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帰っておいで



多分久しぶりの聖女様視点です。



私は今、赤いような黒いような白いような変な場所にいる。

目をつぶった状態で太陽見たときのに見える、まぶたの裏。あれに似てる場所。


目なんか閉じていないのに。





………私、なんでここに居るんだっけ?


………ああ、そうだ。謝らないと。


私は、罪人(わるもの)なんだから。








(ごめんなさい)


(ごめんなさい)


(ごめんなさい)


(ひどいことしてごめんなさい)


(赤ちゃんにも、クルーレさんにも、楽しみしてたお母ちゃんにも)


(愛想尽かされてもしゃーない)


(クルーレさん家族に憧れてたのに)


(それ逆手にとって、酷いことしようとするなんて)


(クルーレさん)


(大好きやのに、酷いこと言ってごめんね)


(私、ここに居る)


(ちゃんとここで、瘴気浄化し続けるから)


(クルーレさん、どうかしあわせに)


(………………ああ、でも一回くらい)


(赤ちゃん抱っこしたかったなぁ)


(女神様が子供を魔法で取り出す言うてたけど、ほんまかな。大丈夫かな)


(でも……………赤ちゃんも、酷いことしようとした私がお母ちゃんなんて、そんな奴に心配されるなんて嫌よね?)















(大丈夫!悪いのとーちゃんだから、ぼく怒ってないよ!)


(…………え?誰?)


(だから早く、ぼくの事迎えに来てね!――――ん!)



(へ?)



誰かの声が響いたと思って後ろを振り返れば。


私の視界には、今はもう懐かしい蛍の光に満ちていた。







――――――――――――――――――――――







「美津。」


…あったかい。


あれ、おかしいな?()()()()()()()()()()()()()()()()()


温くて気持ちい。もっかい寝れそう。


「美津、起きて。」


ちうちう私のほっぺに何かが吸いつく。いや分かる。分かるんだけども。

………んや、まだ寝る。邪魔すなひっつき虫。


「………早くしないと、皆の前でお口もぐもぐしちゃいますよ?」

「「セクハラ反対!!!」」

「ふあぁはい起きましたお早うございます!」


公開セクハラなんて私の方が嫌です!!!


なんでか重い身体をガバリと起こせば、あれ。

懐かしい天蓋ベット。私のほっぺに自分のほっぺをくっつけてるクルーレさん。てか背中に乗ってたのね、そりゃ身体重いし温いわ。


ベットの外にはシャリティアさんとかおかんとかレオン様とか王太子殿下とか。その後ろの出入り口の方では顔なじみのメイドさんと騎士様まで顔覗かせている。

てか皆、なんでか泣きそうな顔ですっごいこっち見てくる。



………あれ?



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


なんでミスティー国に居るの???


意味が分からないと私がクルーレさんを見れば、いつもの幸せ感じてるくしゃり顔で笑っていらっしゃる。


………ん?なになに?何か良い事あったの?


「どうしたの、クルーレさん。」


また赤ちゃんの事聞いた時思い出して、感激して泣いてるの?

飽きないね。一日一回はそれでうるっと来てるでしょ!そろそろ慣れましょうよ!


「はい、慣れるように、頑張ります。…………お帰りなさい、美津。」

「ん?ただいま?いやいやいや挨拶はおはようですよ。私今まで寝てたのに!」

「………そうでした。間違えました。良く寝てましたね。」

「うーん。いつの間に寝たんやろ?おかんと一緒におやつ食べて……お腹いっぱいになって寝てた?でもなんでこっちのベットで寝てんの???」

「ああ、それは()()()()()があったので。」

「へっ!?女神様が来たの?」

「ええ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。姿が見えなくなって、皆心配したんですよ?犯人はほら、お仕置きしましたから安心してください。」


そう言ってクルーレさんはおかんをつまみ上げ………いや、あれ黒い。髪をゆるい三つ編で纏めた、黒い服を着た見知らぬ妖精さんの首根っこを雑に掴んでる。

………これが、女神様???


確かにおかんが女神様の魔力で妖精姿になってんから、女神様も似たような姿なんはおかしくないの、かな?

もっと神々しいイメージやったのに。


それより………よ、よく見ると後頭部にたんこぶ三つ出来てる!しかも髪の毛や服が焦げてる!チリチリなってるよ髪の毛!!!

お仕置きってなにそれめっちゃ過激に体罰したの!!?


「い、いやー私寝てる間に移動しただけみたいやし!そんな怒らんでも大丈夫やで!?」


「「「「「許しちゃ駄目!!!」」」」」

「ひぃ!?皆どしたんめっちゃ顔怖いよ!」

「……………………くすん。」

「ほ、ほら女神様反省してるって!めっちゃ泣いてるって!な、なぁ女神様。突然の悪戯は皆びっくりするから、今度からは普通に遊びにおいで!おかんの好きなチョコチップクッキーで良いなら今度一緒に食べよ!ね!」


静かにめそめそしている女神様が、あんまりにも哀愁漂わせているので頭を撫でて慰めてみた。

ちっこい女神様はビックリした顔でこっちを見てから、また下を向いて「ごめんなしゃ………ひっく」と目のサイズからはおかしい大きさの涙を零しながら余計に泣き出した。なんでやっ!?


「……………………ちっ。」


あ、こらクルーレさん!泣き止んだと思ったら殺意込めた目でこんなちっこい女神様睨まないの!

てか舌打ち!何で舌打ち!?


「私から、美津を奪うものは誰であっても、何であっても許さないと誓ってます。女神もその対象です。………たとえ美津が許しても、私は、一生許しません。」



背筋に怖気が走る程の冷たい声なのに。


何でかな。


心の底からの安堵を覚えるのは。



「もう、しゃーないなぁ…………でも、クルーレさん。心配してくれて、ありがとう。」


私は笑顔で答えたけれど、しがみつかれてクルーレさんの顔が見れなくなった。てか、のしかかってる。押し潰されてますよ私。


ぽふんと頭に重みを感じたから、これはおかんが乗ってるのかな?


「みづぅ〜よがったあ〜よがっだぁ〜」

「待て待て待て待て誰かタオル!タオルください!」


おいそんなにか。そんなにも行方不明時間長かったんか!?

めっちゃ肩も頭も湿っぽいから、どっちもめっちゃ泣いてるよ!?


何とか体の向きを変えて、お姉様から頂いたタオルで旦那様とお母ちゃんの涙を拭っていく。


どっちも顔めっちゃドロドロやん。短時間で出過ぎやから涙。


……もう。おかんもクルーレさんも心配性やなぁ。困ったもんや。



「泣き虫な父ちゃんとばあちゃんやから、しっかり者になって出てきてなー。息子よー。」


お腹をぽんぽんと叩いてお願いしておく。

私一人で二人の面倒は大変ですからね!


「……ぐす、何で男の子なん?私女の子がいい。」

「ん?……………………んーいや、息子さんです。なんかこう、ビビッと来た!」



何でやろ。産まれてもいないし、まだ形だって出来上がってないのに。


私の事「かあちゃん」って呼んでくれる気さえするぞ?



「マジか。岡田家の血族は男が多いねんで頑張れやクルちゃん女の子女の子おんなのこ〜っ!!!」

「ぐす。……では、次は女の子出来るように私も張り切って頑張りますね、特に夜!」

「「調子に乗るな!!!」」

「え、言ってる事違うじゃないですか。お母様も姉上も酷いです。」


………女神様の悪戯って場所移動したくらいやんな?何やろ。すっごい眠くなってきた。まだ疲れてんのかな?


「……そうですね、疲れましたよね。もう少しなら、寝てて大丈夫ですよ。起きたらお話しましょうね。………お休みなさい、美津。」

「うん、……おやすみぃ………………………ぐう。」



ちょっと寝たら、起きるから。

すぐに起きるから。だから。



ずっとそばに、一緒に居てね。クルーレさん。



「はい。ずっと一緒です。……約束、破ったりしません。今度こそ、絶対ですから。」



聖女様の修理もなんとか終わりました。

諸々の説明は次の話から。


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