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人生数回めのマジギレ2

せっかくなので事件が終わるまで連続投稿。

これで一度区切りです。




彼女は何を言っているのだろう。


「だーかーらー!正直に!クルーレさんの口で!最初っから説明するなら全部許したるって言ってんの!嘘やと思うなら私のてぇ握ってみたらええやん!」


触れて良いなどと……なんと都合の良い夢を見ているのか、私は。


「……聖女様……………。しかし私は、貴女の嫌いな嘘を、」

「嘘ついてない!!!」



「クルーレさんは一回も嘘ついてない!私の頭撫でんの好きで、私を膝抱っこすんの好きで、私に餌付けすんの好きで、私が恥ずかしがってギャーギャー騒ぐの見るの好きで、私が笑ってるの好きで、私と手ぇ繋いで眠るのが好きやろ!!!間違ってたら言ってみいや!どれが嘘や全部本当やろうがこのアホボケカス!!!」



ああ。

自分の心を突然暴かれるのは、こんなにも恐ろしく、恥ずかしく、愛おしく感じるのか。

暴いてくれたのが彼女というだけで。



「はい。……怖くて怖くて、堪りませんでした。」


貴女の目に私が映らなくなる事が何よりも恐ろしい。

早く、彼女に応えなければ。

またその目を腫らしてしまう。


「………聖女様の言う通りでした。私は貴女に、一度も嘘を口にした事はございません。……少しだけ、隠し事があっただけです。私のした悪い事は、それだけでした。」


「…う、ゔん……そうでじょゔっ?」


やはり彼女は大粒の涙を零しながら、それでも一生懸命笑顔を作ろうとしている。


「はい。そうでした。……こんなに泣かせて、申し訳ありません、美津(みつ)様」



こんな私の笑顔を望んでくれる、優しい人。

これからもずっと、お側に居させてください。




――――――――――――――――――――――



クルーレさんに初めて名前呼ばれた私は、驚くと人間はガチ泣きしてても涙って止まるんやなーと場違いな事考えてしまい、

「ふふっ」

現在接触中のクルーレさんにもろバレして笑いを誘ってしまうのだった。


………うん。やっぱクルーレさん楽しそうに笑う方が何倍も素敵やから、恥ずかしいのはもうちょい我慢しよう。


腕の力が強くなったから、間違いないやんな?



















「いやいやいやいやお待ちください聖女様!」


「「「「え?」」」」


涙止まった私、桃色頬のクルーレさん、嬉し泣き中のシャリティアさん、号泣の熊(王様)。

四人揃いの美しいハテナでした。


レオン様と来た近衛兵に取り押さえられてる赤毛がなんか言ってる。


「勝手に頭の中を覗かれて、何故それで済むんですか!?個人のプライバシーなど奴には関係ないのですよ!!?」


「そう言われましても。」

「聖女様がお許しになっているのです。問題などありません。」

「うむうむ!クルーレは懐に入れた者をそりゃあ大事にする男だ。聖女は中々に見る目がある!」

「………………………。」

(すりすりなでなで)


上から私、お姉様、王様、会話まるっと無視して私の頭に頬擦りする黒騎士様。


いやー内緒事が無くなったお陰か、皆さん超フリーダム。あ通常運転でしたねうん知ってた!

短い付き合いの私でも濃ゆい人達だって知ってた!


そしてだ。


「いや私もともと隠すほどのプライバシー思いつかないですが。」

「何故です!!?」

「何故って、話せないって事はやましい気持ちのある情報でしょ?私基本的に言いたい事その場で好き勝手に言いますし、嫌な事あってもすぐ顔に出ちゃうんで隠せないっていうか?」


ババ抜きがいよーに弱かったです。私。


「な、な……!」

「私は今生きてる人生において、人に話せない様なやましい事も、生き方も、亡くなった母に誓ってしておりません!勿論羞恥心は人一倍あると自負してますので今後触るのはタイミング見計らってになります。なのでそろそろヘルプですお姉様!!!」

「かしこまりました。」


べりっと音がしそうなほどの勢いで引き離されたクルーレさんは涙目になってるが私の羞恥心の限界です。おねがいおおめにみてください。


私の視線に悟ったらしいクルーレさんは大人しくなってくれた。シャリティアさんに首根っこ引っ張られてる姿も懐かしいなぁ。


治療中に寝落ちて結果的に同衾してしまった時。

私が目覚めるとあの格好でお説教されてたなぁ。


「あ、貴女は異常だ!」

「………成る程貴殿は首が要らぬらしい」

「ひぃっ」


突然空気が痛いと感じるくらいクルーレさんを中心に何かがビリビリ振動しだした!!!

もしかしてこれって魔力!!?


「止めろクルーレ!!!」

「我が愛しき人を侮辱したのはその覚悟あっての事だろう?死んでその首で償え」


「いやそんなもん要らんわ!!!」


クルーレさんの背中をバッシバッシと叩きまくって何とか阻止した私って、偉い。




後にこの事件は


[聖女と黒騎士のダブル公開プロポーズ事件]


などと呼ばれる様になり。



私がリアルorzポーズ出来る位まで回復してると知る事が出来るのは、次の日の事でした。






ちなみに後日。

バッシバッシと叩かれた背中に紅葉の様な手の跡が残ってしまい、半泣きで手当て(治癒魔法)する聖女様と黒騎士様の姿が中庭で目撃されました。


何故中庭なのかというと、鍛錬中の黒騎士様を見たいと仰られた聖女様のためご案内した所。

その日はとても暑く、その為か上半身裸で素振りをしていた黒騎士様を目の当たりにしたからです。

羞恥で真っ赤になったと思ったらだんだんと顔を青ざめさせ、「ごめんねぇ痛かったですよねホンマごめんねぇ」と、聖女様の国独特の訛りの言葉で背中をさすりながら謝り続けていたそう。


「大丈夫ですよ」と穏やかに笑う黒騎士様。撫で続ける聖女様。

黒騎士様の力を知っても戸惑うことなく手を伸ばす姿に、送り届けた兵は確かに彼女は聖女なのだと実感したとか。


そして一般兵やメイド達の間で

[黒騎士様と聖女様が二人の時は邪魔しない]が暗黙のルールとなったそうです。






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