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異世界では初の普通の優しさ

本日2回目の投稿です。

前話と違ってほのぼのです。


それでは。





「………はぁ」


「どうしました、聖女様。此方も召し上がって下さい。その量では失った血液を補充できません。」


クルーレさんの差し出すフォークにはほんのり湯気上がる美味しそうなグリルチキン。


私はチラリとクルーレさんの後ろに視線を送る。

ヘルプですシャリティア姉さん!!!


「あぁクルーレ、そうではないの。そうではないのよ! 聖女様、お許しください。私もきつく言い聞かせますから!」

「んぶっふ、ぅぷうっ……っ…!」

「笑ってないで何とかして下さいレオン様!!!」


「………はは、あはむぐむぐぐっ!」


拝啓。

天国のお母様。異世界の女神様。


本日も、天蓋ベッドから見える景色が賑やかなカオスです。



――――――――――――――――――――――――




王様との謁見中に気絶した私は、そのまま丸二日目覚めなかったらしい。


目覚めの日、私が瞼を開けて最初に目にしたのはクルーレさんの麗しの寝顔だったんだから、叫び声あげたのは間違ってないと思います。はい。

傷が開き、痛みが酷いのかもと心配して、夜通し魔法を使い続けてくれたそうで。


……起こしてごめんなさい!

しかし世の男性、女性の人を見るだけで鼻血出そうっていう心理が少し分かってしまった私は、複雑な気分でした。



レオン様(王様呼びは嫌らしい)に連絡が行き、私は思い出した事を掻い摘んで説明した。



事故のこと。

海の上で私が一人だったこと。

声だけの存在と会話したこと。

結果的に、私は願いが叶えられたと思われること。


私の怪我が思ったよりも酷くなってしまい、女神様は願いの成就を確認させることなく、私を異世界に送ってしまったのだろう、と。


今は家族の無事を信じて、暫くは皆さんの好意に甘えて怪我を治したいこと。などなど。


ただ転がってるだけなのも暇なので、この国や魔法などの勉強もしたい旨を伝えると、レオン様が号泣しながら抱き付こうとして来るのでクルーレさんに追い払ってもらった。


クルーレセ○ムは今日も安泰です。



――――――――――――――――――――――――


そんなこんなで異世界[ミスティリア]で目覚めてから、二週間程経ちました。

いや半分位ぶっ倒れてたんで実感ないけどね?


魔法での治療も、クルーレさん達のお陰で監視付きかつ短い時間ならクッションを背凭れにベッドに座って良いことになった!じっとしてるだけやのにしんどいってホンマ不思議!


現在借りてるこの部屋は城の客室らしいのですが、私の住んでた団地の部屋の二倍くらい………と金銭的格差に少し涙を浮かべ、部屋の中心の三人掛け丸テーブルで私用の朝食準備してくれてるシャリティアさんに感謝しつつ。

ベッドから左手に棚や出入り口。

右手側に窓とバルコニーに繋がる扉。


シャリティアさんにワガママ承知でお願いして、窓辺に小さめの棚を設置してもらい、これまた小さな一輪挿しの花瓶に黄色の花を一輪とマグカップに紅茶。真ん中に白い箱を置いてもらった。


仏壇はさすがに用意出来なかったので、暫くはこれで落ち着いてもらおう。


「おはよー、おかん。今日は黄色い花で良かったなぁ。」


私が座れるようになってからの日課。

実家で過ごした家族との朝と、同じ一言を私はやっと口にできたのだ。



――――――――――――――――――――――――



ちなみに勉強の方はというと。



「……はい。今日はこれくらいで。」


異世界の常識が簡単に学べるよう、子供用の絵本(本日のノルマ3冊)読み終わった時にクルーレさんが部屋に戻って来た。

文字の読み書きがスムーズに出来るのは聖女が女神様から貰える特典の一つらしく、とても助かっている。


「そんな心配せんでももうちょい大丈夫ですよ?もうそんな痛くないし。」


クルーレさんは元々レオン様直属の守護騎士で、細々とした書類仕事も受け持っていたそうです。

仮にも王様を守るのが仕事なのに私の世話ばかりなんて申し訳ないと言い、なんとか現場復帰してもらっている。


大雑把に見えてもまだ私に気を遣ってくれてるらしい王様は、クルーレさんの仕事を早めに切り上げさせて、私の様子(怪我の具合)を見に来させているのだ。


教材である絵本の選定と冊数も、クルーレさんの仕事らしい。


「いけません。」

「転がるのにも飽きたし疲れるし、なんせ暇です!」


もともと漫画も推理小説もライトノベルも二次創作もどんとこいなオタクだったのに!


「やっと座れるようになったのに無理をすれば筋を痛めまたベッドに逆戻りです。また明日、今度は軽い歴史小説などを見繕って来ます。良い子ですから……ね?」

「…………っ! はい分かりました寝っ転がります自分で出来ます大丈夫ですがんばりますから顔近あぁっい!!!」

「そうですか。残念ですね?」

「何がっ!?」

「……ふふっ。」

「……ぅぐう!また私で遊んでますねっ!? 」

「ふふふ。」

「スッゲェ楽しんでいらっしゃる!!!」


なんで毎回毎回顔近づけたり肩抱き寄せたりの介護以外の接近が多いねんっ!きらっきらなその笑顔心臓にホンマ悪い!!


免疫ない私で無邪気に遊ぶのマジやめて!


シャリティアさんがため息つきながらお茶の準備してくれてるの見て、うわあああってなるの私だけなのでしょうか。お願い諦めないでお姉さま!


ちなみに驚くべき事に、クルーレさん達は私が10代前半の娘さんだと思っていたそうです。

こちらでの平均身長が男性180センチ、女性170センチ。

日本女性の平均157センチの私は、たとえ老け顔でも成長期中のお子様に見えるんだそうで。


もっと驚いたのが、どう見たって20歳代のクルーレさんとシャリティアさんが私より年上……クルーレさんが35歳って………お姉さんのシャリティアさんもそれより上……………ああ異世界って凄い。


私の頭を撫でながら、クルーレさんは色の濃い(あか)の瞳を柔和に細め、微笑んでくれた。


「ゆっくりで構いません。貴女のペースで。無理などしなくて良いのです。」

「…………………………はい。ありがとう、クルーレさん。」






拝啓。


天国のお母様。異世界の女神様。

あときっと無事であろう、お父様お兄様方プラス弟君。



この賑やかで優しい人達のおかげで、私は淋しさ感じる暇もないようです。



主人公は仕事などで基本的に標準語ですが、家族や友人には関西弁と標準語が混ざるような感じではなします。

あと男兄弟の中一人だけの女の子だったのでなんやかや可愛いがられ、年上男性に対して無自覚な甘え上手です。


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