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昼寝する吸血鬼

 時代が変われば貨幣が変わる。貨幣が変われば経済も変わる。そして遂にやってきたのが――


「コンビニエンスストア」

「は、はい。こ、コンビニです」


 ガラス張りの扉の前に立つとウィーンとモーター駆動音と共にピロリロリンと音がした。カウンターに立つバイトはやる気のないラッシャーセー。


「こ、此処で本当に良いのですか?」

「構わん」


 駄菓子コーナーに向かうと学校帰りの中学生か高校生が菓子を選んでいる。

 エルフ、ドワーフ、獣人に人間だ。

 しかし、ドワーフ以外全員非処女。そして、ドワーフを囲う3人がドワーフに万引きしろと命令していた。万死に値する。


「貴様達は何をしている?」


 音も無く忍びより、3人を抱き寄せる様に囁く。3人は声にならない悲鳴を上げて腰を抜かし、ドワーフは3人に突き飛ばされて棚の商品をかなりの数落としてしまった。


「つ、ツェペシュ様!?何を為さられているのですか!」

「この非処女共が処女に犯罪教唆をしていたので注意してやったのだ」


 面白そうだからドワーフの影に俺の魔術を流し込んでおく。これで俺は何時でもこのドワーフの影から出現したり、周りを伺う事ができる。


「これとこれとこれ、それにこれとこれにこれ。

 飲み物は……ふむ。処女の生血は流石に売っていないか。ならコーラとこの……なんだかよく分からんがこれにしよう」


 カゴをメガネエルフに持たせて弁当コーナーで大量の弁当と飲み物を購入し、菓子等も買う。


「こっ!こんなに買って食べられるのですか!?」

「当たり前だ。

 今は無性に腹が減っている。お前達の為人間を食わんでやる代償だと思えよ。人一人とこの量なら安いもんだろう」


 因みに初潮前の人族を使った肉料理とか精通前の獣人族を使った肉料理とか結構美味しい。前世だったら想像するだけでゲロちゃんものだったが、今では最高に美味である。


「け、経費で落ちるかな?」

「安心しろ。経費で落ちなかったらその内、働いて返してやる。

 おい、そのうまにくボーとか言うのを各種類2本づつくれ」


 ホットコーナーのメニューも忘れない。

 コンビニを後にして家に戻る。家の前には警官隊と共にこの国の偉い人っぽい連中が並んでいた。

 メガネエルフは大慌てで人垣と護衛の警官隊に身分を説明し、俺を紹介する。


「お初にお目にかかります、私は」


 お偉いさんの一人、ババアのエルフが一歩前に出ると手を差し出しながら名乗ろうとしたので指を鳴らす。


「おい、頭が高いぞ小娘。それと、此処はテメェ等の家の前じゃねぇ。何勝手にパーティー開いてやがる。

 次やったら全員串刺しにして市内引き回した上にあの一番高いビルの屋上に並べて最高の見晴らしでパーティーさせてやるからな?分かったら帰れ」


 居並ぶマスコミに告げるが何社か帰ろうとしない。それどころか口々に何やら叫び出すので指を鳴らして髑髏兵召喚からの串刺し。

 サイコーですわ。


「俺は警告したぞ?」


 警官隊がお偉いさん達を庇う様に立つので肩を竦めてみせるが、反応しない。取り敢えず、お腹空いたしさっさと要件済ませてもらいたい。


「立ち話もなんだ。

 家に上がれ。話は食事をしながら聞いてやる」


 脇で口元に手を当ててその場にへたり込んでいるメガネエルフからコンビニの袋をドクロ兵に回収させて家に向かう。

 串刺しを持ったドクロ兵に市内を歩いた後に飾れと指示を出してからコンビニ袋から弁当を取り出す。

 テレビやパソコンらしきものがあるが、使い方がわからん。


「そこのわっぱ。

 これはどう使う?マスコミの映像が見れる機械だろう?」

「は、はい!

 こ、これに魔力を流し込みお好きなボタンを押して下さい」


 リモコンだろうボタンが大量に付いた装置を渡されたので軽く魔力を流して電源ボタンを押すとプンと音を立てて映像が出た。映像には速報と書かれたテロップと共に何やら上空からの映像が映し出される。

 窓を開けて空を見ると、カメラを持った翼人族が飛んでいるではないか。

 そして、画面の隅にはカメラマンだろう女の顔が映し出されている。所謂自画撮りみたいなもんだ。


「ほぅ?

 面白いことを考えるな」


 使い魔のコウモリを飛ばして、一人の翼人族を呼ぶ事にした。


「特別にお前だけ独占インタビューさせてやろう。今すぐに降りてこい。断ったら両手足を捩じ切ってカメラに晒してやる」


 ちょっと脅すと凄まじい速度で飛んできて窓から中に入って来る。そして、その場で頭を垂れた。


「良いぞ、翼人。

 貴様等もこの劣等種を見習え。服従と敬意さえ見せれば俺は寛大だ。世界で一番優しい吸血鬼と言えばこのツェペシュさん家のヴラド君だぞ?」


 ソファーに座り、脇で傅いている翼人にカメラを向ける許可を出した。すると、画面には俺がソファーに座っている様子が確りと映っていた。

 家電量販店のビデオカメラコーナーで味わう様なよくあるあれみたいな感じである。


「で、何の用だ?」


 コンビニ弁当を適当に開けてスプーンを使って食べてみる。


「ほぉ!これは美味いな。

 お前達は何故メガネエルフの家に来た?俺に会うためだろう。その要件を言え」


 脇にいた獣人を見ると獣人は震えながら恐れながらと告げた。


「わ、我々はツェペシュ様と話をする為に――


 指を鳴らすとドクロ兵の一体が現れて、窓から獣人を投げ捨てた。


「要件を言え、と言った。

 次は槍で突くぞ」


 その隣のエルフを睨み付ける。


「お、恐れながら、ツェペシュ様は一体どう行動為されるお積もりですか?」

「どう?

 取り敢えず階級に縛られる事はなくなったから自由に生きてみたい。

 コンビニでバイトをしたり、特に用もなく公園で美味そうな子供を眺めながらコンビニ弁当を食べたりしたい」


 最高に美味である。


「犯罪シンジケートに加入して無国籍の子供を買うというのも良いな。

 人族の子供が良い。少し肥えさせてから一流のコックを雇って全身を料理させるんだ。

 脳みそがなーあれが美味いんだ。こう、首だけ綺麗に落としてな?頭骨をこめかみ辺りから水平に慎重に切り開くんだ」


 自分の頭を指さしながら示してやる。あれだ。ハンニバル・レクターも食ってたし。


「生きている状態で治癒魔術と並行で切り開いて活造りで食べるとまた味も変わって美味いんだぞ。

 想像してみろ」


 言った瞬間何人かがトイレやら洗面所やら台所に走って行った。何だ?ああ、本当に想像したのか。馬鹿だな!


「因みに翼人も大胸筋が大きくてな、良く叩いてから塩コショウでステーキにするのも美味いんだ。

 獣人族を含めてお前達は筋肉質だが歯応えがあって実に美味い」


 カメラマンたる翼人の腕から胸に掛けてを触って確かめる。


「うむ。貴様はハーピーの癖に胸が小さくて余分な脂肪が少ないからきっと美味いぞ」


 匂いを嗅ぐ。


「しかも処女じゃないか!良いぞ!」


 血が美味ければ肉も美味い。全て美味しい。

 処女ハーピーのフルコースとか胸熱だな。


「ただ、エルフ。これはいけない。

 只々、不味い。処女のエルフでも臭いのだ。長い間洋服箪笥に仕舞っておいた古ぼけたセーターの様な臭いがする。肉も血も全て臭いのだ」


 魔力は異様に高いから栄養ドリンクとか漢方薬とかみたいに不味いの我慢して食べるものだろうな。


「あ、貴方は一体どれだけの人間を食べてきたのですか!」


 獣人のお偉いさんが叫ぶ様に告げた。見れば青い顔をしながら俺を睨んでいる。


「んー?

 おお、そうか!」


 遂にここであの名言の出番だ。


「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」,


 よーし!決まったぞ!最高にハイって奴だぁー!

 言うと案の定全員が絶句していた。


「貴様等は何か勘違いしているようだが、貴様等は俺から見て牛や馬、狼や虎等の上位に位置する被捕食対象だぞ?

 俺は優しいからお前達の勝手に決めたルールに則ってある程度は行動してやってるが、本来ならばお前達は俺の決めたルールに従って行動するのが常識なんだ」

「な、何を馬鹿な!?」


 ドワーフが絶句した。


「俺は優しいから失言は一回まで認める。

 多分封印されてるだろうけど、ヘルシングならこのうまいんボーの如く貴様等を選び、食べて、食べかすを脇に捨てるぞ?」


 ヘルシングはマジでヤベェ。真祖吸血鬼の第二位でヘルシング家の当主。本来ならばアイツはアイツで俺の一位の座を狙うべきなのが、一度やり合ってから俺を心酔して俺に敵対的な家を滅ぼしかねなかった。

 元々は23家あったのだがあいつが10家程潰して13家になったのだ。つまりヤベェ。

 うまいんボー美味い。


「が、俺は優しいからそんな事をしない。

 お前達もペットを無碍に扱うことはしないだろう?」


 俺もそうだ。


「ペット……」

「し、しかし、我々は神代戦争で勝利した!」


 獣人のお偉いさんが自分に言い聞かせる様に告げる。バカなのかなコイツ?馬鹿なんだろう。


「神代戦争などと大層な名前が付いているが、あれは魔王が勝手にやらかしただけで我々は負けてはいないぞ?特に俺は」


 俺の言葉にお偉いさん方は眉を顰めた。なんだ?もしかしてあの戦争は魔人族とその他の族種との戦いだと思っていたのか?だとしたらそれは大きな間違いだな。


「今の貴様等の人間区分が分からんが、当時の魔族とは魔人族、吸血鬼族、鬼族、悪魔族その他全てを引っ括めた通し名だ。そして、魔王とはその中でも最も人口の多い魔人族の長を指す名称だ」

「つ、つまり?」

「あれは魔人族とお前等の戦いでそこに俺達吸血鬼族やら悪魔族が一部加担していただけだぞ?

 現に俺は一度もお前達の世界に侵略してねぇだろ?」

「その気になれば人類が負けていた、と?」


 人間のお偉いさんが尋ねる。


「お前達は豚や牛が暴れているのを見てどうする?

 俺は暴れている個体だけを殺す。残りはそのままだ。勝つ負けるのはお前たちの価値観で俺はお前達を圧倒し過ぎているからそもそも戦っていたと言うよりもお仕置きしていたに近いのだ」


 現に俺が眠る前までは普通に領地を敵に侵された事ないし。

 まぁ、その理由が俺の配下の者と骸王から貰っている骸兵、髑髏達のお陰なんだがな。


「あ、そうだ。

 ヴォルニールの奴どうなった?」

「ヴォルニール、骸王のヴォルニール様ですか?」


 お、有名になったな。


「そうそう。

 アイツ。骸骨マン。黒金の骸骨マンだな。クソ雑魚だったけどスライム族と結託してお前等人間共にかなり善戦してたよな」


 なんか、スライムをドクロに纏わせて対魔術、対衝撃耐性をガン上げしてスライム特有の機動力の無さを髑髏兵が運搬する事で克服したのだ。

 あれは大爆笑した。


「ヴォルニール様は共和国にてスライムの飼育と管理、共和国の軍事の一端を担っています」

「えー?めっちゃ出世したじゃん。

 つーか、これ全世界放送?」


 ハーピィに尋ねるとハーピィは国営放送局ですと頷いた。


「国営放送局ならそれなりに海外も見てるのか。

 おーい。ヴォル。見てるか?近い内そっち戻るわ」


 カメラに手を振り、それから別の弁当に手を伸ばす。


「で、他に何かあるか?

 話ぐらいなら聞いてやるぞ」

「で、では、貴方は自分の国を持とうとか、魔王軍を復活させようと言う気はありますか?」


 人間の一人がそんなことを言い出す。こいつ話聞いてたのか?取り敢えず、脇においてあったフォークで目玉を突いてくり抜き、口に放り込む。プチュンとした感触のあとトロリとした液体が流れ込み美味である。

 人間は目を押さえて脇を転がり別の人間に引つられて部屋を出ていった。


「コイツは俺の話を聞いていたのか?

 俺は超優しいだけで、お前等人間共に無償の愛を持ってる訳じゃないんだぞ?」

「つ、ツェペシュ様は、じ、自分の軍勢を率いて人間達に復讐とかそう言う事をする事はありますか?」


 脇のエルフが震えながら聞く。


「復習?

 別に領地管理とか面倒かったからしねぇかな。

 こんぐらいの家と世話役一人居れば後は適当にやるわ。本格的に家とか仕事決まるまではここに住むわ。あ、それとフランちゃんに会いたいから居場所教えて」

「ふ、フランケンシュタイン博士は既に死亡しております」

「は?ハイエルフって寿命の概念ねぇべ」


 1億年経てばババアになってるかもだけど。


「い、いえ、それが、その、ツェペシュ様が起きなくなって領地が滅亡したあと、原因を知ったヘルシング様がフランケンシュタインの命を狙い……」

「殺しちゃった?」

「い、いえ、それを事前に察知していたフランケンシュタイン博士はヴォルニール様の下で血液を全て抜き自身の作り出した特殊な溶液に浸かって保管されています」


 なんじゃそりゃ?


「死亡っつーか、冬眠中みたいな?」

「ヴォルニール様はそう言っておられました」

「え、なら、何処で寝てんの?」


 めっちゃ見てみたい。


「ヴォルニール様以外は知らないので不明です」


 なるほどなー

 アイツ何気にボインちゃん好きだもんなーやるチンコねーのに!


「なら、ますます、会いに行かねーとな」


 序にヘルシングにも会いに行かねーとな。アイツなら普通に明日には会いに来そうだけど。

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