第3話「ここをキャンプ地とする!」
プロローグから第2話までを修正しました。
具体的にはアテナにキャラクターづけをしようとしていたのをやめました。初心者の私は話の続きを書く方に集中した方が良いと思うのです。
海外出張中の執筆? そんな余裕はありませんでした!!!
「ここをキャンプ地とする!」
いやー、一度大声で言ってみたかったんだよね、このセリフ。気持ちいいわー。
「かしこまりました。では開拓者、拠点を作りなさい」
アテナがそう言ったかと思うと、開拓者はやや大きめの家に変化した。具体的に表現すると、ピカッと光ったかと思えば次の瞬間には家になっていた。開拓者って、人間じゃなかったのか……。
「これが拠点?」
「はい、内部の倉庫に建築に必要な資源が入っております」
「へぇ、どんな?」
「主人からは食料、木材、石材、金が指定されております。こういった資材ではなく、すべて通貨で行うことも可能です」
むむむ、ちょっと悩む。
爺さんが指定してきた資材は、ゲームのシステムを決める重要な要素だ。
たとえば通貨だけだった場合、プレイヤーはお金を稼ぐことだけを考えれば良い。対して食料、木材、石材、金など必要な資源が複数に分かれている場合は、それぞれの資源のやりくりが必要になってくる。
前者の方が簡単ではあるが、後者の方だと余った資源を売って不足している資源を買うといったトレード機能をもたせることもできる。単純に自由度が広がるのだ。
すでに指定もされているし、俺の作った“街づくりゲーム”と同じ仕組みでもある。今回はこのままで行こうと思う。
それに、まだ何もできていないのに通貨だけあるのもおかしいしな。
「いや、そのままでいいよ。じゃあ早速作ろうか」
「はい、主人のためによろしくお願いします」
拠点のなかには、俺たちが暮らせるくらいのスペースといくつかの資材があった。
「それで、この資材からどうやって街を作ったらいいの? まさか俺が手作業でやるの? 絶対無理だよ」
自慢じゃないが肉体労働は苦手だ。一日中パソコンの前に座ってる人間にそんなことをさせてはいけない。ソフトウェアエンジニアに焼きそばを焼かせるようなものだ。
「メニュー画面からできるようになっております」
「メニュー画面?」
「『メニューオープン』とおっしゃってください」
「メニューオープン。うわっ」
その言葉を口にした瞬間、視界内にさまざまな半透明で青い四角形の枠が飛び込んできた。
「これがメニュー? へぇー、よくできてる。面白いよ」
「はい、そこから必要な施設を建築できます」
「なるほど。どれどれ……、まずは建築→住宅っと」
俺はメニュー内の「建築」と書かれているボタンをタップし、続いて表示された「住宅」をタップしていく。
「さて、どんなのが建築できるのかな? なになに、竪穴式住居に高床住居って、ちょっと住宅が古すぎない!?」
どちらも縄文時代から弥生時代にかけて――ハッキリ言えば紀元前に作られるような代物だ。爺さん、俺に縄文時代からやり直せって言うのだろうか。どんないじめだよ。今すぐストライキしたい。
「アテナ、これ何とかならないか?」
「方法は存じ上げませんが、ここは主人がプレジデンテのために創造した世界ですから、プレジデンテが自由に変更できるのではないですか?」
なるほど、たしかにそうだ。俺が自由に決めていいんだった。すっかり流されてしまっていたな。
「変更なぁ、うーん。いきなり現代にしても雰囲気ぶち壊しだし、かと言って江戸時代ってのもなぁ。時代モノはあまり惹きにならないんだよなぁ……」
そのまま10分くらいウンウンと唸っていたが、ふと頭上に電球。
「そうだ! 国を変えてみるってのはどうだ?」
紀元前からゲームが始まる、というのは悪くない。問題は日本だと文化レベルが低すぎることだ。だったら文化レベルが高いところを基準にしてしまえばいい。
「今からここを古代ローマとする!」
そう宣言したあともう1度メニューを開いてみると、住宅にギリシア建築やローマ建築風の建物が追加されていた。
「やるじゃん、これだよこれ」
と言っても追加された建物の大半は木造だ。てっきり古代コンクリートを使った石造住宅がずらりと並ぶと思っていたが、どうやらローマでは木造住宅が一般的らしい。
ローマの建物と言えば石造というイメージだったんだが、まあいいか。
「じゃあ、拠点から少し離れた場所に住宅を建ててみよう」
俺は人間が5人くらい暮らせそうな平屋の木造の家――というよりも小屋を建築するように設定していく。
「とりあえず、1軒建ててみるか。えーっと、建物を選んで……場所を決めて……『これでよろしいですか?』……はい、っと」
完了ボタンをタップすると、建築を指定した場所まで拠点から木材が飛び出していった。そして、カタカタカタカタカタとまるで積み木の玩具でも組み立てるかのように自動的にできあがっていく。
気づけば、そこには立派――とは言い難いがそれでも雨も風も防げそうな1軒の小屋が建っていた。
「ははっ、こりゃすごいな」
建築の仕組みが分かったため、今度は複数の小屋をまとめて建築することにした。
小屋ごとにデザインを変える、なんてめんどくさいことはしない。同じサイズ、同じデザイン、同じコストの小屋がいくつも並ぶように設定する。住めればいいんだよ住めれば。
カタカタカタカタ...大量の木材が飛び出したかと思うと、あっという間に小屋が組み上がっていく。住宅街のできあがりだ。
「よし、この調子でどんどん街を作っていくか!」