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聖女の隣国訪問[瘴気について]



「浄化出来てないって、そんな……。」


私がなんか、気付かずに失敗して上手に出来なかったから、だから?

じわりと涙がこみ上げてくるのを私は慌てて下を向いて誤魔化した。皆にはバレてるだろうけど。


「…………みっちゃん?」


頭の上にいた母が小さな両手で撫でてくれるのが余計に胸にくる。どうしよう。どうしよう。


()()()()に皆は優しくしてくれたのに。大事にしてくれたのに。

大事な仕事を疎かにしてたなんて、私はなんて役立たずなんだろう?


「そんなことありません。」


クルーレさんは私と目を合わせるために膝をついて顔を覗き込んできた。頬を優しく撫でながら。


「役立たずなんかじゃありません。」

「そうです。落ち込む必要等ありません。貴女はこれまでの歴史から見ても、ぶっちぎりで一番優秀な聖女様です。」


ピーター様の言葉に、皆私からピーター様に顔を向けた。


「と、言うと?」

「浄化するにはまず、聖女が瘴気を取り込む必要があるのですよ。」


ピーター様が言うには、今までの聖人、聖女もまず数年、長いと十年程かけて世界を回り、自身の体に瘴気を溜め込む事から始めるそうだ。


そうして青空が広がり、世界中の山林や動植物の調査などで瘴気の異常が確認されなければ、瘴気を浄化する為に聖人、聖女と共に[女神の山]に向かうという。


「[女神の山]って?」

「国境としてある岩で出来た山脈があったでしょう?あの連なる岩山の中に一つだけ、小さな噴火を続ける活火山があるのです。」


それが[女神の山]。

女神の愛がマグマとして時折溢れているのだと言われ、信仰の対象になってるとか。


「聖女様が山に入れば女神が現れ浄化へと導いてくださるので、ご安心下さい。いやいや、言葉足らずで申し訳ない。」


ピーター様の謝罪に、私は首を大きく降る。

良かった、ホンマ良かった!


「ああそれと、殿下からの手紙には、城に居た状態でも離れた地域の瘴気を浄化……正しくは取り込んだ、ですが。これは本当ですか?後世のために、何か特別な事をしたなら教えて欲しいのですが?」


この質問に。


「「「え、えーっと?」」」


私、母、シャリティアさんが困った顔で冷や汗を流し。


「ふふふ。」


クルーレさんは笑顔で誤魔化しながら、無難な返事を考えてくれた。


性的なイチャイチャで取り込み作業が進んだとか、すっげー言い辛いです!女神様!


――――――――――――――――――――――



クルーレさんが遠回しに説明してくださったので、私は羞恥に転げ回ることは無かった。

「愛しい人と共に過ごす時間のおかげです」で私は胸がいっぱいですがね!転がらないけど照れるよ!


「やはり愛とは、何者にも勝るモノですね。私も妻に先立たれた時はそれはもう辛いものでしたが……娘と国民を妻の分まで愛そうと、これまで努力してきたつもりです。どうか、この国をお願いします。」


ミスティー国と違い、リアーズ国では瘴気問題のたびに凶暴化した野生のドラゴンによる被害が発生するそうだ。

全て退治してしまうと今は良くても、後世の人々が岩山の国境を足で越えなければならなくなる為出来ないらしい。


「私に出来ること、精一杯頑張ります!」

「ありがとうございます、優しい聖女様。」


クルーレさんは本当に現地に行かなくて良いか、最終確認の為ピーター様と少しお話しするらしく、私は先に部屋に戻ることにした。


「ちゃんと、眠らないで待っていてくださいね?」


お願いです。色気だだ漏れのうっとり顔で言わないで。

何度も言うけど私は、恋愛初心者なんですよ!

高速で頷いて、早歩きでメイドさんに部屋まで案内してもらった。

後ろの方で楽しげな笑い声が響く。



…………ドラゴンとの飛行は重労働でしたから、早く来ないと寝ちゃうからね!




国境の岩山を越えての貿易もドラゴンを用いています。

ミスティーとリアーズを繋ぐトンネルは一つありますが、徒歩専用の細さであり、また岩山自体が硬く魔法を用いても中々整備が出来ない為新しく作る事も難しい。

ドラゴンは力持ちなので、荷物を壊れない様に魔法で強化してから紐で結んだり積み込んだりしたら一度に数百キロは運べる。


風の魔法を極めても山越え出来るほど飛べる人は百年に一人居るくらい。

ミスティー国の第一王子はその逸材なので一人旅を可能にしています。

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