こうして、しばらくの間。
姫の無事が確定しました。
レオン様の迫真の演技。その源は、
『ちゃんと出来ずに姫が美津に対して何かやらかしたら、私はナニをするのでしょうね?……楽しみですか?』
と暗黒背負って微笑む、黒騎士様のおかげです。
姫の部屋を出た後のレオン様の顔は、『見るに耐えない熊』だったとの感想を、通りがかったメイドから証言を頂きました。
殿下は妹の為に、レオン様の練習に必死に付き合いました。ちゃんと愛されてるよ!良かったね!
オチは、ある意味安定の女神様で( ̄▽ ̄)




