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美人のトラウマがやってきた



青くなった空。白く光る雲。


「一晩でえらいもんやなー。」

「なんとかなるもんやなー。」


母と二人口を動かす。

もぐもぐとシャリティアさん達が作ってくれた朝食(本日は甘くないパンケーキと具沢山のスープ)を食べながら、私は昨日のことを思い出した。


――――――――――――――――――――――



機嫌の悪い二人をなだめながら歩くと、本日のお宿が見えてきた。

RPGの宿屋みたいな外観に[うさぎ亭]と書かれた看板。うん。ぽい。

ミスティリア(こちら)には瘴気はあってもモンスターや倒すべき敵っていうのは居ないらしいのでそこは安心。


そんな宿の入り口ではシャリティアさんと仙人みたいな真っ白な髭を伸ばしたお爺さんが言い争ってるようだった。


「聖女に対して何たる不敬!お戻りになる前に去りなさい!!!」


お姉様の怒鳴り声で色々と察した私達でした。

あれ、多分村長だな。


「以前の聖女様が身罷りもう数十年。作物に被害が出始め、まだ瘴気の薄いこの村でも先日鶏の足が生えました……やっと現れた聖女に頼り何が悪いのです!」

「だからと言って若い男を使い懐柔しようなどと、愚かな!…護衛となった騎士は聖女様に婚約を申し入れ、彼女は受け入れました。[血染めの死神]が貴方の息子に何をしようと私は知りませんよ!!!」

「な、なんと………ではわたしらがした事は?」

「騎士の逆鱗に触れてるでしょうね。命は有るでしょうがどこか()()()()()()()()()心配ですわね?」


お爺さん(おそらく村長)は顔面蒼白だろう。

私達が戻ってきてる事を分かって言ってるシャリティアさん。超笑顔で心配してるって言ってる。

なにこれ怖い。


やっぱりきょうだいやね。怒る時の笑顔が一緒だもの!


私達に気付かずふらふらと帰っていく村長(仮)を静かに見送り、宿屋に近づく。

シャリティアさんはやりきった顔で清々しく私達を出迎えた。



――――――――――――――――――――――



一晩眠っただけで大丈夫なのか心配だったけど、確かに紫に染まっていた雲が白く、朝日が昇った空は明るく澄んだ青色。

浄化効果はあったようです。女神様の力って凄い。


「聖女様の優しい御心のおかげです。」


シャリティアさんに褒められた。照れる。


「そうです。美津様が優しいのであって、女神は関係ありませんよ。」

(なでなで)


シャリティアさんと母の許可のもと、クルーレさんは遠慮なく私にベッタリです。

私の頭の中覗き放題。触り放題(二の腕とお腹)。それを誰も止めやしない。はて。


「セクハラとはなんだったかな?」

「私が触るのは嫌ではないでしょう?」

「その言い方やと私が変態みたいや!」


セクハラ好きってなにその特殊性癖。

ふといのがそんなん持ってたらキツイよマニアック過ぎてどうしようもないよ!


「それに美津様には慣れてもらわねばなりませんし。」

「?何を???」

「ふふふ。楽しみですね!」

「教える気が全く無いだとっ!?」


ああ。シャリティアさんとおかんのニコニコ顔がいたたまれない。

クルーレさんが離れないのが、私が本気で嫌がってないからだって皆解ってるから。余計に。



頬と頬を擦りよせ、クルーレさんが笑ってる。

若干接触が過剰になってるけど、なんでか私の為らしい。

…あんまり酷かったら般若のお姉様と雷落とすおかん(現実的に)が止めてくれるだろうし。



まぁいっか、と思っていたら。

この日は簡単に終わらなかった。



宿を後にし、皆で馬車に荷物を積み込んでいると朝の農作業を終えた村人達が近寄ってきた。


昨日見なかった娘さん達も居て、トラウマ野菜が無くなったから出てきたのかな?

良かった良かった。グロは駄目だよ、うん。


ぼけっとそんな事を考えた罰なのでしょうか?


「聖女様と黒騎士様のお陰で瘴気が消えました!」

「本当にありがとうございます!」

「どうか広場に!ささやかな宴を催しますので!」

「さぁさ此方に!」


鬼気迫る表情で私とクルーレさんを囲んで背中を押し腕を掴んで連れて行こうとする娘さん達。

「聖女様!」皆の驚く声がなんかもう遠いっ!?


え何これ中々強引ですね皆さん!!!



「え?え?あのちょっと待って!」

「さぁ騎士様もこちらにはやく、」

「――るな」

「え?」


「私に触るなっ!!!」


クルーレさんが引っ張ってた女の子を突き飛ばして、他の女の子も押し退けながら私の近くまで来てくれて。



「あ、クルーレさんっむ!」


助かった、と思ったのも一瞬でした。


脇の下に腕突っ込まれて抱えられて、高い高いの状態でクルーレさんにちゅーされた私。



………私の初ちゅーがこれとは一体なんの罰じゃい!!!



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