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人生初の黄泉がえり現場2

本日二度目の投稿です。

これでまた一区切りになります。


では。




「…………………。あの、みなさん?」

「「「「「…………………。」」」」」

(じー)


美津(みつ)様が離れて数分経ちますが、話したいと仰ったお父様とそのご兄弟は私の顔から目を離さない。

誰が誰かは記憶を覗いてるので判るが、何かあるのだろうか?


「お前美津を騙してるな」

「え?」


美津様の一番目のお兄様、いきなり何を?


「お前みたいなイケメンなら女なんかそれこそ選び放題やろ、今あいつを選ぶんは聖女やからやろ?」


……成る程。皆さん、二番目のお兄様の言う様に思っている、と。


「私は自分の顔が嫌いです。」

「えなにそれもったいな!」

「あき、お前なぁー。」

「だってジャ○ーズでも居ないよこんなキラキラ王子!……まぁ、それに人見知りのねぇちゃんやで?流石に顔だけでは相手選ばんやろ?」

「…まーそーやな。おとんらも疑ってかからんと、話くらいちゃんしーや。」


……弟さんと三番目のお兄様は普通に接しようとしてくれていますね。嬉しいです。


「有難うございます。美津様も、私の笑った顔を好いてくれています。」

「えなにやっぱねぇちゃん顔で選んだん?」

「いえ。そう言う事ではありません。」

「そんなダラダラ言わんとはっきり言えや。どない意味や。」


お父様は、私が他のご家族とお話していても、一度も私から視線を晒さず睨みつけていた。真剣に。公平に。見定めようとしてくれている。

だから私も、正直にお答えします。


「美津様の言う笑顔は、心の底から楽しくなって笑っている顔の事を言うそうです。」


事務的でもなく。その場を取り繕う為でもなく。

心の思うまま、自然と頬が緩むのを私は彼女と出逢ってから毎日繰り返している。


「今の私は美津様の前以外で[ホントの笑顔]を作ることは出来ません。楽しいも嬉しいも、今彼女が教えてくれているんです。」

「「「「「………。」」」」」

「私は今、嬉しいです。彼女の大切な人達にに会う事が出来て。……もし許されるなら、お母様にも直接ご挨拶したかった。とても家族想いで、優しくて、賑やかな方だったんでしょう?」


裕福ではなかったのだろう。

いくつか部屋はあったが物も多く、一つの小さな部屋に大小の子供が二、三人で眠り、似たようなくたびれた服を着て遊びに行く子供達。

悲しい事も、苦しい事も、泣くだけの日もあったけれど。

それ以上に賑やかで、笑いの絶えない家族だった。

いつだって初めに母娘が楽しそうに笑って。

それにつられて兄弟達も厳しそうな父親も笑うのだ。


「…そうやな、美津はよう美智子(みちこ)に似た。騙されやすくて、勘違いしやすくて、涙もろうて……どうでもいい事でよう笑って、人も笑わして…人の痛みを解って優しくできる子や。」

「はい。」

「…ワシらがそっちには行けんのやな?」

「……難しいと思います。」

「なら、あんたに頼むしかないんやなぁ。………あの子は能天気なんか抜けてるんか、ちょっとの事では傷も付かんし、むしろ気付きもせん。そんでも嫌な事あったら心配させへん様に誰にも言わんと我慢する子や。……そん時はなんも言わんでええ、側に()ったってくれ。言いたくなったら自分で言うやろうから。」

「はい、承知しました。…有難うございます。今美津様を呼ん、」


「うああああああああああああああんっ!!!」


なにっ!!?


「美津様如何されました!?」


敵の気配などしなかったのに!!!


「え?え?どないしたん美津!ちょっとイケメンさん何か居るの変なん居るの?」


鏡を持ったまま泣き叫ぶ美津様に近付けば、右肩に小さな魔力の塊が存在した。

これは、妖精?豊かな森に住み人とあまり交流を持たない彼等が?


「…え…………っな、何故この様な場所に妖精が???」

「へ?わたし?え?()()()()()()()()()()()

「おがあちゃああああああああんっ!!!」

「ふぎゅっ」


ああ美津様そんな幼児がぬいぐるみ抱きしめるみたいにしたらっ!口塞がって息出来ないですよ!

というかお母様と仰いました!!?


「お母ちゃん生きてたーっ!!!」

「美津様落ち着いて下さいお母様の呼吸止まりそうです」


再会した途端の別離はやはりどうかと思います。



――――――――――――――――――――――






世にも珍しい黒髪おかっぱヘアーの妖精は、やっぱり私の母、美智子さん本人でした。


今の母がどういう状態なのかと言うと。

女神様が聖女の力である魔力を付加させる時、私が持ったままでいた母のお骨にもうっかり魔力を与えてしまったそうなのです。


母の魂は骨壷の中で骨と一緒に眠っていて、そこに女神の魔力が降り注ぎ一気に覚醒。気付いたら今の姿になっていたそう。

しかしまだ出来立てホヤホヤな身体は不安定で、私達は勿論誰にも姿や声が届かなかったそうです。

母本人は、これが守護霊ってやつの姿なんやと勘違いして私の守護霊のつもりで付いて回ってたそうです。


まぁ私が日課にしていた朝の挨拶に返事をしたり、城の中をふよふよ探検したりと結構満喫してたみたいですが。


今回はもしかしたら家族皆に会えるかもと気になって朝からずっとくっついていた、と。



「なんじゃそりゃ……」


うん。私も思ったよお父ちゃん。


「いやー私もびっくりしてんで?あっ!女神様が(あきら)さん(父)に私のお骨引き取ってもらえたら、この鏡とそっちの鏡が固定されるって言ってたわ。んで。ミスティリアで一ヶ月、晃さんとこで一日一回、こんな風に空間繋げて少しくらいの会話なら出来るよーって!」


………女神様。有難う。

クルーレさんの事で色々悩まされたけど、許しちゃる。

すっげー嬉しいおっきなプレゼント、貰っちゃったもの。


「これでお別れ、違うの?」

「えー嫌や!私は美津の花嫁姿見て赤ちゃん見て赤ちゃんの匂い嗅ぎたいから諦めん!まだ居る!」

「台無しや!!!なんか色々台無しや母ちゃん!!!」

「………なんやろ、これ。」

「これが噂の、正月とクリスマスと誕生日が一気に来たってやつ?」

「なんか違う気ーするけど、ええんとちゃう?」



皆ぎゃあぎゃあ言うてるけど。

さっきから涙と鼻水止まってないし。

頑固なお父ちゃんまで泣いて、そんで笑ってる。



そりゃそうや。

皆、またもう一回会いたいって、思っててんから!



「お帰り、……おかえりかあちゃん。」

「あーあーもう、仕方ないわねこの子は………ただいま美津。あんたよう頑張ってたねぇ!」



黒髪おかっぱ頭の妖精さんはふよふよと宙に浮かび、またもや泣きじゃくりだした私の頭をそのちっさな両手で撫でてくれた。


その姿を、クルーレさんは何か眩しいものを見るように眺めていて。

私の大好きな、心底幸せ噛み締めてるって笑顔やったのに。


もったいない事に、私はそれに気付かなかった。

残念。



[妖精さんは見た]


「なーなーイケメンさん」

「私の事ですか」

「そーそー!あのなーイケメンさんは美津の事どこまで考えてる?」

「出来たらクルーレとお呼び下さい。どこまでとは?」

「結婚とか子供とかこのまま城に住んだままなんか新居に引っ越すんかクルちゃんの実家に行くんかとか色々あるやん」

「(クルちゃんって私の事か)お母様は私が相手で宜しいのですか?」

「んークルちゃんは美津に酷いことしなさそうやしなー。美津の寝込み襲わんかったし」

「!」

「一回ちゅーしようとしとったけど、顔真っ赤にしながら我慢したやろ?見かけによらず純情やなーって感激してん!」

「!!」

「あとなーあとなー」

「すいませんもう勘弁して下さいもうしません本当です」

「えー人と喋んの久しぶりやからもっと言いたいわー」

「お待たせーあれお母ちゃんとクルーレさんもう仲良くなってんな」



謁見前、トイレ休憩中の会話でした


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