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美人は我慢してたんです


本文がだいぶ溜まって来たので、臨時で投稿させて頂きます。

今回の話から直接ではないですが性的描写、セクハラ的描写が入ってきます。

濁しているので大丈夫と思いますが、もしちょっと「年齢のやつ微妙に駄目かも?」と思われましたらこっそり教えてくださればありがたいです。


では。




最初に復活したのはやっぱり姫様でした。


「許しませんわ!」

「何故姫の許可が必要なのです?」

「く、クルーレ様は私と婚約しましたわ!」

「私の記憶が正しければ、留学される前に正式に断りましたよね?愛の無い結婚ほど不幸な事はありません。」

「私は愛しています!!!」


姫様のこの言葉に、クルーレさんは満面の笑みで答えた。


「おや、知りませんでしたか。私は姫が嫌いです。とても醜いですから。」

「!!!…み、みにくい?わ、わたくしのどこが?」


クルーレさんはチラリと私を見てから、シャリティアさんとおかんに目を向けた。


コンマ数秒の間に、阿吽の呼吸を見たのは勘違いではないはず。


二人はすっと背後に立つ(一人は浮いてるけど)と私の耳をしっかりと塞いで、そのままスタスタと歩き出した。

あれ、皆が喋ってるの全然聞こえない?少しは漏れて聞こえてくるもんやのに?

これも魔法か何かかな???


……うん。クルーレさんが自分でケジメ付けたいなら、私は待ってるよ。


私は取り敢えず「晩御飯準備しとくから後で来てねー!」とだけ言って手を振った。


クルーレさんは笑って頷いてくれた。


――――――――――――――――――――――



美津(みつ)様達が廊下の角を曲がって暫く。

もう聞こえないだろう所まで確認してから、顔を怒りに真っ赤にしたこの国の姫に視線を戻した。


「答えてください!私の何処が醜いとっ!?」

「ここで答えて宜しいのですか?」

「仰って下さらなければ分かりませんっ!!!」

「まぁ、私は構いませんが。しかしレオン様と王太子殿下には辛いでしょう?」

「「「え?」」」


王家の方々は首を傾げ不思議そうにしている。

まぁこの際だから知ってもらおう。


「なんせ姫は触れるたび、私の(ピーーー)、(ピーーー)り、姫が本棚を加工して作った隠し部屋にある手錠や鎖で(ピーーー)や(ピーーー)で(ピーーー)をしようと狙ってましたから。」

「「「「!!?」」」」

「四六時中その様な事を考えている女性に、私は好意など持ちません。おぞましいだけです。」


王家の方々だけでなく、騎士やメイドの前で言うのは少し不憫ではあるが、構わないだろう。

私の心労の方が大きかったのだから。


騎士もメイド達もドン引きしているな。

姫は赤かった顔を真っ青にしながら震えている。



「あ、あ、あぁあっ、うそ!?」

「レオン様に聞いたでしょう?私には分かるんですよ?」


羞恥から涙を流し顔を上げられなくなっている姫に同情はしない。昔から気持ち悪いとしか思えなかったのだから。

しかしレオン様や王太子殿下には申し訳ない気持ちは少しある。

身内の異常な性癖など知りたくなかっただろう。


「まぁ私から見てというだけで、姫の様に欲に忠実な女性は珍しくありません。私に自分から触れてくる女性は皆様似たような方ばかりでしたので、落ち込む必要はありません。貴女のような方が好みという男も何処かに居ますよ。」


それは私ではないが。

震えが止まらないまま、姫は私と視線を合わせる事なく聞いて来た。


「……………、せ、聖女は?あの方は、クルーレ様から見て醜くはないと?」

「とても愛らしいですよ?」


即答すれば視線を合わせ目で「何処が!?」と聞いてくる。他の騎士やメイドも似た様な顔だ。失礼な。あんなに可愛いのに。


「頭で考えている事と、口に出す言葉が同じなんです。いえ、心を読まなくても表情を見ればすぐに何を考えているか分かります。」


懐かしい。初めは抱き締めると照れて真っ赤になって叫び暴れていたのに。今では笑顔で抱き返して、二の腕差し出したり膝枕してくれたりと、私の喜ぶ事ばかりしてくれる。


「私が心を読めると知った時も、彼女は恥ずかしいと思っただけでした。変わらず私と手を繋いでくれるし、抱き締めても恥ずかしいと言うだけで嫌がらなかった。……私の様な人間を相手に、対等に接してくれた。」


彼女の中に偏見はなかった。ただ変わった人だなぁと思い、そんな人も居るんだなぁと思い、終わる。

攻撃してきた相手でもない限り、彼女は怯えも恐れもしないから。


「それは、聖女が何も知らないからですわ!あの様子だと男女の営みもよく理解していないのでしょう?知れば私の様に、……貴方には醜く見えるのでしょう?なら私と聖女に違いなどありません!私を選ばないのは何故です!?」


姫はこんなにも拒絶する私を自尊心だけでこうまで引き留める。それも私が感じる醜さであるとは思わないのだ。


選ばない理由など、分かりきっているのに。



「私の好みの問題です。」




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