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聖女の旅立ち3



「クルーレさんから耳が生えたっ!!?」


私の魂の雄叫びにクルーレさんは我に返った様で、ポフンと音を立てて耳が無くなってしまった。


「あああ可愛かったのに!勿体ない!!!」

「「「聖女様マジか」」」


御者の兵士さんからのマジか頂きました。

え、なんで!似合ってたのに!


「みっちゃんはキモい虫系以外の動物は好きやで?私が動物の臭いが苦手でペットは飼えへんかったけど。ちっさい頃は公園とかで散歩してる犬みっけては近くで眺めてたで!」

「眺める?」

「体が大きい自分が近寄って怯えたら可哀想やからって言うとったよー。でも向こうから近寄って来たら遠慮なく撫でまくってた。」

「聖女様が弟を選んで下さり本当に良かったです!!!」


そんな会話が背後で行われる中。

うっすら涙浮かべながら抱きつくクルーレさんにまた一個、内緒事減らしてあげられて良かったなーと私は思いました。

……獣人さんが主役の絵本多めに持ってきてたのはその為だったか。

今度は撫でさせて貰おう。



「オックス、土下座!!!」

「ぶべらっっっ」


そんなカオスの中走ってやってきた赤毛の指導係らしい騎士様が、頭引っ掴んで床にめり込むほど叩きつけたお陰で赤毛は静かになりました。


「従兄弟が失礼しました。聖女様はお気になさらずどうか出発して下さい。」


蜂蜜色の髪とエメラルドグリーンのその騎士様はめっちゃいい笑顔でいってらっしゃい言ってくれました。

めり込んだままグリグリしてる所を見るとこの騎士様も怒らしたらあかんタイプや。


「あ、ありがとうございます。」

「クルーレも。いつもすまんな。この馬鹿は無視してくれていい。」

「……王太子殿下がその様に仰られるなら。後始末はお任せします。」

「ああ!任せておけ!」


なんとおエライさんやった。

王様、自分の息子に馬鹿の躾頼むって…。

え、赤毛と従兄弟?

クルーレさんに重い体を抱きかかえられたまま乗せられ、出発させられた馬車の中でシャリティアさんに教えてもらった。


彼はテオドール・ミスティー。

レオン様の息子で第二王子。しかし正妃との間に生まれたので王位継承権は第一位。

第一王子であるレオナルド様は獣人の側室との間に産まれた子供で、魔法使いとして、また獣人として高い能力はあるがあまり国政に興味もなく各地を転々としては時々生存の報せとして現地のお土産を送ってくるらしい。

自由だなおい。


そして赤毛騎士ことオックス・サイス。

なんと彼の母親がレオン様の実の妹である事が発覚。

王の妹である自分を、とても自慢する高飛車なお方だそうです。


「あーだから調子乗ってるんですね。」

「王も妹には甘かった様で、思うように注意出来なかったツケが今王太子に降りかかっています。」


なんと不憫な王子様!


「でも王子様初めて見ました。レオン様の部屋にはいつも居なかったですよね?」


クルーレさんに会いにちょいちょい遊びに行ってたけど見たことない様な?


「確か、聖女様が召喚されて数日後には隣国のリアーズに向かわれたはずです。来月にはテオドール様の妹君であるオリヴィア様が留学先から戻られるので、その日程の調整などですね。」

「学校もあるんですねー。姫様はお幾つなんです?」

「今年で二十歳になられたと。」

「会うの楽しみやねー!」

「ねー!」


母と二人お姫様に夢を見る。

可愛いんだろうなー。熊のお姫様って思うと不安だけど、テオドール様の妹でわざわざ学校に行く位真面目な人なら問題なさそうやし!


「「…………。」」



姉と弟は、言えなかった。


留学させられた原因が、弟が拒絶するのも無視し結婚を迫りにせまり、そのストレスから胃に穴を開け、王と王太子殿下の目の前で血を吐いたからだ、と。


これを機に弟が益々人との距離を取り、死神と呼ばれるまでの無茶を繰り返してきたのだ、と。



楽しみにしている聖女様達には言えぬ二人だった。



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