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第1話「目が覚めたら異世界。帰してくれる気はないようです」

飛行機のなかで缶詰になっていたので続きを書きました。

来週海外出張が入っているのでまた筆が進みそうです。

「プ、プレジデンテ?」


「はい、そう呼ぶように主人(あるじ)から言われています」


主人(あるじ)って?」


「あなたたちの世界で神様と呼ばれている方です」


 俺たちの世界で神様と言えば1人しかいない。


「……横井軍平?」


「いえ、そうではありません。こう言えば伝わるでしょうか、この世界を作られた方です」


 世界を作ったのはビッグバンのはずだ。まさかアダムとイヴの話をしているのだろうか。だとしたら世界中の歴史の教科書を作り直さないといけない。


 あの爺さん、本当に神様だったのだろうか?


「それで、ここはどこ?」


「はい。主人があなたのために作った世界です」


 マジか、あの爺さん俺のために世界作ったのか。頭おかしいだろ。


「へ、へぇ。できれば元の世界に戻して欲しいんだけど?」


「少々お待ちください」


 そう言うと、美女は虚空(こくう)を眺めるような目つきになった。


 遠距離通信みたいななにかで、爺さんと話している? もしかしてすぐに戻れたりするのだろうか。そうなるとこの世界を少し冒険してみたくもあるのだが……。


 などとバカなことを考えているとすぐに返事があった。


「『戻ったとして、次回作は完成するのですか?』とのことです」


「いや、さっき会社でも言ったけどまだ全然できてないからそれはちょっと」


 そう答えると、美女は再び爺さんに話しかけているような素振りになる。


 なんだこの伝言ゲーム。爺さんがこっちにきてくれてもいいじゃないか。


「『それでは帰すわけにはいきません。先生はこの世界で自由に過ごして頂いて構いませんので、続編のアイデアを思う存分煮詰めてください』とのことです」


「は?」


「『は?』とは? あなたは主人の力をお借りしたのでしょう? であればその目的を果たすために全力を尽くすべきでしょう」


「いやいやいやいや、そんなこと言われたって元の世界に仕事を残してきてるし、そもそもこのまま行方不明になったんじゃ戻ったとき会社に籍がない! それは困るよ!」


「その点はご安心ください。こちらの世界に転移したときと同じ時間に戻せるとのことですから」


 それなら悪くないのか? いや、待てよ。


「俺は?」


「『俺は?』とは?」


「時間だけ戻してもこの世界にいる俺は年を食うわけで。姿が変わってたら社内の人間に怪しまれるだろ。一晩で老けてみろ、『働かせすぎた!』って即病院にぶち込まれるぞ」


「その点も大丈夫です。……たぶん」


「そこはしっかり確認取ってくれよ!!」


「……はぁ。かしこまりました」


 美女はめんどくさそうなため息をつきながらも、爺さんに確認を取ってくれているようだ。


「『そちらの世界に送った状態を維持し続けるので大丈夫です。老いることもありません。先生は安心してゲーム作りに集中してください』とのことです」


「あ、そ」


 どうやら爺さんはゲームが完成する見込みができるまでは絶対に帰してくれないようだ。どんだけ俺のゲーム好きなんだよ。


 開発者としては嬉しいが、おかれている状況は個人としては嬉しくない。


「で、俺はここでどうすりゃいいの?」


「はい、国家を運営して頂ければと」


「国家の運営?」


「はい、主人がいくつか国を用意しておりますので、『そのなかから好きな国家を選んで欲しい』とのことです」


「なるほど、国そのものはもうあるのね」


「はい、そう聞いております。そこからプレジデンテが試してみたいゲームシステムを実際に体験して頂き、どの要素を入れるのかの参考にしてください」


「ところで、その、プレジデンテって何? 俺の名前は――」


 と、言いかけたところで美女が鋭く口を挟んでくる。


「主人より。そう呼ぶように言われております」


 美女からは有無(うむ)を言わさないプレッシャーを感じる。「お前の名前はプレジデンテで決定!」と言わんばかりだ。


 それにしてもあの爺さん、マニアックなゲームプレイしてるな。


 「プレジデンテ」という呼び方は、独裁者になって小さな国家を運営するとあるシミュレーションゲームで使われている。


「じゃあ国は大統領制なの?」


「いえ、とくに決まってはおりませんが」


「じゃあ名前で呼んでくれよ。いちいちそうかしこまった呼び方をされても自分じゃないみたいだよ」


「ダメです」


「……なんで?」


「あなたの名前になど興味がないからです」


「……そうですか」


 鋭い目つきでギロリと睨まれた俺は、すごすごと引き下がるほかなかった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

感想頂けて嬉しかったです。

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