人生初の美人さんに出会いました
ごぼごぼと口から空気の泡が抜けていく。
もう夏だというのにこの水の冷たさ。最悪。
なんとか皆、無事ならいいなぁ。
私は………無理かな。
左手の感覚しかないなぁ。目を開けてるのか閉じてるのかも分かんないし。
動かなかったらこの体格やから、浮かぶはずやけど。どうかな?
もうすぐ島に着くはずやったから、助けはすぐ来る。
とりあえず海面に浮上出来るよう、身体の力を抜いて、抜いて………それから。
「………」
右側に船体も見えてもうすぐ海上って分かるのに
私はどうしてか
海の中からでも分かるくらいの真っ赤な光が船を覆う訳を、知りたくないと思った
――――――――――――――――――――――――
(なでなで)
「………」
(ふにふに)
「………」
(むにむにむにむにむにむにむにむに)
「……なんでこしょばい?」
「っ、あ…おはようございます、聖女様!」
ニッコリ。
「…………え。」
目覚めたらとんでもなく美人な男性(笑顔付)のアップ。こんな乙女ゲーのスチルあった。
てかココドコ。
寝すぎたのかぼんやりする頭を覚まそうと瞼に力を入れて、見開く。
映画に登場する様な天蓋付きベッドに転がってる私の右手を持ちながら、 二十歳くらいの美人な男性(笑顔続行中)がこちらを凝視してくる。ちょ、やめて目がチカチカする。
黒髪黒目…いや瞳は、濃いめの紅に少しの黒を混ぜた様な色で、すごい綺麗。
鼻もすっと高く、睫毛バッサバサ。色白お肌でツルツル。少し厚めの唇が薄桃色って何この顔面格差!!!
そりゃ私もお肌はモチモチやけど、それは肉しっかり付いてるからや!二の腕までモッチモチのたっぷたぷや!
「やわらかい…。」
おい、二の腕見るな!狙うな!あと人の手をエンドレスに揉みしだくな!それセクハラ!
「いっ…づぅうゔいだいぃぃ…!」
てか振り払おうとしても腕動かない!めっちゃ痛い!
なんで気付かなかったのってくらい右手も頭も背中も足も!殆ど全身痛いよ!!!
「退きなさいクルーレ!」
美人さんの後ろに居た、これまた天使の羽根が似合いそうな二十歳くらいの金髪美女が押しのけながら私の手を取った。
美女が小さく何かを呟くと蛍みたいなぽっとした光が右手を包み、それがゆっくりと右腕全体、頭と上半身と最後には全身が光に包まれた。
あったかくて気持ちい…いつのまにかデコに美人さんの手があり、ゆっくり撫ででくれてる。
あんなに酷かった痛みが嘘みたいになくなっていた。
魔法みたいや。
「落ち着かれましたか?」
「はい…ありがとうございます。あの、あなた達は?それに今の光ってたのは?」
「それについては王よりお話がありますので、今しばらくお待ち下さい。私はシャリティア。こちらに居りますのがクルーレ。共に聖女様のお世話と護衛を務めさせて頂きます。」
「クルーレです。何なりとお申し付けください、聖女様。」
あー、うん。スルーしたい単語が使われている。
結構な量使われてるよ?
「えーと、お兄さん達には、」
「クルーレです。」
(なでなで)
「聞きたい事が、」
「クルーレです。」
(にこにこ)
「………うううううう〜っ!」
何その輝く笑顔!気になって質問どころちゃうし!
あのですね、私は今年で三十路ですが家族と同僚以外の男性に免疫ないんです。
子供の頃から太っていて、痩せたことが1度も無いのでイジラレキャラとしてずっと生活してたんです。
学校でも仕事場でもそれこそ家族とも!!!
反応おもろいは褒め言葉ちゃいますよ!?
ただでさえ慣れてないのに、ふんわりキラキラ微笑まれながらの頭ヨシヨシはキツイです!相手が美人なら特に!顔も真っ赤になるよ!
「おやめクルーレ。貴方らしくありませんよ?」
「…はい、姉上。」
まさかのきょうだいだった。
まあなでなで攻撃が止まって助かったので、良しとしましょう。
「…えーと、……クルーレさん。シャリティアさん。王様っていうのは、その、国を治めてる国王様的な?」
「そうです。」
「先程目覚めた事をお知らせしましたので、こちらに向かっている所でしょう。」
シャリティアさんがそう言いながら扉の方へ振り返ると、タイミング良くガチャリとドアノブを回す音が。
「聖女様はご無事か!?」
「ひいっ!」
どすどすと向かってくるのはごつい甲冑着込んだ、ごつい熊にしか見えないお髭のおじ様でした。
暫くは1日2日で投稿出来たらと思いますが、毎日更新の凄さが分かります。
楽しく続けていきたいです。
それでは。