美人は我慢してるんです
前回に続き直接ではない性的描写があります。
というか黒騎士様が自分の性癖口にしてます。
赤裸々です。
それでも宜しければどうぞ。
姫だけでなく、レオン様に王太子殿下、護衛の騎士もメイドたちも私を見て固まった。
そんなにおかしな事を言っただろうか?
姉上やお母様は納得してくれると思うのですが。
美津様はあんなに可愛いのに。
そんなとりとめない事を考え待っていたら、初めに動き出したのは姫だった。
「こ、好み………なのですか?」
その恐ろしいモノを見たような目をやめてほしい。私だけでなく美津様にも失礼です。
「ええ。可愛らしい性格も好みですし、癖のある猫っ毛な黒髪も、私を呼ぶ独特な高い声も、どこに触れても柔い身体も。……きっと私が噛み付いたら綺麗に痕が残って、痛みで可愛く鳴いてくれるだろうな、と。考えるだけで堪らない。」
「「「「ひぃっ」」」」
皆さんそんな顔赤くしながら怯えなくても。取って食べたりしませんよ。
「私も男で、オマケに本能に引きずられやすい獣人の血を引いてるんです。それくらい考えますよ。」
「お前のそのお綺麗な顔で言われたら色んな意味で怖いわ!!!」
レオン様まで失礼です。
お綺麗と言われても自分では分かりません。美津様には「宝○の男役もジャ○ーズもクルーレさんには降伏するよ!完敗だよ!!」と言われましたが。
「顔は生まれつきです。私も彼女に習って思った事を口にしたのですが……あまり上手くはいきませんね。」
「いや、クルーレも惚れた女に対してはそういうの考える男なんだなって俺は安心した。」
(((うんうん)))
王太子殿下と騎士達(赤毛以外)からまさかの同意を貰ってしまった。そういえば新しく入った騎士にも獣人が何人か混ざっていたから、共感してくれたのか?
「………そうですか。」
少し照れくさいですが、悪くない気分ですね。
同性の友人は殆ど居たことがなかったから余計に。
「み、み、認めませんわ!クルーレ様には私の様に高貴で美しい者が伴侶でなければいけません!」
「公務中に色欲まみれの思考回路だった方が高貴な姫とは。これがこの国の姫だと思うと嘆かわしい事ですね?」
笑顔で罵れば赤かった顔がまた青くなった。
それでも今度は目を逸らさず睨み返してくる。
「〜!聖女だって!クルーレ様の考えを知ったら怯えるかもしれませんわ!」
「まぁ、そうでしょうね。」
彼女にはエッチな方面の免疫が無いですからね。本として、知識としては大丈夫でも、いざ自分の身に起こるとなると別なようですから。
「!!!ほ、ほら!彼女が怯え逃げると思ってるのですね!聖女の愛もその程度なのですわ!!!」
姫は勝ち誇ったように顔を輝かせるが、周囲の人間が引きつった顔のままな事に気付いているのかどうか。
「姫と私の妻を一緒にしないで下さい。」
「まだ妻になってませんわ!!!」
「………はぁ。」
いい加減鬱陶しくなってきた。
言いたい事は大体伝えたし、放置して早く彼女と姉上達を迎えに行こう。
夕食を作るために調理場に行ってるはずだ。
「聖女は、クルーレ様しか男を知らないからっ、他の男からよい声を掛けられたらあの女だって本性を」
「それ以上、口を開かないほうが良い。」
殺してしまいそうになる。
そう視線を向ければ青褪め、震え、レオン様の後ろに逃げ込んでしまった姫が見えた。
ああ、目の前が真っ赤に染まる。今、姫は何と言った?
「他の男など、私が許すわけないでしょう?」
何の為に手を繋ぎ、抱き締め、私との触れ合いを慣れさせているのか。
「彼女に教えるのは私です。私だけです。」
あの性の匂いがしない彼女を、私が女にするのだ。
「口付けの仕方も、男の悦ばせ方も、閨で私が教えるんです。何も知らない彼女に、私が。」
姫だけでなくレオン様達も怯える様に一度震え、私から壁側に距離をとる。ああ、また耳が出てしまったようだ。
「私の楽しみを奪おうなんて、誰であっても許しませんよ?」
誰にも邪魔はさせない。
彼女の初めては全て、私のものだ。
――――――――――――――――――――――
「あ、クルーレさんおかえりー。ご飯もう出来ますよ!」
調理と後片付けがほぼ終わった頃、いつのまにか調理場の入り口横でクルーレさんは待っていた。
今回はすんなりと調理場に入れてもらえたので、邪魔しないように端っこを借り、三人で晩御飯制作。
「今日はブリっぽい魚の煮付けと、ブリっぽい魚のアラ汁と、きんぴらごぼうですよー!」
あと料理長からポテサラも頂いたのでおかず増えた!
ちなみに料理名にぽいがつくのは、ブリがイルカ並みの大きさで通常愛嬌のある顔が極悪になってるからです。料理長がおろしてくれました。
「今まで我慢してた事いっぱい言って疲れたでしょ?ご飯食べてまた明日から頑張ろうね!」
クルーレさんは疲れからか少しボンヤリしてるようだ。頬も少し赤く見える。
「……………………………………はい。もう少し我慢して頑張ります。」
「うんうん!がんば、………え我慢?あれ聞き間違い?え、言えなかった?」
でも姫様には結構辛辣な言葉のストレートパンチかましてませんでした?
「あ、いえ。間違えました。ちゃんと言い負かして来ましたので安心して下さい。」
「それはそれで皆が可哀想な気がする。」
「皆さん私と違って精神が図太いですからちょっとくらい大丈夫ですよ。」
クルーレさんの笑顔が素敵に輝いてるので、ストレス発散出来たのは良かったと思います!
「美津様こちらは鍋ごと運びましょうか?」
「あ、そうしよか!クルーレさんも部屋に運ぶの手伝って!」
「はい。お腹空きました。」
「では客室の方に向かいましょう。」
「「ごーはーんー。ごーはーんー!」」
「あらあら。聖女様もお母様もはしたない。」
「「ごめんなさい。」」
「ふふっ、お二人共素直でよろしいですわ。」
料理や食器をホテルなどで使うワゴンに乗せて、楽しくきゃーきゃーお喋りしながら私が寝ていた客室に皆で移動した。
「ふふふ、………もう少しだけ、我慢しますから。」
クルーレさんが笑顔の下で何を考えてるか、私が知るのはこの日の夜だった。
少し頬を染めながら「噛みたいなー」と思ってる黒騎士様。
何にも気付いてない聖女。
何となく、何かヤラシイ事考えてるなアイツ、と思ってる美人と妖精さんが居ました。




