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美人のトラウマが帰ってきた


これから投稿していく数話分は、黒騎士の内緒の話に関わっていきます。


お話の中では数日しか経過しませんが物語としては結構進みます。

怒涛のようにとまでは言いませんが、聖女と黒騎士の関係もまた少し変わっていくと思います。


成長と言うのか依存と言うのか。恋愛は難しいと思います。



本日は二話投稿しますので、宜しかったら暇つぶしに読んでやってください。




クルーレさんを膝枕した次の日。

夕方には少し大きな町に着く予定でしたが、予定が変更され、私たちは今お城に帰る途中です。



なんと異世界らしく、ドラゴンのお迎えによって!



私と母は「おお〜!」と目をキラキラさせて見てしまいました。

翠の鱗に顔には白っぽいヒゲの生えた、車くらいの大きさのドラゴンが2匹。

前足の部分が翼になってるから、ぱっと見モン○ンのレ○アみたいやな。毒は無いやろうけど。

乗馬する時に使う鞍が背中部分にベルトでしっかり固定されてる。

言葉は話さないけどこちらの言ってることは理解してるらしい。

レオン様が早急に戻って欲しいそうで迎えとして来てくれたのです。


馬車は御者として来てくれた兵士さん達に任せて、私とクルーレさん、母とシャリティアさんは一足先にお城までひとっ飛びです!


クルーレさんはドラゴンの扱いも手馴れていて、不慣れな私と二人乗りでも問題なく飛んでくれました。

私も初めはびびってクルーレさんの腕に縋ってましたが、落ち着いたら景色を楽しむ余裕も出てきた。

お空は綺麗な青色。雲は白かったり灰色だったり。

上から見た大地は緑にあふれ、とても綺麗。


……普通のお空に戻っていて、良かった。

私もなんとか役立ってるんだな、と感慨深いです。

ちなみに母は飛ばされないよう私のワンピースの胸ポケットの中、シャリティアさんはちゃんとしたドラゴンライダーの人と飛んでます。


「それにしても、どうしたんだろうねレオン様!」


風の音に聞こえ辛いので、叫ぶように声を出す。


「ろくでもない事でしょうから、美津様は無視で大丈夫ですよ!」


クルーレさんのこの一言に、過去に色々やらかされたんだろうなぁと同情してしまう私と母でした。


まぁなんやかんや。

約二週間離れていたお城に、久しぶりの帰還です。



――――――――――――――――――――――



「おお聖女よ!よくぞ無事に戻られた!!!」


ドラゴンライダーさん達に御礼とお別れを言って、裏手の小さな城門(目立ちたくない為に)から入ろうとしたら。

涙目のレオン様のお出迎え。意味がなかった、とクルーレさんの表情が言ってるのがにぶい私でも判りました。


「聖女様はお疲れなのですから、その様に暑苦しく近寄らないで下さいレオン様。」

「どうでも良い事に私の婚約者を巻き込んだら、お仕置きでは済みませんからね?」


本日もお姉様と弟様のお言葉がキレキレ過ぎてレオン様がガチ泣きしそうです。八つ当たりが不憫。


まぁクルーレさんとは婚前旅行やと〜とか言った次の日の帰還命令やから、機嫌は悪いんだろうなぁ。私もちょいと残念やし。

それでもこのままってのは可哀想やし。助けてあげよう。


「まあまあ話は中に入ってしましょう!ね?ね?」

「聖女よ……なんと優しい娘なんだ。婚約の知らせは来ている、クルーレ(あれ)は良い男だが中々強引な所もあるからそこだけワシは心配で、」

「王よ。」

「ひぃ!?」

「いやー私はクルーレさんが旦那さんになってくれるのが嬉しいです!だからクルーレさん剣から手を離しましょうね!!!」


レオン様、マジ危ないわ!!!

てかクルーレさんの堪忍袋だんだん小さくなってない!?

二人の間に入って止めていると、可愛らしい足音と声が聞こえてきた。

同時にクルーレさんの顔から表情が消えた。


「クルーレ様おかえりなさいませっ!」


こちらに来るのは蜂蜜色の髪、エメラルドグリーンの瞳の見目麗しい女性。背がシャリティアさんより少し低いくらいで、私よりかは全然高い。170位かな?

あの色合いは間違いなく、レオン様の娘さんであるオリヴィエ様だろう。

という事は本物のお姫様。おおぅ可愛い!


真っ直ぐクルーレさんに向かって来るが、その前に居る私に気付くと足をピタリと止めた。

信じられないモノを見た、と顔にしっかり書いてある。

成る程。判りやすいのは父親譲りらしい。


「クルーレ様。そちらの方、聖女様ですわよね?」


クルーレさんは会話するのも億劫だと言わんばかりの感情の消えた表情で姫様に目を向けた。

どうしたのクルーレさん。お姫様になんかトラウマ刺激されてるの?

レオン様に対する攻撃を止めるために握っていた腕を、いたわりを込めて撫でてみる。

クルーレさんは表情は変えなかったが、雰囲気は少し明るくなったみたい。良かった。


「そうですが、何か?」

「目の錯覚かしら。腕に抱きとめているように見えてしまって。嫌だわ私ったらクルーレ様は人に触れるのが苦手ですものね!」

「私はいつでもどこでも聖女様を抱き締めたいと思うし、側に居たいと思います。婚約者なのですから当然です。」

「………………こんやくしゃ?」


面と向かって言われると照れる。

私は顔を上げられなくなった。

そこにレオン様の声が響く。


「オリヴィエお前は下がりなさい。聖女の前で無礼は許さん。」

「婚約者って、どういう事ですの?」

「聞きなさいオリヴィエ!!!」

「こんな、こんな事って………聖女だからって何をしても良いと仰るの?」

「へ?」


何が?


「聞かなくて宜しいですよ。耳が腐り落ちるかもしれません。」

「えっ!?」


なにそれ怖い!なんかの魔法っ!?

怯えて耳を塞ぐ私にクルーレさんはやっと笑顔を見せてくれた。頭なでなで付きで。

あれ機嫌直ったの?

反対にお姫様の綺麗な顔が般若になってる。

わぁ第二のシャリティアさんみたいこっっっわ!


「っクルーレ様が美しく素晴らしいからって、聖女である事を盾にご自分に縛り付けるだなんてなんて傲慢な女なんでしょうっ!恥を知りなさい!!!」

「ふざけんちゃうわこんアホが!!!」


ピカッバリバリッ


「ふぎゃんっ!」


オリヴィエ様が何か言うのと母の雷が落ちるのは、ほぼ同時でした。

ちょっぴり髪の毛焦げて、ぱったり倒れるお姫様。


「なあ〜に勘違いしてんねん!クルちゃんが、先に、美津の事好きになってん!向こうが先やねんから文句あんならクルちゃんに言わんかい!!!」


うちの子は傲慢でもなんでもないわい!とバリバリ放電してる妖精さん。いやおかん。いやお母ちゃんやり過ぎやからっ!!?

クルーレさんは丈夫やからおかんの電撃何発受けようが全然平気やったけど!(実践済み)お姫様どう見ても普通の人やからっ!下手したら死ぬって!!!


「ぁあああごめんなさいほんまごめんなさいうちのおかんがあああ!」


慌てて駆けよろうとしたら足が地面につかない。え?あれ?クルーレさん?


「行かないで。」


私を抱き上げ羽交い締めにして物理的に行けない様にするクルーレさん。目にはうっすら涙まで浮かべて。おいこっちもどうした!?


「いやでもお母ちゃんが、」

「お母様はちゃんと加減なさいました。あれぐらいどうって事無いです。それに姉上も、他にも治癒出来る者は沢山居ります。だから、」


貴女はこちらに、としっかりと抱え直され(お姫様抱っこ状態)連れて行かれました。

えっえっと周りを見ても、兵士や騎士の皆さん、親であるレオン様でさえ手を振って見送る始末。


マジか本当にいいのかそれで!?


「良いのです。まずは、お話させて下さい。」

「ど、どんな?」


「私の、()()()()()()。」


聞いてくれますか?と困ったように笑うクルーレさんに、私はしっかり頷いた。


前にお胸貸してあげると、約束したからね。

もちろんちゃんと聞きますよ!


[妖精さんと美女]


「どちらでしょうか?」

「私はピンク着てほしいねんけど、、、多分嫌がるなぁ」

「ではこちらは?」

「うーん。これとこれがあの娘の好みで、、、、でも私こっちの着てほしいねん」

「確かに、美津様は顔立ちも愛らしいですし、お肌も白くて綺麗ですからこちらの色味の方が合いますわ。」

「そやろ?そやろ?あの娘自分は太ってるから可愛くないって思てるけどかあいい顔してんねんで若い頃の私に似て!まろっぽい眉も豆柴みたいでかあいいやろ!?」

「ま、豆?」

「あ、元いた世界に居た大人になっても子犬サイズのワンちゃんやで。きゃーきゃー言いながらクルちゃんの膝上でジタバタしてるの見ても子犬っぽいやろ?」

「、、、言われてみれば確かに子犬っぽいかも。」

「な!」




「お母ちゃん、友達相手みたいにして喋ってる。なんか楽しそう。」

「良かったですね。」

(なでなですりすり)



この数分後

妖精さんとお揃いに見える黄色のワンピースを着せる為、へばりつく黒騎士を剥がす美女と雷落とす妖精さんが居ました


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