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聖女と妖精さん


皆様お早う御座います。


私の名前は岡田美津(おかだみつ)

異世界[ミスティリア]で聖女様なんかやってます。


こちらに招かれてまだ二ヶ月経ってませんが、なんやかやあって瘴気浄化が順調に進み、世界の約半分の浄化に成功しました!


………浄化への近道が婚約者とのイチャイチャってそれなんてエロゲ。とかちょいと思いながらも順調です。


私を召喚したミスティー国内の浄化はほぼ終わりましたので、次は隣国リアーズの瘴気浄化。


瘴気の完全浄化、及び婚約者とのスピード結婚目指して私は頑張ります!



お母ちゃんに花嫁姿、見せてあげないといけないし!





――――――――――――――――――――――



「ふあ〜」


大欠伸をしてもほっぺたをむにるクルーレさんはここには居ない。たまにはこんな朝も良いです。


熟睡したお陰で目覚めが爽快。


チラリと隣を見れば、二つ並んだ枕の一つに黄色いワンピースを着た黒髪おかっぱ頭の妖精さんが気持ちよさそうに爆睡している。


妖精は本来なら食事や睡眠は必要ないらしいけど、転生した母は人であった頃を引きずってるのか、どこに入るのか私と同じくらい食べ、しっかりヨダレ垂らしながら眠ります。


小さな頭を撫でてみると、うにうに動くだけで起きない。自分の親ながらちょっと可愛い。



「………。」



生前、病気の為にカロリーや薬との兼ね合いで母が甘いお菓子を食べられない事が悲しくて仕方なかった。

腫瘍が骨の神経に当たって激痛にのたうち回り、眠れない夜が何度もあった。

やっと体に合う薬が見つかって痛みがなくなり、家に帰れたのに。

すぐにお別れになってしまった。



母が意識不明になる前日。

私は仕事が休みで、母におねだりされ、カロリーが低くなるようにおからと胡麻を混ぜたクッキーを一緒に作った。

ホットケーキミックスを使ったから失敗はしなかったけれど、やっぱり独特のパサつきと、甘みがだいぶ控えめな出来上がり。


それでも母は美味しいと言って食べてくれた。


味見といって焼きたてを一緒に食べて、砂糖なしのコーヒーも飲んで。


多めに作ったからまた明日お食べ、と私は母に笑った。




母が明日、食べられないなんて想像もしなかったから。




「うっ………ひっく、…」



お母さん。


私、今度クッキー作るから、一緒に食べようね。

チョコチップいっぱい入れるから、きっと甘くて美味しいよ。


あとね、私、好きな人出来たよ。

しかもびっくり。両思いなんだよ。


私なんかにはもったいない美人な騎士様で、ふとい私を可愛いとか興奮するとか言っちまうぶっ飛んだ人だよ。


実は面白い性格なんだって最近気付いたけど、構ってくれて、楽しくて、私も毎日笑ってるよ。


私とずっと一緒に居たいって。

結婚したいって言ってくれたよ。



お母さんが見たい見たいって言ってた花嫁姿。

もうちょいで見れるよ。



「ぐすっ………浄化が終わったら、ドレス選ばしたるからなー。待っときやー。」


そう言って、寝起きだからか、泣いたからか、ふらふらしながら洗面所へ向かった私。



「………ぐす」


妖精さんがヨダレでなく涙で枕を濡らしてるとは気付かずに。






[妖精さんと聖女とクッキー]



朝食の後

黒騎士様の膝の上が定位置になりつつある聖女

妖精さんは聖女の頭の上か肩の上が定位置です


「なーなードラゴンさんってまだやんな?」

「来たら教えてくれるやろー」

「だったら向こうでひょいパク出来るオヤツ作ろうや!私クッキー食べたい!」

「!し、しゃーないなーお姉様に聞いたろ!シャリティアさーん!!!」

(バタバタバタ)


「……………………、む」

「妬かない妬かない。お嫁にやんねんからちょっとくらい大目にみてーや」

「………多分、チョコチップ沢山入ったクッキーですよ」

「やった!私の好きなやつ!」



その後、作った焼きたてクッキーを味見に一枚ずつ皆で食べました

甘くて美味しかったです

ちゃんの多めに作ったので、今日だけでなく明日も皆一緒に食べれそうです

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