番外編[女神様とマカロン]
番外編二個目は女神様で。
こちらも小話ちっくなものとなってます。
それでも宜しければとうぞ。
ある日の昼食後。ミスティー城内、美津達の寝泊まりしている客室内。
(じーーーーーーー。)
「………。」
(じーーーーーーー。)
「………。」
(じーーーーーーー。)
「ええい言いたいことあるなら言えや鬱陶しい!!!」
「気にしないで。私は空気と思っていて。」
「空気に見つめられる私の気持ちにならんかいっ!」
「分からないわ。だから見てるの。」
「何のとんちやそれ〜〜っ!!?」
ぺちぺちと女神(黒妖精)を追い払おうと腕を振りまわすお母様(黄妖精)。悲しいかな、誰が見ても小動物のじゃれあいにしか見えない。
「ま、まあまあ!おかんも落ち着いて。女神様も意地悪せんと普通にしときって。」
「普通って?」
「ん?見てるって事はなんか気になる事……てか自分で分からんからって言ってたやん。ならおかんに聞いたら?目の前におんねんから。」
「……聞くのは普通?」
「いや分からん事は普通聞くから!クルーレさんの触ったら分かるのは特殊やから!普通の人は自分で調べたり人に聞いたりするんです。」
「……そうなの?」
「そうなの!私今からお姉様とおやつ作ってくるから。おかんは女神様の相手したりやー。」
「えーめんどいー。」
「もう、しゃあないお母ちゃんやな………あ、そうや!マカロン!お姉様作れるらしいから今日のおやつそれにしよ!お母ちゃん、コンビニスイーツのやつ好きやったやろ?楽しみしとき!!!」
「マジか!!!」
「マジっす。仲良くしとかな取り分減らすからな!んじゃ行ってきまーす!」
(バタバタバタ……)
「マッカロン♪マッカロン♪」
「………どうして、あのこは私に笑うの?優しくするの?私がしようとした事、ほんとは気付いてるんでしょ?」
「……あん?」
「貴女も、クルーレも私をまだ疑ってる。私とあのこを絶対に二人にはしないし、クルーレの居ない時は、魔力の強い騎士を数人護衛に付けてる。あのこはそれも分かって、それなのに、なんで?」
「………。」
「分からない。クルーレは私を許さないと言ったのに。張本人のあのこは私を許している様に見える。」
「許した訳やない。」
「なら、なんで?」
「……まあ、美津やからな。おあいこやと思ってるんやろうなぁ。」
「お、おあいこ?」
「浄化する時のあんたの言葉から、美津はあんたに道具扱いされた事知った。美津も驚いたやろうし、そりゃ怒ってたと思う。でもその後あんた、自分で責任取ろうとした。」
「………。」
「美津は、自分の失敗自分だけの力でなんとかしようってするやつ、嫌いちゃうもん。そういうの見て、手伝おうか邪魔しないようにするかどうか、相手の様子見て決めるぐらい気遣いできる良い子や。……まぁ一番大きいんは、クルちゃんの記憶取らんかったからやろな。それでチャラやと思ってるんやろ、美津は。」
「………。」
「勿論私とクルちゃんはあんたを疑い続ける。美津の気持ちと私らの気持ちは別やから。美津とクルちゃんの側に居続けるつもりなら、一生監視される人生と思ってや。」
「………それでもやっぱり、分からないわ。」
「そんなら、本人に聞きーや。」
「えっ!?」
「いやなんで驚くん?美津も言っとったやろ、分からん事は人に聞けって。あれは聞いていいよって意味やで?」
「………だって、私の事、嫌って………」
「………もっかい言うけど、美津は自分の失敗自分でなんとかしようとするやつ、嫌わへんよ。責任取ろうとして頑張って泣いてるやつ、いじめる娘ちゃうもん。」
「………ぐすっ」
「そんでも気にすんなら、普通にごめんなさいしーや。そしたらほんまに許してくれるよ。なんせ私の娘は、優しさの塊やからなっ!!!」
「結局貴女の話の最後は娘自慢になるのね……。」
「当然!!!」
この後。
シャリティアさんとマカロン片手に帰ってきた美津に、女神は鼻水垂らしながら謝罪しました。
美津はそのどろどろな顔を見て「ふむ。ちゃんと謝るならしゃーない。許してやろう!」とおどけて笑いながら、女神の顔を拭ってあげてました。
この時一緒に食べたチョコレートマカロンの味を、女神様は忘れないでおこうと思いました。
とてもとても甘くて、優しい味だったから。
おかんと女神様による、おやつ争奪戦の日々が今日この日から始まるなんて。
今はまだ、誰も知らない。




